ぐらぐら



縛り上げた両の手。腰を打ち付ける音とくぐもった水音。
揺れる白い裸体。
こんな娘から鶴見中尉は何を引き出そうとしているのか。


爪先を引きつらせ女が達した。その間にも、抜き差しを緩めるなとの指示通り月島は腰を振る。
磨き上げられた人造石の表面に、自身の影が蠢いていた。解剖台に酷似したそれが軋みを立てる。被さるのは悲鳴にも似た懇願の声。
何を飲まされたのか、今夜は酷く過敏になっている様子だ。奥を穿てば、びくびくと精を絞り取ろうとするようにナカがうねる。

「もっ、や…やだ…やァッ……〜〜ッ!!」

立て続けに身体を痙攣させ女が気をやった。きつい締めつけに顔を歪めた時、肩に手が置かれた。

「まだだ、月島軍曹」

座っていた椅子から離れたらしい鶴見が、いつの間にか傍らに立っていた。
達するなとの言葉に短く返答を返す。

「こちらも弄ってやれ」

言ってその手は月島の右手を誘う。指が何処へ触れているのか確かめ、分かりましたと頷き、一物を埋めたまま、親指を押し当てる。
それだけで震えるナカが再び月島のものを締めつけた。

「や……や…ッ」

頬にまた新たな涙の筋が伸びる。
首を振り懇願するも、触れたそこを捏ねるようにすれば、仰け反り、嬌声を洩らした。

「良かったな。悦んで貰えたようだぞ」

一度抜けとの指示通り、まだ熱を持ったままのそれを引き抜く。ずるりと抜けるその感触に女が身体を震わせた。
鶴見の腕がその白い腹へと伸び、つ、と指先がなぞれば、肌は動きに合わせて柔らかく沈む。
指は臍から下腹部へ向け縦の線を引く。月島が場所を空けると、女の足の間へ立った鶴見は、どちらのものかも分からぬ体液を滴らせる秘部へと顔を近づけた。

「ひ…ッ……や、めて……も…やめてください…ッ」

未だ整わぬ息を押して、女が啜り泣く。
閉じようとした腿を左右に開き、押さえていろと月島へ指示が飛んだ。
代わり、その両腿を大きく開かせれば、涙に縁を赤くした目が、月島を見上げる。
何か言いかけたのか、唇が薄く開いたその時、びくんと女の身体が跳ねた。怯えた視線が下肢へと移る。

「な……に……?やだ……」

その目は足の間へ顔を近づける鶴見へと向いていた。

「安心していい。もう血は止まったようだからな」

懇願も虚しく、その指は濡れそぼった箇所を割り開く。幾度となく蹂躙を繰り返されたそこは、哀れなほどに赤くなっていた。
破瓜の痛みも、与えたのは月島だ。そして抉るようにその傷から血を流し続けさせたのも。

「おねが……っも…や……いやぁ…」
「だが気持ちが良いのだろう?こんなに悦んでいるのに。どうにも、君の口はなかなか素直にはなってくれないな」

柔い部分へ息を吹きかけられ、女が身を捩る。背を丸めようとしたのだろうが、両腕を頭上で縛られ、下肢の自由も奪われていればそれすらも叶わない。
それとも、と言葉は続く。

「まだ咥え足りないかな?君が望むならいくらでも用意させよう」

声に、女が青褪めた顔で言葉を失くした。
つぷりと、濡れそぼった箇所に指が沈み、そのままゆっくり中をかき回すのに、月島の手の下で足がびくびくと跳ねる。

「…ふ…っ……ッん……」

鼻にかかった声。身を震わせ、耐えるように女は唇を噛んでいた。
指を抜き立ち上がった鶴見がゆっくりと台の回りを歩く様子は、狡猾な獣が、捕らえた獲物のもがき苦しむ様を楽しんでいるかのようだ。
縄に擦れて裂けた皮膚を指がなぞれば、掠れた弱々しい声が上がった。

