また無駄に長いのに、エロ薄めです。

(そしていまさらの注意事項はさみます)
※百鬼夜行を妄想で補うという名の捏造が入ってきます
※綺羅羅は中学時は短髪で学ランを着ていたみたいなんで、入学時はそのまま短髪だったのかなと勝手に推測してます。その辺も妄想で捏造してます。

ライトで寛大な気持ちでおよみください。







『京都ですか?』

「ああ」

「あー、京都かぁ。どうせなら大阪のほうがよくね?」

「んー、どっちでもいい」


遠征に行くから。と雑に日下部先生に吐き捨てられた。「あ、俺は全日程ついてるわけじゃないからな。だから問題起こすなよ」なんて無責任なことを挟みながら
全く話を聞いてない金次くんと綺羅羅に「お前らのことだぞ!」と喝を飛ばしている。

『京都校の人も一緒ですか?』

「そうだ、日程によるだろうが」

「げ」

個性強めなメンバーを思い浮かべて、横から聞こえる落胆の声にちょっとだけ同意する。
でも桃ちゃんには久しぶりに会いたいし、いろいろ話したい。
チラリと右隣りに視線を移すと、ダルそうにポケットに手を突っ込んでる金次くん。

金次くんのこと……桃ちゃんに話してもいいかな。
夜になると開催されるであろう恋話を思って頭がぽやっとする。
でも毎度お互いに相手がいないので、最近かっこいいと思った俳優さんとかの話になって(主に桃ちゃんの推しの話を聞く)終わるんだよなぁ。だから今回も多分そんな感じになると思う。
てかだって……金次くんと付き合ってるとか

言えなくない?

だって金次くんだよ?

万一真依ちゃんにまで話が行った場合それはもうきっとすごく辛いことになるだろう。「趣味悪かったのね」って言われるならまだいい方……口も聞いてくれないかもしれない。なんて思って
金次くんだもん。だなんて失礼にも一人悶々と考え込む。ギャンブラーだし、基本態度でかくて悪いし
でもそうなったら、金次くんのいいとこちゃんといっぱいプレゼンし……あれ?いいとこ?いいとこ?
んー、……いいとこ??

それってでもあの二人っきりの時だけの優しいとことか、甘いとことかそういうのは言葉にできないし
それになりより、そういう金次くんは私だけが知っていたい。なんて独占欲が顔を覗かせて

じゃあやっぱり桃ちゃんに言うのはナシだなぁ

てか馴れ初めとか聞かれたら終わるもんなぁ……ごまかせるきもしないし。金次くんとエッチなことばっかりしててメロメロにされましたとか言えないもん



そもそも金次くんだって

私と付き合ってるって誰にも言ってないし


綺羅羅にもパンダくんにも

べつに、言ってほしいわけじゃないけど

金次くんって「こいつ、俺んだから」とかサラッといいそうなのに
飽きたら別れるんだから、言う必要もないって思ってるのかな


あ、これは……考えたらダメなやつ




「んじゃミョウジよろしくな」

『ぇ、あ……はい』

ズキッと胸が痛んだところで引き戻されて
いけないいけない。私だけでもしっかりしないといけないのに
横二人はこういうことに関しては全く頼りにならないのだ。というか、いの一番に京都駅で行方不明になりそうだな……なんてちょっとだけゲッソリする。







