え、お前ここの高校?



Day3 後輩






「手塚ちゃーん!許しておくれよう!」



あたしは、手塚国光に泣きついていた。













「早く行きましょうなまえ先輩、部員達がまっている」

「やっだーよーうー!後輩こわいし!!お前ら以外知らないし?おばさん来た、保護者かな?とか言われたらしぬううう!」






絶対に帰る、帰る。あたしは竜崎せんせに会いに来たのであって決して奴等の面を拝みに来たわけではない。あたしは、あたしの手首を掴みぐいぐいとコート前までひっぱって行く手塚国光に泣きそうな声で拒否をした。が、望みは無し。いつのまにか女子コートを抜け気付けばそこは男子コートの前であった。懸命に練習を続ける部員たち、その姿を見たら、やっぱりテニス続ければ良かったと後悔しそうになる。



…おっと、そんな事言ってる場合じゃなかった。




「少し待っていて下さい。絶対に。」




そう言って手塚国光はあたしの手首を掴んでいた手を離しひとりコートへと入っていった。まずい、このまま部員が手塚国光に注目したらあたしがいることが確実にばれる。


あたしは、手塚国光には申し訳ないがささささささっと忍者のような走り方でその場を後にした。













「はあ…最悪、手塚ちゃん、絶対不二ちゃんの支配下にあるよ。こりゃあの部活、部員は不二ちゃんのアレだな…」

少し走って校門が見えてきた辺りで足を止め、コート方面を見ながら息をつく。

ま、悪いんだけども、このまま帰ればいいし、行こうかね。


そう言って校門の方に向き返ると、誰かがこっちをじい、と見ているのに気付いた。生憎あたしは目が悪い。そのくせ眼鏡は授業中しか使わない。全然見えないわけじゃないし、何よりこうすれば変に人間に神経を張り巡らせずに済む。特に学校で。たいして知りもしないひとに無駄な笑顔で挨拶なんてしたくない、というのが本音。



「んん?」


「…あ」




その人間はあたしを指差して、あ、とだけ言った。その声をどこかで聞いたことがあった。もしや知り合い…?いや、そんな筈はない。あたしにあんなに背の低い高校生の知り合いはいない。でも、もし知り合いだったら…。そんな思いで、あたしはその人物に話し掛けようとした。



が、その人物はあたしの後ろの何かを見るや否やそそくさとその場を立ち去った。なんだ、なんだ、あたしに幽霊はついてないぞ?

そう、後ろを振り向くと、不二周助が笑顔でそこにたっていた。すぐそこ、目と鼻の先。そこそこ、いや、ちょ、



「ちかいっs「なんで逃げたんですか?なまえ先輩?」
























「それでは紹介する、ここ青春学園の卒業生、元女子テニス部兼男子テニス部マネージャーのみょうじなまえ先輩だ。今日は竜崎先生が用事で不在のため代わりに来て頂いた。留学のために1年のブランクこそあるものの、実力のあるひとだ。皆、なにかあれば彼女に聞くこともいいだろう。」





「おい、あのひとなんであんな暗い顔してんだ?」

「え、竜崎先生の代わりって、こんな若い女のひと?」


「てか、ため息ついてねえか?」






四方八方から聞こえるあたしへのコメント。思った通り知ってる奴等はごく僅か。あたしが3年の時に沢山いた手塚国光たちの代も、レギュラー以外は残ってないみたいだし、見る限り見ない顔。ため息しか出ないのも当然だ。





「結局ほくそえむ不二周助に半ば脅されながらコートに戻ってくることになってしまったあたし、とほほ…」



がっくしと肩を落としぼそりと呟く。ああ、一年と一緒にボール拾いでもして一日を終えることにするか…





「では、皆練習に戻れ」

「「はい!!」」




ほう、なかなかよく部活をまとめているじゃないの。手塚国光。ま、大和倒したくらいだし、あの、時からヤバかったけど。

あたしが手塚の声で顔を上げると、丁度目の前に、昨日会ったばかりの生意気な少年がいた。






「あ」






あたしは思わずそいつを指差して口を開いた。テニスをしていることは昨日のことで分かってはいたが、まさか、まさか、この青春学園にいるなんて。


え、てことは、あたしの後輩?






