吸血鬼すぐ死ぬ

こじらせども


やっと本番あり。変態気味ですがライトめのエロです
※途中視点変わります!ムダに長いです!





「名前さ……好きな人いるんだって」

え?ドキリと心臓が音を立てた。

「はぁー、いやー……まあなんつーか。結構落ち込むよなぁ」

「え…ショット……?」

「たぶん名前の好きな人ってロナルドだぜ」

「へ?」

「ターちゃんと話してるの聞こえたんだ。好きな奴のこと、同じ退治人でかっこいいし優しいって言ってた。かっこよすぎて自分じゃ無理ってさ」

「そ、そうなんだ」

「……かっこいいって、認めたくないけどロナルド顔だけ見たら格好いいじゃん?名前はロナルドの情けないとことかあんま見てねぇもんな」

「……」

「はぁー、どうせ顔だもんなぁ……名前ですら顔って……」

「ま、まあ元気だせよ」

「ムカつくからロナルドにはぜってー教えねぇけど」

ガクッと項垂れてそう話すショットを宥めながら
俺はショックを受けている自分に内心びっくりしていた。


名前はVRC職員であり退治人でもある。だからなのかクセが強い他の退治人と比べたらかなり"普通"な感じの女性だ。
実際VRCの職員ということもあって、退治人の仕事と言っても昼間にある地味目の仕事ばかり引き受けてるから余計にそう思うのかもしれないけど

そのおかげか、俺は他の退治人よりかは一緒の仕事をすることも多い。
わりといつもニコニコとしていて、地味な俺のアームだって格好いいって言ってくれるし。依頼だって俺と一緒になったら『頑張ろうね』なんてちょっと照れた様に笑う表情がかわいくて……

人当たりがいいから、皆に対してそうなんだ。って、別に俺が特別なわけじゃないって、ずっと言い聞かせてたのに


どうやら俺は自分で思っていた以上に

勝手に期待してたみたいで

胸がズキッと痛い。


なんか俺、すげー恥ずかしい奴だな。


たしかにロナルドはかっこいいし、優しい奴だ。
ギルドで会ったときはわりと名前も話しているし
名前はいい子だから、ロナルドだってそれなりに好意があるはずだ

そっか……


そうだよな。


ロナルドと名前が上手く行けばいいな。


なんて、あの時は本当に



本当にそう思ってたんだ




なのに、なのに






名前の身体に触れてしまった

想像してたよりもずっと柔らかくて、あたたかくて
甘い匂いでクラクラした。

「サテツ」と熱を含んだ名前の声が耳の奥にこびりついて消えない。
ふとした時に現れては一瞬で身体があつくなって堪らない。

「しゅきぃ」だなんて、とろとろな声色で身を摺り寄せて言う名前は最高にかわいくてエロかった。


ガンッ


「はぁー、どうすりゃいいんだよ」

脳みそに焼き付いた彼女の艶めかしい姿を消し去りたいと、壁に頭をぶちつけてみるもののただ鈍い痛みがジンジンと広がるだけで
ちっとも消えてくれなかった。

気にしないで?そんなの、気にするに決まってるだろ!
自分で名前に言っといて、自分は気にしまくりの意識しまくりだなんて知られたら生きていけない。
なんなら俺より名前の方が気にしてるだろうし、好きでもない男にあんな姿をみられて触られて……

あんな


あんなに気持ちよさそうに、とろとろになって


ガンッ



ちがうっ!!だから……
好きでもない、俺なんかに

あんな名前は吸血鬼の仕業で、だから目が醒めた彼女は相当ショックだったはずだ。
名前は嫌だったに違いない

なのに、ごめんって……名前は謝ってきて

名前は何も悪くないのに、俺なんかに触られて嫌だったろうに俺にまで気を使って……


俺じゃなくて、ロナルドだったら




ああ、なんかもう

埋まりたい

死ぬほど消え去りたい







「あなたあの子の事が好きなんでしょ?」

「え?」


路地裏でみつけた!と指を刺されて何事だ?と反応が遅れた俺にすかさず距離を詰めてきた目の前の人はヒトとは思えないほど綺麗だった。
男か女かすら判断に迷う中性的な美しさは路地裏のビルの隙間から漏れた光で輝いていた。
にこりと笑う口元から除いた牙に、ああ吸血鬼かと……浮世離れした美しさに納得する。

