いつの世代も、女ってのは一緒なのね
Day8 ファン
「どこいくの?」
「テープ買いに。」
「あ、そうすか…」
初授業と意気込んでここまで来たあたしは、何故か越前リョーマと一緒にスポーツ用品店に向かっていた。
「これと、これと…」
越前リョーマは必要なものをいっぺんに買うタイプなのだろうか?それとも単に今回たまたま一度に全てがなくなってしまったのだろうか、はたまたストックを買いに来ただけなのだろうか。なんにせよ、越前リョーマは、あたしが在学していた時から変わらない青学御用達のスポーツ用品店で大量に品物を買い込んでいる様子だった。
( しっかし、いっぱい買うなあ )
「はい、終わり」
「あ?そう?」
気付けば計算を終え荷物を抱える越前リョーマ。あたしにそれだけ言うとそそくさと店を出ていった。くっそ、愛想のない奴!とは思ったがさっさと出ていってしまった越前リョーマを何も言えずに追いかけた。
( いつかぎゃふんと言わせる… )
それから、なんの会話をするわけでもなく。あたしたちは越前家へ向かう道を歩いていた。話す話題が無いし、仮にあったとしても適当に流されそう。あたしは心の中で何度目かのため息をついたところで、目の前に美味しそうな和菓子屋が見えてしまった。
見えてしまった。
「し、少年…」
「なに?」
「今日、暑くないか?」
「?いや、そうで「そうか、暑いか、なら仕方ないな。お姉さんがアイス買ってやろう。抹茶だけど。」
は?」
ごめんなさい。
あたし、無類の和菓子好きなんです。
( でもいつも通ってるカフェと自分でいれるコーヒーだけは特別。 )
授業があることは分かっていたが、最近できたのであろう。在学中には見たことの無かった和菓子屋が出来ていると知ったら行かないわけにはいかない。あたしは半ば無理矢理越前リョーマをその店に引きずりこんだ。
「はあ…」
「さ、食べよう食べよう!あたしみたらし団子と抹茶パフェ」
「決めんの、早…」
なかなか決められないのか?と勝手に判断したあたしは勝手に店員を呼びあたしの分と、勝手に抹茶あんみつを頼んだ。越前リョーマはぽかんとこっちを見ていたが、甘味に関しては一秒も勿体無い。
「これは戦争だ!」
「は?」
越前リョーマは至って冷静らしい。
「はああ、食った食った」
「なまえ先輩、食べんのも早すぎ…」
「え?リョーマ、ここのスイーツ美味しくなかった?」
「いや…」
「そうか!ならよし!」
「はあ…」
スイーツを食べたあたしは元気100倍!ということで、精算を済ませ浮かれ気分で越前リョーマと外へ出た。すっかり4時を回っていたが、7時までに終わらせて帰れば問題はない。
「さて!じゃあ、リョーマ少年の家に行きま「ちょっと!リョーマ様?!その女誰よ!!」
えええええ
外に出た瞬間、あたしが昔着ていたものと同じ制服を着た女子二人が待ち構えていたかのように現れた。しかも、リョーマ、様ああ?あたしは全く理解が出来ずぽかーんとその場に立ち尽くした。
「……出た」
そして何故か頭を抱えため息をつく越前リョーマ。この人たちはなんなのだろう。しかもひとりはガミガミ騒いでいるのにも関わらずもう一人はその後ろに隠れているようにも見えた。
( い、今時の高校生…分からない…ッッ )
「ちょっと、あんた!聞いてるの?!」
そしてためぐちー?!
しかもあたしか!!
「あ、はあ…」
「あんた、リョーマ様のなんなのよ!学校の前で待ってるし!一緒に帰るし!スポーツ用品店行くわ、スイーツ食べるわ、何様のつもり?!」
最初からつけられてたー?!!
高校生の威勢にすっかり萎えてしまったあたしはふらふらと越前リョーマの後ろに隠れた。こわい、高校生怖い。どうなったもんじゃない。と越前リョーマに助けを求めた。
「(ちょっと、早く家庭教師だと言え!チビ!)」
「はあ?」
「ちょーっと!なにコソコソしてんのよ!!てかあんた!出てきなさいよ!」
いいながら高校生はあたしを無理矢理戦闘に引きずり出した。あたしは、なすすべもなく、ぽかーんとしていた。
「あんた大体誰よ!」
「あ、私…みょうじなまえと申します…」
「そーじゃなくてー!!リョーマ様のなんなのか聞いてるのー!!」
「あ、いやだから、あたしはしがないかて「関係ないだろ」
やめてえええええ!
煽らないでえええええ!!
「…っ、リョーマ様?!」
「リョーマちゃん?!!」
あたしたちは一斉に叫んだ。
余計な勘違いは病の元、元凶の元、元、元…
「ぎ、ぎゃあああ」
「ひっ!な、何よ!」
「と、トモちゃん、帰ろうよ…」
「は!?だって桜乃、あんだって嫌でしょ!こんなわけわかんない女とリョーマ様が一緒にいたら!」
「そ、それは…」
( 否定しないんだ!?否定しないんだ?!せめてあたしが訳の分からない女ってのは否定して!? )
ん?
よく考えたら、彼女らのうちどちらかが越前リョーマの彼女なのではないだろうか。でなければそんなに騒ぐ筈があるまい。あたしはちょこちょこと隅にいる越前リョーマのところへ小走りした。
「おいリョーマ!」
「なに?てか、早く行こうよ」
えええええ
「何?!無視はダメでしょ!」
あたしは向こうの方でなにやらガヤガヤ言い争っている二人の女子高校生を指差した。が、越前リョーマは顔色ひとつ変えることはなかった。
「や、いつもの事だし」
ええええええええ
こんなのがいつもーまじかー
「あ、ソウナノ」
「うん。だから、早く」
「え、ちょ、ええええええ」
越前リョーマは二人を置いて、歩いて行ってしまった。どうしようかと悩んではみたもののここにいても解決はするまい。二人には申し訳なかったが、あたしは越前リョーマの後を追いかけた。
「ちょ、桜乃?!リョーマ様がいなくなってるわよ?!」
「え、あ…本当…あのひとも…」
「キィイイイイ!リョーマ様は絶対に渡さないんだからー!!」
Day8 ファン 終
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家庭教師編2