え、あたしいらなくね?
Day9 初授業
「ただいま…」
「お邪魔しまーす」
やっと、越前家につきました。
「あれ?お前の美人のお姉さまは?」
「親戚だから。今大学行ってる」
「うわ、やっぱり。通りで美人だと思ったよ」
「…意味、分かんないんだけど…」
そんな事言っている越前リョーマは放っておいて。あたしはいそいそ越前リョーマの部屋へと続く階段を上った。初授業、ということでやっと少し緊張してきたあたしは、頭の中でどのように話を進めるか考えながら部屋に入った。
「適当に座ってよ、センセ」
「あ、お構い無く」
越前リョーマは重そうなかばんを下ろすと中から教科書やら筆箱、ノート等を取り出して机に投げた。乱雑に扱うな、とは思うがこんなものかと干渉はしなかった。そして、学ランを脱いで、ワイシャツのボタンを……
「ってこらああああ!そこは構え!気をつかえ!」
「あんたが見なきゃいいだろ」
「はああああじゃあ見るよ?逆に見るよ?」
「や、見んなよ」
「じゃあ隠せ!隠せ!もしくは全部見せろ!」
全く、最近の高校生はハレンチだな。あたしは結局越前リョーマの着替えを見学した後、座り直した越前リョーマの横に腰を下ろした。
「さ、始めるか!」
「あ、ちょっと待って」
越前リョーマはいそいそと学校で使っている教科書を取りだしあたしに見せた。教科書を見ればそれはあたしが高校時代使っていたものと変わらぬものであった。
「おお…あたしと同じ…」
「それの18ページ、そこだけ分かんない」
どれどれ。あたしが教科書を開けば意外に丁寧な字で記されたメモなどが目に入った。どれもきれいにまとめられていたそれを見る限り、問題は無いように見えるが…
あった。
ふ、比較でつまずくなんて、まだまだだな。
「ここは、the moreで、強調…で、ここは…」
高校の事なんて自分がここに来る前勉強したところ以外殆ど覚えていない。あたしは、なんとか記憶を巡らせノートに書き込みながら越前リョーマに教えた。
「おっけー?」
「…まあ、」
「じゃあ、あたしが持ってきた教材に取りかかるですけれども。今日は時間ないしこれやったら終わりねー」
っても、たぶん説明とかしたら1時間は越えるだろうけれど。
あたしはかばんから教材、と呼ばれる厚めの本を取り出した。しかし解説なども一緒に入っているから厚く見えるだけで実際解く問題はそんなにない。
「これ?やればいいの?」
「おう、今日はとりあえず2〜6ページまで。結構問題数多いし、ふぁいてぃーん」
「はいはい…」
言ってリョーマはシャーペンを持ち取りかかった。あたしは、最初は越前リョーマの字を追っていたが段々眠くなりいかんいかん、と越前リョーマの部屋を見渡した。越前リョーマの部屋はなかなかきれいに片付き、やはりテニスに関するものが沢山見受けられた。
( 結構熱心なんだな… )
「ほお…こりゃなかな「終わったよ、センセ」
えええええええ
「え、終わったの?」
「うん」
越前リョーマは、恐ろしいペースで問題を解いたらしい。開始まだそれほど時間も経っていない。いや、でも、分からなくて飛ばした問題が沢山あるのかも…
あたしは確認を試みた
「どれ、」
ぜ、全部当たっている…?!
「ねえ、これ、終わったら終わりなんでしょ?」
「お、おま…」
あたし必要ねえよ!!!
絶対必要ねえよ!!
「なに、あんたなんなの?」
「あ、俺高校入る前までアメリカいたんだよね」
え?
帰国子女?
「はあああ?あたしいらなくね?必要なくね?」
「だから、最初に言ったじゃん」
平然と言い放つ越前リョーマ。帰国子女に英語の家庭教師とか不必要極まりないだろ。
「え、金も無駄だし、やめたら?」
「やだ」
また、意味の分からない事を言い出す越前リョーマ。いや、不必要だろ、と思ったが本人が嫌だと言っているのに強要は出来ない。先が激しく思いやられる気がしてきた。
「なんで?」
「センセにいっぱい会えるじゃん?」
なんて、ませた事を言ってくる越前リョーマ。嫌われてないだけ非常に有り難いが、ふざけてんなこいつ。
「言うねえ。」
「ま、そーゆーこと。で、今日は終わり?」
時計を見ればまだ6時を過ぎたばかり。時間は激しく余っていたが、終わりと言ったのだから終わり。しかし、バイト代をもらう建前、なんだか申し訳ない気分になった。
「まあ、そあ、なんだけ「じゃ、俺とテニスしようよ」
はああああああ?
「テニス?」
「そ、テニス。##name1##先輩、強かったんでしょ?」
「い、いや…」
「とにかく、いこ。俺のラケット貸すし」
ええええええええ
Day9 初授業 終
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家庭教師編3