結構前に気付いてたけど



大会が近い俺達は、気なんか抜く暇もなしに8時、9時くらいまで練習を続けるのが日課であり、それを怠れば取り戻すのに何日も掛かる。今日もそれは例外ではなく、時計は既に8時を指していた


「はい、じゃあ今日はここまでにしようか」


そう言って俺がレギュラー達に声を掛けたときには既に8時半を回っていた。それはいつもの事だけれど、今日の俺としては少し厄介、かもしれない。



「精市、もう8時半だぞ?相手がイライラしている確率」

「言わなくても分かるよ、蓮二」


にっこりと蓮二に笑みを返した筈が端で赤也が小さく悲鳴をあげていた。どうしんだろう、明日メニューを増やしてほしいのだろうか?
そんな事を考えながら赤也に目をやるとこそこそっと蓮二の後ろに隠れてしまった。


「部長、どうしたんスか?柳先輩」

「ん?ああ、お前は気にしなくていい」


「なになに?幸村デート?!」

「ブン太、明日練習前にグランド200周したいんだね?」

「ヒィッ」


一度話題になってしまうと煩くて仕方がないうちの部員は、あれやこれやと妄想想像回想予想、様々なものを駆使して俺の身に何が起こっているのか考え始める。馬鹿共、なんて思ってはみるものの。言わないでおいて、あげる。


「あ、そういえば幸村、F組の女子と問題起こしたってうちのクラスで話題になってるぜ?」

「うおおおお!!まじかジャッカル!!?」

「ほう、幸村もやるおるのう。プリッ」


そしてジャッカルのこのひとことで総勢でがやがやし始めた。ジャッカル死ね


「学年中、学校中で噂になっている確率、94%」

「蓮二?」

「…すまん」


蓮二がまた余計なことを言い出すものだから話がどんどん膨らんでいく。だってなまえのことは、多分皆知らない筈だし、テニス部には関係の無い子だから当然の事なんだけど。




「幸村、そういやお前今日なまえと約束があるのではなかったか?」





「「「え?」」」



今までひとり黙々と後片付けをし、話に混ざって来なかった弦一郎からのひとこと。昔から変わっていないんだけれど、本当に、最近は言うのも面倒だったから言わなかったけれど。


「弦一郎死ね」

「な、お、俺はお前が忘れていると思って!」


更につけ加わる余計なひとことに部員がなまえは誰なんだとはやしたてる。ああ、早く弦一郎死ねばいいのに。折角、名前を言わなかったのに。気を遣っていた蓮二の気も悟れカス


「なまえ?それってみょうじなまえか?」

「え、ブン太先輩知ってるんスかっ?!可愛いスか?!」


ブン太?何故お前はなまえを知っているんだ?死ね
なんて、段々気が短くなっている自分を抑えながらブン太と赤也に微笑み掛けるとふたりとも泣き目になってしまった。


「ジャッカルウウウ」


そしてジャッカルに泣きつくブン太。うぜ


「俺知らねえよ!あ、でもみょうじなら同じ委員会になったことあるけどよ、なんてか、男?みたいな奴だった気が…」

「ジャッカルも死ね」

「え!!!部長ホm「死ねワカメ」

「まあまあ、そうかっかするなよ。」


俺があんまり毒ばかり吐き続けるものだから、見かねた蓮二が俺の肩に手を置いた。ちなみに弦一郎は隅の方で未だにショックを受けているらしいが、自業自得


「そんな事より、早く行かなくていいのか?」

「…!そうだね。」


そのひとことで時計を見ると既に9時前。とりあえず連絡でも入れなければ厄介かもしれない。俺は柳を離れロッカーへと足を向けた


「あ!部長!逃げるんスか?!」


「だから、死ねよワカメ。あ、それと、今さらなんだけどさ


君たち、空気読めよ?」



さあ、釘を刺したところでなまえに会いにいこう。明日のメニューは何がいいかな。






お題 今更なんだが、やめないか?





今更なんだが、やめないか?
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