「京都ってもう何回もいってるだろ?俺ら……もう飽きた。特に面白いとこもねぇし」

『そんな……遠征でいくんだから。飽きるとかじゃないでしょ?』


スーツケースにちっちゃく折り畳んで洋服をいれる私の横で金次くんが人のベッドで寝転んで寛ぎながらスマホを弄ってぶつくさ言う。

『もう準備おわったの?』

「あ?んなもん5分で終わるって」

明日の朝出発なのにやってなくて大丈夫なの?って小さく溜息が出る。

「いや、40秒で支度出来るぜ。俺は」

何故か得意げにそういう金次くんを、ハイハイって適当に流すと
「ばかお前ラピュタネタだろうが!」と無駄にテンションが高いからちょっとだけ鬱陶しい。


「んだよ、ナマエ楽しみじゃねーの?」

『え?』

「京都デートすんだろ?」

"京都デート"って……さっきまで京都飽きたとか散々言っておいて、楽しみじゃねーの?って……そんなの
じわじわほっぺたが熱くなる

『あそびに、いってるんじゃないんだよ?』

「あ?引率いねぇ日は遊ぶに決まってんだろ」

『でも』

「京都のラブホいこーぜ」

『ぇ、そ……そんなのだめに決まってるじゃん』

「あ?きまってねーし。まじで行けそうだったら行こうぜ。じゃねーと遠征中ナマエに触れねぇし」

絶対、そんなことしちゃダメなのに
金次くんがそういうふうに言ってくれたのが嬉しいだなんて
バレたらだめだ。キュッて、口元に力を入れて

『だめ』

「は?んだよ。ナマエは俺と一緒にいたくねぇの?」

心臓ばくばくしてる。スマホのカレンダーをチラリと見て、ずっと金次くんに言おうって思ってたこと

『かわり、に……京都から帰ってきたら、その』

心臓の音うるさくて
喉が張り付いたみたいに声が出にくくて


『デート、したいんだけど……いいかな?それで、お泊りもして』


本当はクリスマスにデートしたいって言いたかったけど
胸の奥ちっちゃく刺さった痛みが邪魔して、それを言う勇気はなくて

こうして私の部屋で過ごす時間が当たり前になって
金次くんは口は悪いけどいつも優しくて
キスもエッチなことも、それ以外の時も二人の時はとろとろに甘やかすみたいにしてくれる

だから、きっと私と金次くんの関係は特別で
恋人同士でって

おもうのに



"好き"ってその一言が引き出せないことが、ずっと胸の奥に刺さって鈍い痛みを生み出している。
痛みになれることはなくて、見てみぬふりもできなくて

だから私も"好き"って怖くて伝えたことはない


それでもやっぱり好きだと思う。



金次くんがこの部屋に来てくれる限りは私は一緒にいられるから

だから今のうちに、金次くんにはじめてを貰ってほしいだなんて
"デート"のお誘いの奥に滲んだ重めの好意が、バレちゃうんじゃないかってばくばくと心臓がうるさい。クリスマスだなんて言ったら、もっとバレちゃいそうだから……そんなイベントは興味がないみたいなフリをして

反応を返してくれない金次くんに、どんどん胸の痛みが鋭くなってきて

『あ、の』

忙しいなら全然大丈夫だよ!なんて言葉を付け足さないとって無理矢理笑って顔を上げると

「いいぜ。お泊りデート」

『ぁ』

よかったって胸の痛みが消えて

「ナマエから誘ってくれんのはじめてだな」

ニッて笑った金次くんに胸がキュッてして

『そうだっけ?』

本当はわかってたのに何でもないふうに誤魔化して
だってどんどん金次くんのこと好きって思っちゃうんだもん。

いつか終わる関係なのに


「んじゃクリスマスに泊まろーぜ。イヴな」

胸が詰まったみたいに息がしにくくて

『いいの?』

「あ?あたりまえだろ」

『へへ、嬉しい』

顔が緩んじゃうのをとめられなくて
でももういっかって、鈍い痛みを感じないくらいに嬉しくて


「あ、でも京都も隙あらば泊まるからな」

『えッ』

「かわいい下着もってけよ?」

『ばか』

だからダメだって思うのに、嬉しくなっちゃって誤魔化すように畳み終わっていた洋服をもう一回畳みなおして
もうすでに、こっそりかわいい下着をスーツケースの一番下に入れたことは金次くんには内緒だ。










わたしはいま、猛烈に焦っている


何かに掻き立てられるように思考が冷静にできなくて
嫌な妄想に取り憑かれて、後ろ向きなことで一杯で


せっかくの京都、ちょっと……いやかなり楽しみにしてた遠征の日程が過ぎていき
桃ちゃんとの会話も適当なドラマとか俳優さんとかの話をして
泊まってるところも学生寮の空いてるところを間借りしてるみたいなものだから、金次くんも夜来ようと思えばこれる感じで
ただそんなことをして真依ちゃんに見つかろうもんなら(以下略)
とりあえず"待て"の状態でお互いそれぞれ過ごしていた。
これが終わって、東京にもどったら金次くんとクリスマスお泊りデートするんだって正直浮かれてた。だからたぶんしっかりしろって、お前は"いい子"だけが取り柄だろ?って道を外れそうだったから罰をあげる。って、神様に言われた気分だった。