「あの、えっと……」

変態吸血鬼ばかりが集う新横浜に慣れきった俺は吸血鬼だからとすぐさま戦闘体制にはならずに
先程投げられた言葉をやっと脳内で思い出して処理しはじめた。


好き?

あの子??


「なんで手を出さなかったの?せっかくのチャンスだったのに」

ぷんぷん!と可愛らしく露骨に怒ったオーラを出しながら話しかける彼?彼女?に困惑が生まれる。

「えっと……なんのことか」

「え?退治人の子よ!電車で一緒だった!あなた好きなんでしょ?私わかるんだから」



バッと名前の顔が浮かんで
顔が一気に熱くなる


「せっかく協力したのにぃ、あれで手を出さないなんてヘタレめ」


きょうりょく?
言葉の意味を理解すると同時に視界が狭まる。

ドゴォッー!!

気がつけば左手がアスファルトにめり込んでいた。

「ちょ、コワッ!」

「お前が」


名前をあんな目に


あんな



「何怒ってんのよ。好きなんでしょ?ならいーじゃん」

「いいわけねーだろうがぁああ!!!」


グワッと視界が狭まったのがわかって
ああ、頭に血が上ってるんだって自分でもわかるのに止められない。


吸血鬼のせいだと
だからあんなことになったのも名前はもちろん俺は悪くないんだ。って自分に言い聞かせて、なんとか次にあった時はいつも通りにしないとって

思ってたのに



" 好きなんでしょ? "



俺のせいだったのか?

俺のせいで、名前は好きでもない俺に


「私わかるんだよねー!好きなら素直になりなよぉ」
ペラペラとアイツが何か喋っているけど、頭に入ってこない。ひたすらぐつぐつと脳みそが煮えたぎる様に熱い。

私怨はよくない
アイツをボコボコにしたところで、名前が傷ついたことは変わらない

でも

止まれる気がしない。

拳から力が抜けない



『サテツ……?』



ああ……どうして今なんだ


いつもは優しい柔らかい名前の声が困惑の色を含んでいる。





会いたくなかった



なんでこんなに熱くて苦しいんだ

煮えたぎった脳みそが冷めない

ぼーっと熱い








最悪だ




本当に、

消えたい。なんなら誰でもいいから俺を埋めてくれ

あのときの自分を殴ってでも諌めたい

いや、なんかもう。最低すぎる

殴るなんてもんじゃ足りない。






『ふたりで、ですか?』

「ええ、お願いします。サテツさんに名前さん」


ニコリと笑うマスターとすら目を合わせたくなくて後ろの酒瓶のラベルを凝視してなんとか狼狽えた態度を出さないように堪える。
名前と会ってもどんな顔していいかわからなくて、出来るだけ会わないように距離をとっていた。
自分でもわかってる。あまりに露骨だったとは思う。ただでさえ名前の事で頭がいっぱいだったのに、あの吸血鬼のせいで今度はオレがあんなことになって………名前にまた俺のせいで嫌な思いをさせてしまった。
名前の名前を聞くだけで持ってたジョッキを粉々にしてしまったし、ギルドで鉢合わせたもんなら慌ててその場から逃げた。
そんな俺のことをわかってなのか、わざわざマスターが俺と名前に二人で依頼を受けてほしいと言ってきた。

