あたしも、戻りたいなあ







Day6 帰り道














「「ごちそうさまでした!」」










あたしの財布から、8000円近く飛んでいった。


大体ファミレスで8000円も、出すこと自体が初めてだった。しかもあたしが。こいつら、ぜってーいつか痛い目見せてやる…






「てか、大石のこと坊主頭触角付きって、ヒーッ今思い出しても面白いにゃっなまえちゃん本当最高だにゃーっ」



「や、だからあれはね、ほら、あたしが知ってる毬栗とあまりにも違ったもんで」




ファミレスでの宴会を終えたあたしたちは、それぞれの帰路についた。あたしはちょっと電車にも乗らなきゃいけなかったし、駅方面の奴等と一緒に帰ってきた。菊丸英二、大石秀一郎、桃城武、そして越前リョーマ。菊丸英二は先程からあたしのミスのせいでずっと笑っているし、桃城武もつられて笑っている。





「こら英二!仕方ないだろう、俺だって髪切ったんだし、先輩が分からなくても当然だ」


「でも、あの時の大石先輩の顔まじでショック!って感じでしたよね、ぶぶっ」


「桃城まで、笑うな!」


「まあまあ、いいじゃないか大石よ。」




「え、元はと言えばなまえ先輩が変な言い方するから悪いんじゃん。」



「うるさいぞエチビ」


「な、…エチビって何だよエチビって」




ガヤガヤと笑いながら帰宅。なんだか本当に高校時代に戻ったみたいだ。最初の不安はどこへやら。あたしもけらけらと笑いながら帰路についた。



それから、菊丸英二と大石秀一郎が途中で別れ、また少し行ったら桃城武が菊丸英二の荷物が自分の自転車のかごに入っていることに気付き引き返す事で別れ、いつの間にか越前リョーマとふたりで駅近くまでの道を歩いていた。








「あ、リョーマ。あんた家この辺でしょ?あたしもうすぐ行けば駅だし、ここで。」

「や、駅まで行く」



「いや、大丈夫大丈夫。高校生は遅くまで外にいると捕まるぞー」

「まだそんな遅くないし。」




言っても聞かない越前リョーマは、結局駅までついてきてくれた。高校1年生のくせにませてんな、とは思ったけど、なんだかんだ優しい奴なのかと感心した。




かと言って、駅までの間特に話すこともなかったのだけれども。







「あ、ちょっとここで待っててー」


「は?」





なんだかここまで来てもらって申し訳ないと感じてしまったあたしは駅前のコンビニに寄ってジュースを購入した。最近の高校生がなにを飲むのかは知らなかったが、あたしが高校の時よく飲んでいたファンタを買った。


( スポーツ選手が炭酸飲んじゃいけないの、知ってたけどね、知ってたけどね )










「ほら、」


「ん?あ、ども」




待っていた越前リョーマにファンタを手渡す。すると越前リョーマは、そのファンタを見つめたまま動かなくなった。なんだ?嫌いなの選んじゃったか?




「あ、ファンタ、無理?」



「いや、一番すき」




言って越前リョーマは直ぐにそのファンタを開けて飲み始めた。




「スポーツ選手が炭酸飲んじゃダメなんだぞー」



「お互い様。じゃあなんでこれ、俺に買ったわけ?」




キイイ!生意気な!
まあでも、嫌いじゃなくて、良かった良かった。あたしはふっと小さく笑み浮かべると、そのまま鞄を背負い直した。そろそろいかなければ。明日学校だし。課題やってないし。




「じゃ、あたし行くわ。今日はどうも。次はあんたの家庭教師として会いに行くからな越前リョーマくん。」


「俺に教えられる事があれば、ね。期待してるよ、センセ。」




最後までイライラさせるやつ。でも、こんなやつに負けてやらない。絶対いい教師だと思わせてやる!




「じゃ、次、金曜日だから。宜しく。用事あるときはリトライに連絡して。」


「やだ。」



「は?」




何を言い出すんだこいつは。無断欠席とかしたら、ぶっころしてやる。





「センセに直接連絡、したいんだけど。」





あ、なるほど。
なあんだ、謙虚なところもあるじゃないか少年。あたしは自分のリトライの名刺の裏に電話番号とアドレスを書いて越前リョーマに渡した。赤外線でも良かったが、あいにくもうすぐ電車が来るらしい。あたしは慌ててペンをしまうとス○カを取り出した。




「これ、ここにメールしてくね。名前と電話番号も送っといて、じゃ、気を付けて帰れよ?家着いたらそこに連絡しろよ?じゃ!お疲れ!」




「あ…お疲れっ、す」








越前リョーマの言葉も聞かずあたしは改札をくぐり丁度到着した電車に飛び乗った。

はあ、なんとかまにあった…














結局家に着くと、10半をまわっていた。
なんだか疲れてしまったあたしは、バックを机に載せるや否や携帯だけ握りしめベッドに倒れた。




「ん?」





携帯を見ると一件のメール。開いてみると知らないアドレスだったが、直ぐに誰なのか分かった。


「越前リョーマ、」








送信 ****@docan.ne.jp
日時 2012.04.**.22:00
件名 越前リョーマ

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

番号 080-****-####

家に到着。
なまえ先輩も気を付けて。

あ、今日ご馳走様っす



---END---










「は、律儀だねえ。」





そのメールを見たあたしは、思わず笑ってしまった。あんな小生意気なやつでも、しっかりしてるところ、あるじゃないか。あたしはなんだか上機嫌になり、しかしその後訪れた睡魔により、越前リョーマへ返事を返すや否やなにもせずに眠りについてしまった。









送信 ****@docan.ne.jp
日時 2012.04.**.22:43
件名 RE:

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

あたしも到着!
今日はわざわざありがと
ゆっくり休めよ?

じゃ、金曜日に。
おやすみ!


---END---
















越前リョーマ。
なかなか面白いやつじゃないか






















Day6 終







青春学園編6
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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