神なんかくそくらえだ




未曾有な大規模テロ予告

"百鬼夜行"


周りの大人たちがみんなバタバタしててピリピリしてる
日下部先生だって会議があるって東京にもどって、そのまま東京で陣に加わるらしく京都にはこないらしい。
わざわざクリスマスイヴに仕掛けてくるなんてどんな性悪野郎だよって殺意しかない。

私にとっては一大決心で
こんなことでって他人からしたらちっちゃいことかもしれないけど

でもだって

すごいいっぱい勇気だして

それなりにいっぱい悩んで、覚悟したつもりだったんだ

だからこんなことになって予定が狂って

この小さな歪のせいで、金次くんが卒業を待たずして私から遠くにいっちゃいそうって妄想がおっきくなって急激に怖くなる。



高専ではいつものこと
私と金次くんと綺羅羅の三人だと、だいたい一人と二人に分かれる。もちろん一人なのは私。
それについては特に何も思ったことはなかった。入学したころはどちらかと言えば私と綺羅羅のほうがよく話してた。「綺羅羅って呼んで」って言われて、仲良くなれたのかな?って嬉しくて。でもそれもいつの間にか減って、気づけば綺羅羅は「金ちゃん」って金次くんを慕ってて……綺羅羅だって男の子なんだしそりゃ秤くんの方が楽だよね、仲良くなったならよかった。くらいの認識で
女子は私一人だし、それが当たり前だと思ってた。

でも髪も伸びて、露骨に可愛くなる綺羅羅に、お?あーそっかぁて脳が理解して。別にそれ自体はそうなんだー。くらいの感じだったのに

もしかして、綺羅羅ってそういう意味で金次くんのこと好きなんじゃって思い至ったのはわりと最近だった。鈍い、鈍いにもほどがある。自分でもそう思う。
今回の京都遠征でももれなく綺羅羅はずっと金次くんと一緒にいるし……金次くんの悪ノリにも綺羅羅はいつものってて、きっと金次くんも一緒にいて楽しいんだろうなって思う。術式も相性いいみたいだし、二人で任務に行くことも多いし。まぁそれは階級のこともあるからだけど……それで、だから
疎外感と嫉妬に脳みそが犯されて

私と金次くんは正反対で、本来交わらない者同士なんだって思い出しちゃって


だって


金次くんは別に"わたしのこと"を好きなわけじゃないからって急に不安になったんだ。

だってもともとはいつも"面白みがない"って言われてて"ノリわるい"とか"くそ真面目"とか、そういう事しか金次くんに言われたことなくて
エッチなことしてる時しか"かわいい"って言われたこともないし

セックス中の
「すき」とか「きみだけ」とかそういう言葉を鵜呑みにしちゃいけないって、それは知ってる。
だってヤリたいだけだから、だからそういう男に捕まっちゃダメなんだって。そんな話はネットでも小説でもドラマでも映画でも漫画でも至るところに転がってる。


なのに


その程度の"すき"すら貰えてない


燻ってた鈍い痛みが急激にズタズタに心臓を引き裂くみたいに
なんてことない、ちょっとした事で
こうも自分が簡単に崩れるだなんて知りたくなかった。

追い打ちをかけるように安全思考で臆病者の私が顔を出して
未曾有のテロだもん。特級クラスを相手にしないといけないかもしれないんだよね?そんなの……死んじゃったらどうしよう