『えっと……わたしは大丈夫、です、けど』

視界の端で名前が伺うようにこちらを見ているのがわかる。でも俺は名前と目を合わせられない。
どうしたらいいかわからない。

あの時、俺のせいなんだから名前を巻き込んじゃダメだと自分を律せたのはほんの数秒で
熱に浮かされた脳みそは名前に触れられたいと思ってしまって



振りほどくべきだったのに

『おあいこにしたい』

そう言われて、その方が名前の気持ちが軽くなるなら。なんて
馬鹿だろ。自分が触ってほしかっただけだろうに、名前が与えてくれた言い訳にのっかって名前に欲を吐き出して
我にかえって死ぬほど落ち込んだ

それなのに

馬鹿みたいに名前を思い出して
ぶり返すように身体が熱くなる。

また名前に触れたいと思ってしまう


そんな自分が最低すぎて

名前にバレたくなくて
目すらあわせられない

名前は俺のせいって知らないから、変わらず笑顔で接してくれようとしてるのがわかる。彼女の優しさに漬け込んでしまえば……なんて悍ましい思考が過ぎっては罪悪感が産まれて、それでまたギリギリと締め上げられるように胸が痛くなる。

ロナルドと名前が上手くいけばいいのにって本当に思ってたハズなのに
二人が顔を合わせてるだけで指先が冷たくなって足元がグラグラと崩れる様な感覚に襲われる。



名前のあたたかさと柔らかさと
あの甘い声を

あんなふうに、知りたくなかった


今まで通りじゃ嫌だなんて



名前が好きだなんて

こんなふうに、気付きたくなかった




どうしたらいいかわからない








『ここ、だね』

「そうだな」

サテツと全然目が合わない。
あの時馬鹿みたいに調子に乗って欲望に負けてサテツに触れてしまったからバチが当たったんだと
サテツは据え膳、ラッキー!だなんて割り切れる男じゃなかったんだ。そんなの最初に私があんな事になった後のことを思えばわかってたはずだったのに

なのに

そんなに嫌だったのかな。
私に触れるのも、触れられるのも

もしかしたら女として意識してもらえるかも。なんてちょっとでもあの時思っていた自分が憎らしい

意識してもらうどころか、視界にすら入れてもらえない。

謝ったらいいのかどうかすらわからない

それより、正直に好きだと伝えたほうがまだマシなのかもしれない。
サテツは優しいから、恋人でもないのにああいう行為をしたことに罪悪感があるのかもしれないし
だから実はずっと好きだったんだと伝えてしまえば……せめて好きな人とだから私は嫌じゃなかったって言える。そしたら罪悪感も少しはマシになるかも。なんて思って

でも、好きだからってあんな風に迫ったりサテツに触れたりしてもいいわけじゃないことには変わりはなくて
優しいからこそ気持ちに応えられないのに、ああいうことをしてしまうのはよくなかったと余計に悩ませてしまいそうな気もした。

あれは吸血鬼のせいで、事故みたいなものだからお互い忘れよう?って言ったほうがまだライトな感じでいつも通りに戻れるんじゃないの?

"好き"だなんて伝えたら、余計に"重い"ってなるかも


サテツは優しいから


きっと私の好意は負担になる


ズンと心が重たくなって胸が苦しい



吸血鬼の目撃情報があった廃ビルに二人で足を踏み入れる。例のあの吸血鬼もあのまま姿を見ないから、もしかしたらあいつかもとも思うけど
またあんな目にあったら今度こそお終いだと


おもっていたのに


「あ!やっほー!お二人さん。また会ったねぇ」

『あんたッ!』


最悪すぎる


なんなの?ほんとに私に恨みでもあるんかあいつ!


