生意気な奴は、嫌いじゃないよ
Day1 アルバイト
「あ、おかーさん?あたしあたし、そうそう、やっとね……」
みょうじなまえ、20歳、イギリスに留学してたせいで一年遅れた大学生活が、やっと始まる。
親元を離れてひとり、都心に出てきたあたしはついにアルバイトを見つけた。なんとなくコンビニとかファミレスとか服屋とか、そんなとこが苦手だったあたしは家庭教師のリトライという、名の通り家庭教師のアルバイトをすることにした。留学帰りだし、元々国語や社会の文系が好きだったために、自分に天職だと思ったからだ。
「ん?教える子?たしか…高校1年とかって言ってたような…明日挨拶の日だから聞いてみるー」
元々住所と名前しか聞いてなかったしな。でも、あたしがでた高校の近くだったし、いけるだろ。
あたしは、どんな子が教え子になるのかとわくわくしながら、眠りについた。
( 越前リョーマ… )
「越前…?」
目の前には越前の表札後ろにはでかい、寺。どうやら間違ったのてはないかと辺りを探すが越前はこれ一家。
げ、ま、まじか…
バカ金持ち…
一般家庭かと思いきやまさかの展開。やばい、まずいぞみょうじなまえ。失礼なんてしたらぶち殺される…!
「だは…」
盛大なため息ひとつ、あたしはインターフォンを鳴らした。
「はーい、あら?もしかして、リョーマさんの家庭教師さん?」
いきなり美人キター!
出てきてくれたお姉さんは、あたしより何個か上かな?って感じの素敵なひと。やべえな、こんなひとの弟…ん?でも弟をさんづけ?
かなりな金持ちじゃねえか馬鹿野郎。
「あ、はい!今日から宜しくお願いします!今日は挨拶に…」
「あら!そうなんですね?今おばさまもおじさまもいないから、リョーマさんしかいないんですが…」
ん?おじさま?おばさま?
ま、まさか、養子を取るほどの金持ち…?
勝手に想像を膨らまし気分の落ちるあたしを見ながらお姉さんはにっこりと微笑んだ
ああ、かわいいなあ。
「あ、大丈夫です、本人がどんな子なのか、ちょっと話がしてみたいので、リョーマくんが大丈夫なのであればぜひ…」
「そうなんですね!!それならぜひ!会ってあげてください!」
嬉しそうに笑みを浮かべるお姉さんに連れられて家の中に通された。が、なんていうか、普通の家って感じ?坊さんの家には見えないなあ…
二階にあるリョーマくんの部屋の前まで来ると、お姉さんが軽くノックをするが返事がない。
「あら?」
お姉さんが部屋のドアを開けてみるが、そこには誰もいなかった。
「コートにいるのかしら?」
「コート?」
「ええ、いつも練習してらっしゃるんですよ?私、ちょっと今から用事があって出掛けなくちゃいけないんですけど、裏まで行って頂いても宜しいですか?玄関を出て右にいくと、見えますから。」
「あ、すいません、そうします。ありがとうございます!」
「いえ!リョーマさんを宜しくお願いしますね、なまえさん!」
「え?」
今、あたしの名前…?
もう一度聞こうと思ったが、お姉さんは違う部屋に消えていった。おいおい、あんな素敵なお姉さん、会った事ないよあたし。
疑問を残したまま、あたしは裏にあるというコートに向かった。
大体、なんのコートなんだ?
スパンッ
コートに向かう途中、なんだか懐かしいおとを聞いた。
高く上げたボールをラケットで叩き込む、それは
「ほう、テニス、するんですね、越前リョーマくん」
「…は?」
今まで弾むように繰り返していた音がぴたりと止み、静かな空間にボールの転がる音だけが響いた
「どーもー!こんにちは、私ね、今回からキミの家庭教師になりました、みょうじなまえですー。宜しくお願いしますー」
我ながら明るい挨拶をしたかな、と思いきや、怪訝そうな顔でラケットをつきつけられた。
「あんた、誰?」
「いや、だから、家庭教師っす、はい」
「は?」
本日二度目の、は?
いやあたしが、は?
「は、もしかして、聞いてない?」
「正解。ったく、母さんのやつ…必要ないってのに…しかもこんなバカそうなやつ…」
「は、ば、バカそう?!」
「違うの?」
いら。
くっそ、調子に乗りやがって。いら。
「ま、でも任されたんでしょ?精々俺の邪魔になんないように頑張ってよ、センセ」
いら。
どうやらこいつ、相当生意気な高校生らしい。イライラするような口の聞き方をするわ、テニスばっかりしてるわ、礼儀もない。
はっきり言って苦手なタイプだ。でも
「生意気な奴は、嫌いじゃないよ」
「へえ」
絶対やりとげてみせる!
Day1 終
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青春学園編1