金次くんに会えなくなっちゃったらどうしよう

いつもの私なら、本当に死にそうになったらすぐ逃げよう。だって私まだ学生だもん!なんて思えるのに
もう情緒がぐちゃぐちゃで、何を考えても悪い方にしか考えられない。








大浴場を出たところ、ソファーの端っこに座ってそわそわする。部屋にドライヤーがあるから髪もまだ乾かせてなくて少しだけ寒い。でもいまはそれどころじゃなくて
トントンと聞こえてきた足音に心臓ばくってして、手ぐしで髪の毛を整える。
チラリと廊下の方を見て、歩いてきた人物を確認する。金次くんと加茂くん。待ち人来たるだけど予想外の組み合わせに思考が止まる。でも東堂くんも綺羅羅もお風呂長そうって一瞬どうでもいいこと思って、すぐさま頭から追いやる。
立ち上がって待ち構えてたら、なんだか待ってました感がすごいよね?なんて声をかけようって自分の計画性のなさにパニックになる。そうこうしてると金次くんがすれ違うくらいに近づいて

「おーナマエ。ひとりか?」

金次くんが声を掛けてくれてホッとする。
とりあえず座ったまま彼を見上げて

『ぁ、うん。ちょっとテレビみてから部屋戻ろうかなって』

適当にでっちあげた理由を口から出してみる。不思議じゃないよね?
テレビは中途半端な時間だからかニュースが流れてて、しまった今きづいた。なんて適当なんだ……ニュースみてたって無理があった?なんてぐるぐる頭を回る。

「おまえ髪乾かしてねぇの?風邪ひくぞ」

金次くんがするりと指先で髪の毛を掬ってきて、いきなりのことに心臓がばくばくする。

『ぁ……えっと、忘れてた?』

「あ?ったく、変なとこ抜けてるよなお前」

隣に加茂くんがいるのに髪を触って頭を撫でてくる金次くんにどきどきして、チラリと加茂くんに視線をやる。
その瞬間金次くんの指先が頭皮を這って、それから耳の後ろを優しく撫でる。ぶわって耳が熱くて思わず声が漏れちゃいそうになって、キュッて唇に力が入る。

『ぶ……にゃに』

「あ?ぶさいく」

『ひゃめてょ』

頭を撫でていた片手で顔を挟むように、ぶちゅって頬を潰されて変な声が出る。
そっちがしてきたくせに不細工だなんて言葉を平気で投げつけてきた金次くんにちょっとムッとする。


「先に戻る。ミョウジ、風邪ひかないようにな」

『あ……うん。ありがとう』

一応気を使って声をかけてくれた加茂くんに返事をすると、頬を潰していた手が離れた。金次くんの体温が離れたことに少しだけ寂しさを感じながら、お目当てだった金次くんに視線を戻す。座ったままの自分に、立ったほうがいいかなとか、言いたかったこととかごちゃごちゃで

『きんじ、くん』

「ん?ナマエ。どした?」

金次くんのパーカーの裾を指先で掴むと、屈んで顔を寄せてくれた。
優しい「ん?」にキュンてして

金次くんの部屋いっていい?


この一言、いうだけ。なのに

声が出ない

お風呂あがりの熱をまとった石鹸の香りにどきどきして、心臓ばくばくして。頭がくらくらする。

金次くんがすきっておもう


背筋を伸ばして、金次くんのパーカーの襟元を掴んで緩く引き寄せて
唇にキスをした。
一瞬だけ触れて離れる唇に猛烈に寂しさを感じて、今度はもう少し強く手に力を入れて近づく。金次くんの力の抜けた柔らかい唇の間を割って入って、ぬるりと舌が絡まる。くちゅって小さく音を立てて金次くんの舌もいやらしく動く。身体の奥あつくなってもっとって深く


金次くんが私だけのものになればいいのに


わたしを、金次くんのものにしてくれたらいいのにっておもいながら



名残惜しくもゆっくり離れた唇。
こんな、いつ誰が通るかわからないところで私からキスしてしまったと思うけど……でもそれ以上に今は金次くんとの距離をゼロにしたくてしかたがなかった。

「らしくねーじゃん。我慢できなかった?」

"らしくない"の一言に身体の熱が一瞬で奪われてグッと下唇を噛んで俯く。
金次くんの思う"わたしらしい"ってなんだろうってそっちに意識が奪われる。ここ数日ずっとわたしを離さない言葉たちにざくざくと胸を刺されて痛い。
金次くんの好きなタイプの女の子だったら、こういう時に何て言われるんだろう。少なくとも"らしくない"ではないことは私でもわかる。