『なんでこんなとこにいるの』

「なんでっていうか……んー」

とりあえず変に近づいてまたあんなことになったら嫌なので距離を取って話しかける。どうしようかと思いつつ時間稼ぎも含めつつで会話をする。
この前サテツブチ切れてたから大丈夫かな?てチラリと彼を見上げれば
見たことないくらい静かに怒っているサテツがいて

その怒りは吸血鬼に対してだろうに

キュッとなんだか心臓が冷たくなった


『あんたとりあえず大人しく捕まってくれない?』

「んー……」

無駄に整った顔で曖昧な返事しかしない吸血鬼に、このままじゃサテツあいつのこと殴り殺しちゃうんじゃないかって気が気じゃない。

「おいお前」

『サテツッ!』

聞いたことないくらいの低い声に身体がピクリと震えて咄嗟に声をかける。

『私が行く、から!サテツはちょっと待ってて、ね?』

「いや、名前」

『大丈夫。今研究中の催眠洗脳対策グッズ持ってるから』

嘘である
でもこのくらい言わないと本当にサテツがあいつを殺しかねない。いや、別にあいつがどうなろうが知ったことではないんだけど……でもなんだかサテツのそんな姿は見たくなかった。

キュッとサテツの右手首を掴んで懇願するような目で見れば
一瞬目があったのにサテツの眉間にシワが寄って、ふいっと逸らされて

「……わかった」

ズキンと胸がいたむ

『ん、ありがとう』

パッと手を離して。私に触られたくなかったよね。なに気安く触っちゃったんだろうって指先が冷たい。
泣きそうになるのをグッと堪えて

だめだめ、集中

深呼吸して一歩踏み出した


「戦うつもり?」

『大人しくしてくれないならね』

「ふむ……まあいいよ。大人しくしても」

『へ』

「聞きたいこともあるし」

『……』

素直に立ち尽くしたままの吸血鬼に銃口を向けたまま警戒しながら近づいて
後ろは壁だから追い詰めたといえば追い詰めた形だ。とりあえず逃げられない様にチラリとサテツに目をやれば
逃げられない様にサテツも距離を取ったまま構えて警戒している。これなら大丈夫かな

『で、なんでVRC抜け出したの。ほら連行するよ』

「あのさぁ」

『なによ』

「なんでまだセックスしてないの?」

『は?』

「せっかくこの前もお膳立てしたのに、意味分かんない」

『ちょっとッ!』

サテツに目線だけやると、一応小声だったからか彼は聞き取れてないようで一安心する。

『あんた本当にいい加減にしなさいよねッ!』

「好きなんでしょ?」

『はいはい!もういいから!え?なに?それ今関係ある?』

「あるわよ。あなたたちにくっついて欲しいなーって思ってるのに」

『おもしろがってんじゃないわよ!』

「は?もうなんなのあなたたち」

『は?』

こっちの台詞だよ!

意味分かんない

『もういい!連れてくから』

引き金を引いてしまおうかと思っていると

「こっちきて」

ふらっと揺れたと思ったら急に走り出して横の扉を開けた。

『ちょッ!』

油断してたわけじゃないけど、追いかけっこするつもり?って入っていった扉にすかさず手を伸ばす

「名前ッ!」

そうだ罠の危険性もあるかもってノブを回して少しだけ中の様子をうかがう
廃ビルの一室だから奥に行っても逃げ場もないはずで、だからサテツを待って一緒にって


思ったのがよくなかった

せめて扉は無理矢理にでも開けっ放しにしとくべきだった



なんだこれ


なにこの部屋


なにこれ


こんなのリアルであんの?


ちょっと意味わかんない



何番煎じですか?は?


は?



