あ、あああ、あれは…!




Day13 カフェのあの人









「ざけんなざけんなざけんな…」


「どうしたんですか?なまえ先輩、顔色激しく、悪いですよ?」

「お前のせいだろおおおおお!」




こんにちは。皆さん。お馴染みみょうじなまえです。わたくし只今、物凄く激しく具合が悪いです。え?原因ですか?名前は言えませんがふ●じ周助が私の持ってきたアクエリア●スを全て飲んだせいです。え?隠れてない?ははは、気のせいですよ。

まあ、そんなこんなあんなどんなで、合宿所に向かっております。相変わらずあたしの隣には不二周助。窓側に座ったあたしは、それ以外の席順がどうなのか見ることは出来ないが、まあなんとか。乗っているのだろう。



「皆起きろーそろそろ合宿所に着くからなー」


なんて、ひとりでぶつぶつ考えていた頃、竜崎センセが前の席から大声で叫んだ。どうやら、もうすぐ例の合宿所に到着するらしい。あたしは閉めていたカーテンを開け外の景色に目をやった



「おお、おおお…!」



そこには一面広がる美しい大自然、自然、自然。都会じゃあ感じられない豊かさが、そこに広がっていた。


「美しい空気、自然、湖…!最高じゃないか…!」

「なまえ先輩、さっきまで嫌だ嫌だと言ってませんでしたっけ?」

「え、そんな事言いましたっけ?きらりん?」

「キャラ変わってますよ、先輩」

「うっせーよこの感動を伝えたかっただけだよちきしょう」



なんていう、暖かさの欠片もかか感じられない不二周助に心折れそうになりながらも、一面に輝く緑色の景色を眺めた。やっぱりまだ帰りたいとは思うけど、少しだけ、来て良かったなあ。なあ、なんて



「さ、降りろー」

「「うえーい」」




というわけで、バスが停車し。到着致しました今回の合宿所。一体何県にあるのかもわかりません方向音痴なんですごめんなさい。

皆がわたわたとバスを降り自分の荷物を手にしては合宿所前に並ぶ。やはりそういうしっかりしたところはスポーツマンというかなんというか。尊敬する。少しだけ。ミジンコくらい少しだけ。



「あーあ…ついに戻れない…」


「不服そうですね?」


「うっさいわフジコめ!不二リンゴ!」

「ふふ、可愛い名前を有難うございます」


イライラ。不二周助になに反抗しようとしても無駄だと悟ったあたしは周囲を見渡した。荷物を出す順番が発端で喧嘩している桃城武と海堂薫、涼しげな顔で相変わらずあたしのアイドル手塚国光、でその横に酔って具合悪そうな大石秀一郎とそれを擦る河村隆。それを見て笑っている菊丸英二。あれ、乾貞治は…あ、なにか飲み物片手に微笑んでいる。ちなみに不二周助は相変わらずあたしの横でニコニコニコニコしている。こわい。こわい。


でもまあ、うん、皆いるな。


と、ひとり納得したところで後ろから声がした。



「ちょっとー!早く降りなさいよね!」

「なんだよっ!お前らが先に降りればいいだろ!」

「あたしと桜乃はリョーマ様の後ー!」

「いや、どっちでもいいよ…」




越前リョーマを含めた一年生チームだった。そういえば、数に入れるのを忘れていた。すまん。と、心の中で謝った後対して掛ける言葉も見つからず、女子高校生に絡まれたくなかったあたしは大人しく竜崎せんせに目をやった。


「ん?」

「どうしたんですか?なまえ先輩」



「…そう、そうそれで、そこを右に曲がると…」



竜崎せんせは、誰かと電話で話していた。話している、という点になんの疑問もなかったのだが、どうやらこの場所を教えているらしい。


「ねえねえ不二ちゃん」

「はい?」


「合宿ってあたしらだけでしょ?」

「え?なまえ先輩知らないんですか?」

「え?」


なにを、と、不二周助に聞き返そうと振り返ったところで、デカいバスが二台、がたがたと大きな音を立てながら敷地内に入ってきた

あきらかに青学のバスではないそれは、グレーと黄色?の二台で、それの二台もそれぞれ、別なところから来たらしかった。




「なに、なに?」



そしてゆっくりと停車した2台のバス。あたしが呆気にとられていると、まず先方のグレーのバスのドアが開いた。



「よう、久しぶりだな、お前ら」




…?…?
なんか物凄いテンションのホクロが降りてきた。しかも久しぶりとか言っている。知り合いなのだろうか。そしてそのホクロに続いて図体のでかい人やら青赤茶色…金髪…と、ぞろぞろジャージを着た集団がバスから降りてきた。そして最後に、スーツ姿のおそらく先生。


バスには、氷帝学園と記されていた。




「ちょ、不二子Fフジコ」

「先輩は毎回僕の呼び方違いますよね」

「そんなこたどうでもいいから!氷帝?氷帝て都大会常連の?」

「はい、そうですよ」

「なんでこんなとこにいんのさ」

「さあ」



不二周助は相変わらずあたしに適当な返事のみを残し、そのあとふらふらと河村隆の横へと場所を移動していった。それにしても、氷帝学園がここに?なんて考えていたら、次に黄色いバスのドアが開いた



「あ、あの黄色は…」




あたしはあの黄色いバスに激しく見覚えがあった。何故ならほぼ毎日目にしている色、あのイメージカラーを見間違う筈がない。あれは、



「立海…?」

「そーいえば、なまえ先輩って立海大学なんだっけ?」



バスの方をじいと見ているあたしの横から突然声が聞こえて、ばっと横を振り向くと、いつの間にかそこには越前リョーマがいた。い、いつの間に…



「あ、あんたいつの間に?」

「そんなことより、しっかり見といたらどーすか?これから3日間、一緒に練習する人たちなんすから」

「あ、やっぱそーなんだ…」



降りてくるあきらかに40代のおっさんとか(コーチ?)銀髪とかハゲとか赤髪とか黒髪のうねうねとか眼鏡とか目の薄い青年(コーチ2?)を見ながら、あたしは3日間をどう過ごすか真剣に考えた。そして、何故皆がマネージャーがあの1年だけで足りないと言っていたのか、今さら理解した気がする。


「他校とか、尚更アレじゃない?あたしいるとやばくない?ババア一匹紛れ込んでるとか思われないかね?」

「い、や…大丈夫だと思うけど…」

「そう?まだピチピチ?制服着ててもいける?問題ない?」

「…ま、まだまだだね…」



なんて、横にいる越前リョーマからいらない同情みたいなものを買い更にテンションの下がるあたしがもう一度バスに目をやると、最後に青髪の青年がバスからゆっくり降りてきた。天然なのかパーマのかかった、額にバンドをつけている青年。

あたしは、思わず目を見開いた





「あ…」

「どうしたんすか?」




越前リョーマの声もあたしには届いていない。何故なら彼は




「カフェの店員さん…?」

「は?」



あたしがじいとその青年に目を向けていると、青年が突然あたしの方を振り向いた。それから一瞬驚いたような素振りを見せた後、にっこりと微笑んだ




「なまえ先輩、知り合いなんすか?幸村さんと…」

「え、いや、そういうわけじゃないけど」

「ふーん」



なんとなく、越前リョーマの声のトーンが下がったような気がしたけど、そんな事を気にかけている場合ではなかった。


この合宿、なんか嫌な予感が…












Day13 終


遠征合宿編2
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