「え、なんでここにいるの?」



分かっていても口に出てしまう、このフレーズ。




「いや、さっき会ったじゃん」


「さっき?」





さっき?こんな奴さっきいたか?あたしは思考を巡らせてみたが見つからない。こんな生意気そうな物体いたらすぐにでも隠れるっての、しかも卒業した学校が同じとか…最悪だ…いや、それにしても、どこで…?




ううん





ううん…












あ。





「お前、もしかしてさっきの…?「うにゃにゃ!!なまえちゃーっんだよね!!」






ひとつだけ思い当たる節を越前リョーマに伝えようと口を開いた途端、どこから飛んできたのか物凄い勢いであたしに何かがぶつかってきた。否、抱きついてきた。

この声この話し方この態度、





「菊丸、英二…」


「正解だにゃー!」












でた






「お前まだテニスしてたの?てかまだ飛ぶの?」





菊丸英二。何故か何故かあたしに激しくなついてた後輩。そして、あたしに何故かため口なこの子。手塚国光にあんだけ注意されてたのに、めげなかったのよね、この子。で、今も尚まだそのちから、残っているのね。でもなんだかんだ、一番親しみやすかったのも菊丸英二だった気がする。




「なまえちゃんは相変わらず変な事言うにゃー!飛ぶに決まってるでしょ!てかてかー!可愛くなったにゃー!」

「だよね、なんかこう、女性らしくなったっていうか。」



「どっから湧いて出たの不二こちゃん。」





いつの間にか、菊丸英二の横に不二周助の姿が。こいつは忍者かなにかしらなのかい?なんなんだい?怖いよ、あたしは君が怖いよ不二周助。



「さっき不二がさーなまえちゃん見たっていうじゃん?だから、まさか留学したなまえちゃんがいるはずにゃいと思ったんだけど、本当に本物だにゃー!!」



「あ、そうなのね、」






不二周助め、さっそく言いふらしやがったのか。

ため息ひとつ。あたしは菊丸英二と不二周助の会話を聞いていたが、昔と全然変わってない。男らしくなった、ってきえばそうなのかもしれないけど、なんだか嬉しいような寂しいような、あたしは親みたいな気分になった。



「てかなまえちゃん、まだ手塚のこと手塚ちゃんって呼んでるのかにゃん?」


「なんで?手塚ちゃんはあたしの中で永遠にアイドルだから。」


「言い切りますね先輩」



「不二こちゃんはアイドルってか昔から闇に君臨してたっぽかったよね」

「ぷっ」


「英二?」



あ、今不二周助かにこってした、にこってした…ひいいっ!あたしはこいつの微笑みが世界で4番目くらいに怖い。ちなみに3番目以上は全部テスト。テスト怖い。撲滅希望。菊丸英二も、その笑みに震え上がっていたが、うん、当然。可哀想に。




「お前ら変わってないなあ」



なんだか、自然と笑みがこぼれた。懐かしい、昔に戻ったような気分になった。











「ちょっと、」




「「「ん?」」」




そして、また声が聞こえた。




「先にこのひとと話してたの、俺なんすけど。」



あ、忘れてた。越前リョーマ。むすっとしたような、そんな表情で菊丸英二、不二周助を見上げていた。おいおい、先輩にも生意気なのねこの子。激しいなあ最近の若者は。



「あれ?おチビいたのか!」

「ごめんごめん、気付かなかった」


「絶対気付いてましたよね、先輩たち…」




なんだ?仲良いのか?3年が1年とこうやって話すのみるの始めてなんだけど。あたしを除いて。てか、あれ?そう言えば、越前リョーマなんで青学のレギュラージャージ着てんだ?まさか、もうあれはレギュラージャージじゃなくて普通のジャージになったとか?!!


しかし、周りを見渡してもそれを着ているのはこいつを含めた数名。と、いうことは…?





「え、何、リョーマくんレギュラーなわけ?」






「うん」
















ええええええええぇぇ…










Day3 終



青春学園編3
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