『ごめん』

ごちゃごちゃした思考で泣きそうになっちゃって、それを必死に押さえ込むので精一杯。せめて面倒くさい女にはなりたくないのに、もうきっと十分に面倒くさくなってる。こんな鬱々とした気持ちでこれ以上一緒にいたら嫌われるかもしれないって急にそわそわしてきて、この場を離れるためにはと思考が切り替わる。
何か適当なことを言わないとっておもうのに、適当なことが全然思い浮かばない。

『んッ』

グッと顎を上げられて唇に金次くんのそれとあわさる。さっきのお返しと言わんばかりに入り込んだ舌が上顎と歯の間をなぞってぞくぞくする。
お腹が少しだけひやりとしたとおもったら、モコモコのパーカーの中を金次くんの手が這い上がって胸を柔らかく掴む。くッと優しく肉に沈む指先に身体がピクリと反応して思考は混乱する。

「今日はダメって言わねーの?」

艶っぽい声色。離された唇が紡いだその言葉に傷んだ胸が悲鳴を上げる。
親指が胸の谷間をなぞって、膨らみを堪能するみたいにゆっくり沈む。目を合わせてられなくて、目線を右下に逸らす。
それこそいつもなら絶対"ダメ"だ。だって他人に見られたら恥ずかしいし
なのに今は思考が痛みで麻痺していて、なんなら「ナマエは俺のだ」って誰かに見せつけてほしいくらい。でもそんなの"わたしらしくない"
優しく胸を堪能する指の動きに身体だけは素直にじんじんしだして


他の、女の子なら何て言うんだろう

金次くんは、なんて言って欲しいんだろう

金次くんの求めてる正解を言いたいのに、なんて答えるべきか全くわからない。こういう時にテンパって、冗談みたいに軽く返せない自分は金次くんのタイプじゃない気がして
それとも可愛く「きょうはいいよ」って甘えるみたいに言える子が好きなのかな

頭の中ぐちゃぐちゃで、どうしたらいいかわからない

どうしたいかすらもわからない


『ぁ……』

胸が痛くて詰まって、言葉が何も出てこない。


「冗談だっつーの。それより髪乾かせ。な?」

パッと身体を起こして離れていった熱に焦燥感が襲ってきて
"冗談"だったんだって、だったらやっぱり軽い感じで言葉を返すのがきっと正解だったんだって泣きそうになる。なんでこんな、可愛げもなくてつまんない女なんだろう。

『ん』

なんとかバレないようにコクリと頷いてゆっくり立ち上がる。うん、これでいいんだ。早くこの場から立ち去らないとどんどん可愛くない面倒な女になってしまう。
じゃあまた明日。って普通の顔して言わないとなのに声が震えちゃいそうで、ごちゃごちゃ考えてるのがバレそうで、金次くんの方を見ずにスッと横をすり抜けるように歩きだして部屋に向かう。

「ここで待ってっから、ちゃんと乾かして来い」

『ぇ』

背中から投げかけられた言葉にいろんなごちゃごちゃがワッて吹き飛んで反射的に振り向いて金次くんと目が合う。

「おら、はやくいけ。風邪ひくぞ」

ポケットに手を突っ込んでる金次くんは、いつもみたいにダルそうだけど
目尻が少しだけ下がって、言葉遣いとは真逆の柔らかい声に


胸がきゅうって熱くて


『ありがと』

なんだかわかんないけど、泣きそうなくらい嬉しくなっちゃって
パタパタと数秒前とは比べられないくらい軽やかに音を立てて階段を上がって自分の部屋の扉を開いた。
ドライヤーをかけながら、ゆっくり呼吸をして落ち着かせる。待っててくれるんだって金次くんを煩わせてるのは確かなのに、そう言ってくれたことが嬉しくて
感情がジェットコースターみたいに目まぐるしく変わる自分に心底呆れる。
金次くんが私に向ける感情が、私がほしい"好き"ではないにせよ、一緒にいてくれるならやっぱり嬉しい。だからこれでもいいんだって言い聞かせて、電源をオフにしたドライヤーをゆっくりとテーブルに置いた。