"セックスしないと出られない部屋"



血の気が引く
身体が冷たい


サテツが


絶望したみたいな顔をしている



ああもう

サテツにこんな顔せてるのは私だ



さいていだ













まんまラブホの一室で

潰された窓はあるけど、無理やり開けたら謎の亜空間みたいな闇しかなくて
流石に怖すぎてそこからの脱出は不可能とみなした。
ご丁寧に大きめのお風呂に冷蔵庫には飲み物にお酒にちょっとした軽食まであって
扉はサテツがメキョッて聞いたことない音を立てながら壊したら、こちらも謎の闇しかなかった。

信じられない


綺麗に整えられたベッドシーツの上にご利用規約と書かれた紙

さいあく

"セックスしないと出られない部屋"
この度はご利用誠にありがとうございます。
こちらセックスしないと出られない部屋となっております。

ご丁寧に書き出された文章に頭がぐるぐるして心臓が潰されたみたいに苦しい。

流石にここまでくれば、私だってサテツとエッチできる!ラッキーなんて思えない。初回がこれなら多分内心ラッキーかも!って恥ずかしがりながらも仕方がないから!ってサテツを誘っただろうけど
もう2回も失態を犯して、今の状況が最悪なものであることは流石の私でもわかる。

馬鹿みたいに無駄に堅苦しい言葉で文字が綴られている紙がぐしゃっと歪む。

だめだめ、だめだ

おちついて とりあえずここから出ることを考えないと

『スマホも繋がらないね……えっと、とりあえず出る方法を』

ガンガンッ

壁が砕けて落ちる。でもやっぱりあの闇しかなくて、それでも壁を殴り続けるサテツに胸がギュッとして

『サテツ、一回おちつこ』

サテツに歩み寄れば、拳から血が滲んでて思わず息を呑む。

『サテツッ』

ぎゅって震える手でサテツの手を握って

「名前、ごめん……」

サテツの声が震えてる。弱々しい声に
サテツが謝ることなんて何もないのに

だってこの状況をつくりだしたのは

私のせいなのに


ボロボロと


苦痛を含んだサテツの声に耐えられなくて


『ちがうの、ごめんねサテツ』

ギュッて手を握ったまま、許しを請うように額を寄せて。
俯いた顔から、涙が溢れて視界が滲む。ぼたぼたとカーペットの色を変えた。


『私のせいなの』


「名前?え!お」

止めたいのに止まらなくて
頭がぐちゃぐちゃて
震える声で


「名前のせいじゃないッ」

焦ったサテツの声に、しゃくりあげながらも頭の片隅で優しいなってぽやんと思う。


『ごめんね』

「だから、」


『ちがうのッ』

サテツに嫌われちゃうかも。でももう頭まわんなくて

『わたしね、サテツが好きなの』

ギュッてサテツの手を力いっぱい握って胸の痛みを誤魔化すように

「ぇ」

『それで、あの吸血鬼に……それがなんでかバレて』

サテツの両手から力が抜けたのがわかった


『おもしろがってか、こんな趣味の悪い事してくるの』

喉の奥がカラカラに張り付いて言葉を出しにくいけど、なんとか絞り出して

『だから私のせいなの、ごめんねサテツ』




状況を掴めてないサテツの時が止まって
私一人ぐすぐすと鼻をならす。


「名前は……俺が好きなのか?」


『ぅん』


殺伐とした空気が消え去って、ポカンとした声で反復されて
俯いたまま答える。ぐすぐす言い過ぎて鼻水が垂れてしまいそうで……サテツの顔を見る勇気はないからそのまま俯いて鼻をすする。

「ロナルドは?」

『ぇ?』

「名前はロナルドが好きなんじゃないのか?」

『えッ』

今度は私の番で

ロナルド?

え、なんで?


ぐちゃぐちゃな顔のまま思わずサテツを見つめる。
あ、やばい鼻垂れる。
ぐしぐしと鼻を拭いて

『ぇ、なんでロナルド?』

「いや……ショットが」

『ショット?』

今度はショット?

「ショットが、名前はロナルドが好きなんだって」

『え!?』

どういうこと?

