世界は狭い




Day4 部活








「え、きも」




みょうじなまえ、只今絶賛困惑状態で御座います。







一年でレギュラー、という事はあのランキング戦を勝ち抜いた、という事になる。更に言うならば、一年が、あのランキング戦に参加出来た、という事にる。それを成し遂げたのがこの越前リョーマ。そんなに、こいつは強い選手なのだろうか。




「てかてか!にゃんでおチビ、なまえのこと知ってるの??なまえちゃん卒業生だし、しかも最近まで留学してたんだよーっ!」


「あ、俺の家庭教師っす」






越前リョーマは、あっさりとあたしとの関係を言い放った。昨日家に行ったときにはいらない、と否定していたあの越前リョーマが、あっさりとそれを肯定した。





「「「えー?!!!」」」






そして、周りの反応が凄まじい。練習を再開したかに見えた部員達が一斉にあたしの方を向くのが視線にちらついた。いや、あたしのこと知らないでしょって子まであたしの方見て驚いてるよ。





「ちょ、越前!!!お前、こんな素敵な家庭教師いたのかっ?!!なんで俺に教えてくれなかったんだよっ!このタコっ!」


「いたっ、痛いっすよ桃先輩っ」




いつの間にか越前リョーマは目の前で見たことのない男性に羽織い締めにされていた。桃?可愛い名前のわりには物凄く男性的だね。あれか?薫くんがありなら桃くんもありってわけか?そういうことなのか?



あたしは思わずその桃さんとやらをじい、と観察してみた。筋肉のつき方も体型も顔も、男らしいのになあ…と、思っていたらその桃さんと目が合った




「あ、すいません、かっこいいなって。」



女性のわりには、
と思って口に出したら、そのひとは物凄く嬉しそうな顔でこっちを見た。そして絡んでいた越前リョーマを放し、否捨て去り、あたしの方に歩み寄ってきた









「え、え、え、まじすかっ?まじすかっ?俺すかっ?!あざーっす!俺、桃城武、2年です!」















「え?桃さんって、女性じゃないの?」










名前で判断するくせがあるあたしは、完全に、やらかした。






「はい?」


「ぎゃははっ桃、女の子だと思われてたとかっ!ヒーッ面白すぎだよ桃子ちゃんーっっ」



コート中の部員という部員がおかしいと言わんばかりに笑い声をあげた。菊丸英二に至ってはコートにうずくまって笑っているという始末。悪いのは、あたしか?当の桃城武はぽかん、と口を開けあたしの方を見たまま制止していた。


時既に遅し。ごめん、桃子ちゃん。




「ひ、酷いっすよ先輩ー!俺どこからどう見てもイケイケな男じゃないっすか!」


「あ、うん…な、名前で判断しちゃうくせあるんだよねあたし…はは」




乾いた笑みを浮かべるしかなかった。すまない、桃城武。でもお陰さまでお前の名前は一生忘れないだろう。あたしは小さく笑みを浮かべながら桃城武かとは違う方向を見やった。どうやら、この部活には個性の強い人物が沢山いるらしかった。すべてを確認してみたいという気もあったが、そんな事よりも知らないひとが恐ろしい、という変な恐怖心もあり、辺りを見回してはみたものの、声を掛けることは無かった。それに、もうレギュラージャージを羽織っている者がいなかったから、というのもあった。




あれ?



「そういや、眼鏡と毬栗と寿司くんは?」





考えてみたら、何人か足りない。あたしが知ってる部員自体数少なかったが、その中でも目立っていた、というか特徴的なやつらが見当たらなかった。




「大石たちなら、今買い出しに行ってますよ。」




また、親切に不二周助が教えてくれた。ところで、大石って誰だっけ?確か毬栗がそんな名前だったような気がしたけど、よく覚えていない。あだ名をつけてしまうと、元の名前とぐちゃぐちゃになることがある、とはいうが、あたしは恐らくその典型的な例なんだと思う。現に毬栗の本名を思い出せない。



「あ、そういやマムシの野郎もいねえなあ」

「海堂先輩は堀尾たちと違う方の買い出しにいってますよ」




次々と飛び出す知らない名前。マムシって、珍しい名字だよなあ、怖そう。
桃城武と越前リョーマの会話を聞きながら、勝手に人物を想像してみた。想像は、あたしにとって最高に楽しい時間。たまにその辺の猫を擬人化したりしてケタケタ笑ったりもする。



「てかよう、名前ならマムシのが可愛くねえ?薫だぜ?薫。」





どうやら、マムシさんは下の名前が薫という最強にキュートな名前らしい。あたしはとっさにマムシが赤いリボンをしてうねうねしている姿を想像した。結構、可愛い。








「ま、それはいいや。毬栗達いないみたいだし、久しぶりに大人しくマネージャー業でもやってやりますかね、このなまえ様が」


ぐうっと背伸び1つ、あたしは袖捲りをしてみせた。大人しく1年の子に混ざろう。そして終わったら即帰ろう。あたしはそそくさとコートの端にはけた。




「なまえ先輩、少し独り言は静かにお願い出来ますか?」



「あ!手塚ちゃん!どこ行ってたのあたしを置き去りにして!no more放置プレイ!ちょっと興奮するけどね!!」






手塚国光、可愛いやつめ。
あたしに構って欲しかったんだろう?と、また想像してニヤニヤしていたら、横からため息が聞こえてきた。







「ね、ボール取ってよ、センセ。」





越前リョーマだった。
ちっ、手塚国光との甘い会話を邪魔するなんて、不届き者め、と悪態吐いてみるも考えて見ればあたしは部活の手伝いをしにきたんだと気付く。
少々手塚国光には名残惜しいが足元を見るといくつものボール。確かに周りを見渡しなら、一年がボールを拾ってレギュラーやら先輩やらに渡しているのが目に入った。が、しかし。




「センセって、止めてくれるかな?越前リョーマくん?」



「じゃ、そのリョーマくん、ての止めてくれる?センセ。ちょっと嫌なんだけど。」





生意気ー!!
昨日も同じことを思ったが、越前リョーマは非常にわがままだ。そして生意気だ。非常に。ま、嫌いじゃないって言ったのはあたしなんだけど。



「えち「リョーマ。」




偉そうに指定までしてきやがる。でも、部活の後輩(一応)だし、教え子になるわけだし、





「ほらよ、リョーマ。早く練習行ってこいって。あんたのテニス、あたしが見てやるよ。」





足元に落ちてたボールをいくつか拾うと、越前に投げた。それをこいつは丁寧にもラケットで一気に受け止め、口許に若干の笑みを浮かべながらコートへと戻っていった。






「まだまだだね、なまえ先輩」






と、決め台詞のような言葉を残して。












はあ、いつ帰れるんだろ










Day4 終


青春学園編4
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