「となり加茂だから」

『え、そうなの?』

「だから、しーな?」

人差し指を口元に当てて「しー」ていう金次くんに可愛いって馬鹿みたいにキュンてして。コクコクッて頷く私を見て、ポンッて頭をなでて歩き出した金次くんに頭がポーッてする。
私だけ息を潜めて静かに廊下を進んで、1階の突き当りを左に曲がった1つめの部屋。ドアを開けた金次くんの後ろについて中に入る。
パチッて電気がついて中は私の寝泊まりしてる部屋と大して変わらない。必要最低限の物しかなくて、ベッドと小さなテーブルがあるくらい。そこにスーツケースが広げられたまま、ぐちゃっと服が雑に重ねられている。それに金次くんぽいなぁって思って、ここは京都だから東京の高専の寮とは違うけどそれでも金次くんの個人的な空間に入ったのははじめてで胸がきゅうってする。真冬の芯まで冷える様な冷たい部屋の空気に寂しくなって、抑えきれなくて咄嗟に目の前のおっきな背中に手を伸ばして、ギュッて腕を回して抱き着く。

「ナマエ?」

立ったまま後ろから金次くんを抱きしめて、手がパーカーの胸元を掴む。
体全部がぴとってくっつくように、なるべく身を寄せて
金次くんが少しびっくりした声で名前を呼んで、それにまた"らしくないこと"をしたって思うけどとめられなかった。

「なぁ……なにそんな不安に感じてんだ?」

パーカーを掴む私の手を金次くんの手のひらが優しく包む。金次くんの言葉にやっぱりバレてしまったって力が抜けて抱きしめる腕が緩む。
わたしのことを、好きかわからなくて
金次くんが私から離れちゃうんじゃないかって漠然と不安になってたなんて、知られたらきっと呆れられる。
きっと面倒っておもわれる。

『ぁ……の』

緩んだ腕を金次くんが優しく掴んで、身体が向き合うように動く。

「そんなあのテロが心配か?」

『ぁ』

眉を寄せて伺う金次くんに、私の悩みの核はバレなかったんだと少しだけホッとして
でもテロが不安なのも事実だ。
なんて答えようかって口の中で言葉を探すけどなかなか出てこない。
金次くんが手を引きながらゆっくりベッドに腰掛けて

「おら、こい」

ポンッて太ももを叩いて私を誘う。

ああもう


金次くんがすき


誘われたままに金次くんの上に座って、ギュッて背中に力強く回された逞しい腕に
心臓ばくばくしてるのバレちゃうって思いながら、私も金次くんの首元に腕を絡めて顔を埋める。


「そんな心配しねーでも、ナマエ強いだろ?」

ゆっくり落ち着かせるように暖かくておっきな手で背中を撫でられて、いろんな不安が解されるように胸がポッとする。

『つよいって、おもってくれてたの?』

意外だった。弱くはないけど安全思考で基本的に任務は等級が低い呪霊の任務にあたってたし。一緒の任務の時は金次くんがどんどん強い呪霊の方にいっちゃうから、性格的にもその補助とか雑魚みたいなのばっかり相手にしてたし。だから金次くんにそこまで術師として評価されてないと思っていた。

「つえーだろ。お前初日に俺を軽々転がしといてよくいうぜ」

『あれはッ』

「言っとくけどなぁ。油断、はしてたけど……手を抜くつもりはなかったんだからな」

入学早々最初の組手で金次くんの背中に土をつけてしまったことを今更持ち出してきてびっくりする。でもあれは、私は術師の家系でもともと体術の稽古をつけてたからだし。て思いつつもあの時から私のこと強いって思ってくれてたんだって嬉しくなる。

「それにナマエがいつも努力してるのは知ってる」

グッて抱きしめられたまま、そう言われて胸がくすぐったい。
顔が見えなくてよかったかも……だって、今凄く締まりのない顔をしてて嬉しくて目の奥が熱い。
ぎゅうって金次くんを強く抱きしめ返して