『なにそれ、え?なんで?そんなこと私思ったことないよ』

だって、ギルドの女子会の時に槍玉に挙げられるから女子は私がサテツの事好きってみんな知ってるし
シーニャなんてところ構わず「サテツと最近どう?」なんて聞いてくるし
だからまだサテツのこと好きなのバレてるとかはわかるけど
なんでロナルド?しかもショットって……

「だって……ッ」

『え?』

困惑のままサテツを見上げていると
急にサテツの顔が真っ赤に染まって目が泳ぎだす。

「そのッ」

あまりに真っ赤になって狼狽えるサテツになんだか少し冷静になれた。
なんでロナルドなんだろう。なんて思いつつ……てか好きって言っちゃったな。なんて
でもこの感じからして予想外ではあるけれど、嫌って感じじゃないよね?迷惑じゃないよね?ってサテツの様子を伺う。

さすがに、ここで『だからエッチするのイヤじゃないよ』って言ったら
サテツは私とエッチしてくれるんだろうか。いや、だめだめ!散々あの2回でやらかしたのにこんな事言ったらまた拗れちゃう。でもだって、本当にセックスしないと出られないなら……その、するしかなくない?なんてもう半ば思考停止である。

「おれ、も……好きなんだ」

『へ』


脳内でぐるぐるとサテツを言いくるめてエッチする計画を浅ましくもたててたのに
幻聴ともとれる都合のいい言葉が聞こえてきて

いやいや、さすがに都合がよすぎる

幻聴だよね

包むように握ったままだった手がサテツによって解かれて
今度は私とサテツの指が絡まるようにギュッと握り直される

『ぇっ』

サテツのゴツゴツして分厚い皮を指先で感じて
ぐわぐわと揺れる様に熱が上がる

サテツの茹で上がったみたいな赤い顔に


『すき?』


幻聴じゃないの?


「名前が好きだ」

まっすぐなサテツの視線に


ズキュンて


あ、もう


『すき』



やばい。サテツかっこいい。しゅき







『えっと……利用者が条件を全うし性交を行ったと当方がみなした場合扉の施錠を』

「?」

言いたいこととか、聞きたいこととかをとりあえずいったん飲み込んで二人でベッドに腰掛ける。冷蔵庫からサンドイッチを取り出して、呑気に二人で食べながらぐしゃぐしゃになった紙を覗き込む。
む、無駄に難しい。なんやあいつ!だいたいこっちは了承してないのに、なんなのこの表現?んーっと……あの吸血鬼なんなのさ。逆に馬鹿なんじゃないの?賢く見せたい馬鹿なんじゃない?
サテツはもっもっとサンドイッチを頬張ってあんまり文章が頭に入ってなさそうで、でもそれもちょっとかわいいかもしれない。なんて私も重症だ。
サテツがサンドイッチを食べ終わったのを確認してから口を開いた。

『えっと……条件を満たしてエッチしたら出れるって書いてある』

「条件?」

『ん……えっと白い箱から一枚紙を取り出して、指示に従え?って』

「指示?」

『なんだろ、どういうやつなのかな』

白い箱白い箱って二人でくるりと見渡すと、枕ともに白い箱があって
これかな?と手を伸ばす。隣に避妊具が置いてあったのをしっかり確認しつつ見てないふりをして箱を手に取る。
わたし、今からサテツとエッチしちゃうってことだよね?これ、え?てそわそわする。

『引いていい?』

「ああ」


かさりと指先に紙の感触がして、1個選んだらいいのかって適当に一つを摘む。
そのまま引き上げて、二人で一緒に見ようかとサテツの方を見るとサテツは冷蔵庫を開けていた。
え……なんか急に呑気だな。いや、かわいいけど

「名前!」

『ぇ、なに?』

一人で見てしまおうかと思った時にサテツに声をかけられてビクリ震える。

「サンドイッチ補充されてる……」

『へ』

「これ、無限に食べれるんじゃないのか」なんて真面目な顔しながらまた冷蔵庫からサンドイッチを取り出したサテツに肩の力が抜ける。
本当食べるの好きだな。いや、私も好きなんだけど。え?サテツ状況わかってるのかな?