そこへ穏やかに笑んでいた頃の響きが微かに覗くのが痛ましい。
彼女の目が親しみを込め自分を見つめていた日が酷く遠く思えた。

胸へ伸びた手が乳房を揉みしだき、指が間に挟んだ突起を刺激すれば、応えるようにぴくぴくと身体が震えた。ふいに鶴見がそこへ顔を寄せる。大きく開いた口腔から白い歯が覗くのに、月島は目を伏せた。抑える足が跳ね、痛みに嬌声とは違う本物の悲鳴が上がる。
じゅる、と音を立てて吸い上げた唇が離れたそこからは、血の混じった唾液が伝い。白い肌に、赤く、糸のように細い線を描く。
細い喉が震え、女が嗚咽を漏らして泣きだした。

「君は運が良い。まだ指の一本も失くしていないんだからな」

慈しむようにその肌へ頬を寄せた鶴見が、目を細め笑いかける。

「月島」
「はい」
「そこへ上れ」

台へ上がれば、熱を奪う冷たく硬い石の感触が膝頭に触れる。それとは対照的に、掴んだ腿の肉は柔らかく、その熱が、冷めかけた頭へ再び揺さぶりをかけてくる。
月島を見上げた女は、目の端から涙を流し続ける。荒れた唇が声も無く月島の名を呼んだ。

「楽しみだな?この方が深くまで入るぞ」

手の平がゆっくりと腹を圧迫するように撫で摩るのに、女が身を震わせる。
台の上の方へと移動し、女の耳元で鶴見が囁いた。

「全て話すのなら、君がこんな辱めを受ける必要もないんだ」

ねっとりと掠れた低い声音を耳孔へ注ぎ込まれ、震える声で女は止めて下さいと繰り返す。

「よしよし、怖がらなくていい」

その手が頬を包むように撫でた刹那、

「月島ァ!!」

張り上げられた声に、女だけでなく月島の肩も僅かに揺れた。

「うんと激しいのが良いそうだ。思い切り奥を突いてやれ」
「…分かりました」
「や…やだ…っ」

止めて下さいと切羽詰まった声を聞きながら、しごくまでも無くそそり立ったまま硬さを失っていないそれを秘部へと当てる。
逃げようとする腰を引き戻し、折り曲げた身体へ体重を乗せ突き立てれば、再び甘い悲鳴が上がった。

「そうだ。いいぞぉ月島軍曹、その調子だ」
「………」

黙々と腰を振る動きに合わせ、女の頭も声も揺れる。
先端がある一点を擦り上げる度に、一層甘く高い声で鳴く。

「気持ちいいな?」

いい子だと、慈しむように鶴見の手がその頭を撫でた。

「ッうぁ、あ、ッあ、ッふぁ…あ」
「こんなに物欲しそうな顔をして」

指を入れられた唇の端から透明な唾液が溢れ垂れ落ちる。てらてらと濡れた指に挟まれ赤く柔らかな舌が覗くのに、ずくりと下腹部の熱が増す。

命じられるからなのか、それとも自ら腰を打ちつけているのか。絡みつく熱い肉の感触が、その境界を曖昧にしていく。
揺さぶられるごとに、苦しげに歪んでいた眉から力が抜け、そこには諦めの気配が滲み始めていた。
嫌という程恐怖を塗り込められた目の奥に、僅かな恍惚の火が灯る。
その目が月島を見つめ返すのに、言いようのない感覚が背を抜けてゆく。

「ッんぅ、や、ぁ゛、つき…し…、さッ…は、ッア、〜〜〜〜〜ッ!!」

また女が気をやり、歯を食いしばって動きを止める。黙って月島を見ていた鶴見がやれと顎を持ち上げるのに、律動を再開した。
達したばかりの身体には刺激が強いのか、いくらももたず、高い声と共に足が引きつれる。

「――――ッく、」

再び中がきつく締まり、一物を引き抜くなり、その腹の上へ月島も全てを吐き出した。
荒く乱れた互いの呼吸と、白い肌を汚した白濁。
ごくりと、喉が鳴る。

「お前が勃たなくなるまででいい。存分に楽しませてやれ」

取り出したハンカチで指を拭い、鶴見は月島の肩を軽く叩くと部屋を出て行った。

「……もう口を割れ」

静かに口を閉じた扉を一瞥する。

「もっと酷くなるぞ」

淡々と告げれば、恥辱に濡れた瞳が月島を映す。

「……話せることなんて…何も……」
「……そうか」

冷たい人造石に映る影の、どこにあるかも分からない目を見た気がして。
その瞳に浮かぶ熱に、ぐらりと眩暈がした。






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