『ありがとう』

すきだなっておもう

「でもやばかったらすぐ逃げろ」

『それは大丈夫。いつもすぐ逃げてる』

「ん、ならよし」

『金次くんも逃げてね?』

「あ?……あー……」

絶対に逃げないであろう金次くんにそう言う。だって、本当に心配なんだもん。

『むり、しないで。お願いだから』

「ん……んん」

歯切れの悪い返事に。心配なのに金次くんらしいなって
だからそれを止めることは私にはできない。

「つーかお前」

『ぁ、はい』

一転して急に責めるような口調に切り替わった金次くんにドキリとして

「あんま部屋着でうろうろすんな」

『へ?』

予想外すぎる一言になんていった?て頭がはてなで埋まる。
部屋着?部屋着っていっても、女の子の定番ブランドのモコモコのパーカー(パステルは甘すぎるからアイボリー)に裏起毛の緩めのレギンスパンツで……そんな可愛い部屋着でも、みすぼらしい部屋着でもない。真冬だから薄着でもないし

『ぇ、なんで?』

「あ?なんでじゃねーよ。加茂も東堂もいんだろーが。あとメカ丸も」

え?どういうこと?質問したのに全然意味がわからなくて

「そーいう気抜けた格好が好きなオトコもいんだから、あんま見せんな」





え?


それは嫉妬ですか?って頭がぐらぐらして
もうなんか……好きすぎる

『きんじ、くんは好きなの?』

「あ?あー……あー、俺は別に」

珍しく言い淀んで、嘘つきって思わず小さく笑っちゃう。


「かわいいとは思う」

『えへへ』


口元緩んじゃって

「わかったか?」

『わかった』

「ん」

金次くんが首筋にぐりぐりと額を擦りつけてきて擽ったい。


『金次くん』

「あ?」

心臓ばくばく
胸がいっぱいで
甘い空気にめまいがしたみたい


『その、無事に……終わって東京にもどったら』

「なぁナマエ」

『ぇ……なに?』

中止に追い込まれたクリスマスデートの約束をまた取り付けようって勇気を出したのに。その言葉を遮られて胸が苦しい。

「22,23デートしよーぜ」

『へ?』

「イヴまで自主鍛錬メインだろ?」

百鬼夜行まで学校自体は休校扱いで、加わる生徒はおのおの鍛錬する感じになっている。でもまぁそれなりに集まって模擬戦やらもしたりするわけで

『いいの、かな?』

「あ?いーんだよ。そもそも東京もどってから、とかそんなんダメだから」

『ダメ、なの?』

「ダメだろ。死亡フラグの定番だろ」

"死亡フラグ"ってことばを頭の中で反芻させる。なるほどって一瞬納得して、なるほど?でもいいのかな?ってちょっと考える。金次くんが腕の力を抜いて密着していた身体がゆっくり離れる。
視線がパチリと絡まって

「だからやりてぇことはやっとかねぇと。な?デートすっぞ」

『うん』

金次くんにとって"やりたいこと"に分類されるんだって嬉しくて。見つめられて心臓ばくばくして頭くらくらして頷くことしかできない。

「22は朝鍛錬して……昼からどっかデートいくか」

『んッ』

おでこに、目尻に、頬に、口角に

優しく触れるだけのキスを落としながら金次くんが言葉を紡いで

「んで23は一日中一緒にいて、ホテル泊まる」

頭ぽやんってしてきたとこに
チュウッて唇にキスされてきゅんきゅんする

「どうだ?完璧じゃね?」

『うん。かんぺき』

トロンとした瞳で金次くんを見つめて
二度三度、また唇があわさって、どんどんお互いを求めて深くなる。
頬に添えた指先に金次くんのピアスが触れて無意識に親指と人差し指でそれを挟んで撫でる。指先が拾う硬い感触に、もうちょっとしたらここにあのピアスをつけてくれるのかなって、だったら嬉しいって胸がきゅうってする。


