どれだけ死にたくないんだろう





俺が帰宅してジャージに着替え、自転車で公園まで行くと、ベンチには既になまえの姿があった。いくらなんでも早すぎじゃないかな?なんて思いながら俺はなまえの方へ歩みを進めた


「幸村、遅い」


不機嫌そうにひとこと。数分、いや数秒も待てないのだろうか。少し激しく燗に障りはしたけど、気にしないことにしてあげた。


「よっぽど死にたくないんだね、なまえ」

「うるさい、早く済ませて帰りたいだけ。」


「そう?」


言いながらおもむろになまえの横に座ると以外にもそれを避けるようなことはされなかった。ま、されてたら殺すけどね。


「で、なに?聞きたいこと」

「そんなに聞きたい?じゃあ単刀直入にね。なんで俺の事、最近避けるの?うざいんだけど」



そうやってにっこり。
微笑んだら、なまえがぽかんとしたような表情でこちらを見た。俺が黙ってじいとそのままなまえを見ていると、どうやら図星だったらしい。焦るような表情が浮かんだ


「別に、避けてなんか…」

「じゃあ?何で学校でぶっきらぼうなの?1年2年まで、普通だったと思ったけどな?」

「思い違いじゃ?」


「女子テニスの部長と、何か関係があったりして?」




そう言った途端、なまえの目がこれでもかといった具合に見開いた。何故俺がそんなことを知っているのか、と言わんばかりの表情でこちらを見ているのを見る限り、どうやら図星。らしかった



「あ、んたには。関係無い…」


それでも必死に目を反らして、嘘をつこうとして、どうして素直になれないのかとは思うけど、



「関係あるだろ?この俺が避けられてるんだよ?この俺が。」


「神の子だろうがなんだろうが関係無い、んだよ…」



なまえは絶対に、俺に言うつもりは無いらしい。その固い決心が果たしてどこから来るのか、原動力はなんなのか。大体俺に言われて、そこまで気付かれていても答えないのは、どうしてなのか。

考えれば考えるほどイライラして、考えれば考えるほど、冷静になった


「なまえさ、変なところで決心固いんだね」

「お互い様」

「そうかな?」


どうにかしてなんとかして、原因を解明する方法は無いのだろうか。黙り込んでしまったなまえを尻目に空を見上げた。

空には星が綺麗で、沢山のものが瞬いていたけれど、到底なまえにそれを言う気にはなれなかった




「幸村、」

「なんだい?」

「頼むから、


あたしに関わらないでくれ。」





星なんか見てるうちに、横にいたなまえが拳を握りしめ必死で言葉を紡いだ。爆弾発言、なんてひとは言うかもしれないけれど、この時の俺の頭の中は相当冷静で、どうすればなまえを苦しめるものが何なのか見つけることが出来るのかという答えに辿り着いていた





「うん、分かったよ」

「ゆき…」

「大体さ、関わらないでくれって、俺がそんな事言われる筋合いは無いよ。俺となまえは、他人なんだからさ」



それから俺は、なまえの返事も待たずに立ち上がった。自分から関わるなと言っているくせに、俺の言葉を聞いた当人は結構、当惑しているみたいだった



「…ありがとう、幸村」



お礼、なんて



「さ、帰ろうか。みょうじさん。夜も遅いし、今日だけは俺が送るよ」





ああ、早く
この小さな体を懸命に強ばらせて強がらせている生体をなんとかしてやらなければ

俺のせいで苦しんでいる
なんて

許せないからね







お題 数秒間もまてないのか




数秒間もまてないのか
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