『んあッ』

「みみがよかった?」

離れた唇が左耳に寄せられて、耳たぶを挟んで裏側を舌で撫でられる。ぞわぞわって身体が跳ねて口から甘い声が漏れる。

「声、おさえろ」

吐息混じりに、囁いて
じゅるって厭らしく唾液を絡めて舐められて

「俺はバレてもいいけど?」

『んッ、ふぁ』

しんとした部屋に小さな水音と、私の声が響いて恥ずかしくなる。

「まぁ、エロ動画でもみてるって思われるかもな?ナマエの声えろいから」

『ぁ、ん』

侵入してきた手にブラの上から乳首を当てられて一気に身体が熱くなる。

「あ……想像しただけで腹立つわ。お前の声聞かせたくねぇからやっぱ我慢しろ」

ガブッて食べられるみたいにキスされながら、そんなこと言われたらもう嬉しすぎて
必死に声が出ないように、ギュッて金次くんのパーカーを握って耐える。
我慢させる気がないんじゃないかってくらい。服の下でブラをずり上げられて、ぷっくり主張しだした乳首をくにゅって優しく抓られる。

『ぁ…、ふぅ』

親指と人差し指で優しく潰されて気持ちいいので頭が揺れる。お腹の奥じくじくしてたまらない。

「乳首でイく?」

耳元で色気を含んだ声で囁かれて、べろりと耳を舐め上げられてもう頭がおかしくなりそう。
ずっと触ってほしくて、自室でもないから一応一人エッチも我慢してて
そんな状況でだいすきな金次くんにこうしてやっと触れてもらえて……それだけで気持ちいいのに
せっかくならもっと欲しい。だなんて欲深くなっちゃって

『やだぁ』

「いや?ならどこがいーんだよ」

はあはあ息乱しながら、いっぱいほしいって頭がどんどん蕩け出して

『ナカ』

「ナカ?指いれてほしい?」

『んッ』

ギュッて強めに乳首を潰されてとろりとお腹の奥から溢れだすのがわかった。

「声我慢できんのかよ」

『ぅんッ、がまん……すりゅから』

もう全然"待て"できなくて、ゆらゆら腰を揺らしておねだりする。唇を金次くんの耳とに寄せて

『金次くんの指で、奥ぐちゅぐちゅして』

欲情しきった雌の声で囁く

『ぁ』

「すげぇぬるぬる」

指がゆっくりショーツの中を進んで割れ目をなぞる。入り口をぬちぬち指先で弄ばれて待ち望んだ刺激を期待して身体が震える。

『きんじく、ッ!!』

焦らさないでって思うと同時にずぷって奥まで一気に太い指をいれられて
お腹がよろこんできゅううって指を締め付ける。

『あッ、ふ』

「ナマエこえ。我慢できねぇならやめっぞ」

ぐちゅぐちゅ気持ちいいとこ優しく撫で撫でしながら、そんな意地悪なことをいってくる金次くんに頭めろめろなって
なんとか我慢しないとって歯を食いしばる。

「我慢できねーなら俺の肩でも噛んどけ」

あたまぐらぐらして
目の前の金次くんの肩に頬を押し付けて耐える。

奥揺らすようにぐちゅぐちゅされて
ふわふわして
身体の力抜けなくて、ググって快感の波に押し流されて

『く、ぅ』

身体ビクビク跳ねて、イッてるのに
まだとまらない快感に

やばい

おっきな波が押し寄せる
耐えらんないって、きもちよすぎる

霞む視界にうつる金次くんの首元。わざわざフードと襟元の隙間に唇を捩じ込んで、噛み付くみたいに咥える。

『んん』

舌で金次くんの感触を味わいながら
気持よすぎて頭真っ白になって
きもちいい余韻が全然終わらなくて、ビクビク身体が震える。

んあって唇を首元からはずして、やっと再開できた呼吸をゆっくり数えながら。
ぼんやりみえる金次くんの肌色に紅く跡がのこってて
どろどろに蕩けた頭のまま、ゆっくりとそこに唇を這わせた。

甘えるように吸い付いて


ごめんねって思いながら

金次くんが好きなのって懺悔するみたいに罪を増やした。











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