もういいやって手元にふと目線を落とすと

『ッ!!』

開きかけのメモ用紙に心臓がどくりと音を立てて


そっか……セックスしないと出られない部屋なんだもんね。
え?でもこんな、え?だめだよ、こんなの


だめにきまってる

あいつ……なんなのこれッ


「なんて書いてあった?」

『えっ!』

ボフッと隣に座り直したサテツにのぞき込まれて慌てて髪を閉じる。

「え?」

『えっと……その』


こんなの恥ずかしすぎる


無理


両想いってわかったけど、だからってこんなの


「名前?」

『ち、違うのにしよう。もっかい引いてみる』

「え、名前?」

箱に伸ばした手をガシリとサテツに止められて

「なんだったんだ?また引いてどっちも従わなくなったら厄介じゃないか?とりあえず何だったかみせてくれ」

『う……』

みせたくない。出来れば
でもここで変に時間をとっても仕方がないのはわかってて

『はぃ』

「ん」

サテツに手渡して私はギュッと膝の上で拳を握る。

「へ」

ピクリととなりでサテツのおっきい身体が揺れて

「こ、これって、名前」

チラリと見上げればサテツの顔が真っ赤になってて、私だってきっと真っ赤だ。顔が熱い。


"顔面騎乗位"


恥ずかしくて死んじゃいそうなのに

お腹の奥が痛いくらいにジンジンして

もうどうしようもない








ヤるにしてもシャワー浴びないとってとりあえずバスルームで籠城を決め込んで、隅々まで身体を洗った。おっきいお風呂だから一緒にはいっちゃってもよかったかも。なんて妄想は一瞬で吐き捨てて、
不備がないか必死に鏡で一人身体のチェックをしてた。
エッチ終わったら一緒にはいるとか……なんて思ったけど、出られないからエッチすんであって……出られるようになったらすぐ出るんだもん。と緩んだ思考を引き締める。

下着ってどうするんだろ。なんて思いつつも履いてたパンツをまた履くのはシャワーの意味がないよねって思って、恥ずかしいのを無視してバスローブに身を包んだ。
ひょこっと顔を出すとサテツが慌てて立ち上がって、入れ替わるようにバスルームに入っていった。


どうしよ

めっちゃドキドキする


サテツと


セックスするんだって


しかも両想いだったなんて


ガバッと手で顔を庇ってニヤニヤしちゃいそうなのを隠しながらサテツが上がるのを待った。

ギシリとした音と揺れるベッドにサテツが来たんだと目線を上げれば
バスタオルを腰に巻きつけただけのサテツがベッドに腰を掛けて、分厚い胸板にキュンとする。いつもの服だってわりと身体にピッタリしてるからわかってたのに、素肌はそんなに見る機会がなかったから
一気にドキドキと心臓が音を立てる。

「名前、その」

『ん』

「優しく、するから」

『ぅん』

ああ本当にサテツとセックスするんだって、もうそれだけでお腹の奥が熱い。



『んっふぅ』

「はぁ」

ベッドの上に二人で座って、くちゅくちゅと厭らしい音を立てて舌を絡めあう。

「ん、ぁ」

『しゅき、らてつ』

絡めながら舌ったらずな甘い声でサテツを煽ると、ギュッて腰を抱き寄せられてキスがもっと深くなる。
キスをしながらゆるゆるとおっぱいをおっきな手で揉まれてはらりとバスローブが肩から滑り落ちた。

『んッ、あ』

キュッて勃ちあがった乳首を指で摘まれて気持ちよくて子宮が一緒にキュンと収縮したのがわかった。

「もう、する?」

『ふ、ん……ぁ』

初めてのセックスだからいっぱい時間をかけたいところだけど実際そうも言ってられない。ひとまず指示を先に終わらせないとって膝立ちになる。サテツがごろんとベッドに寝転ぶのを見つめながらふと


『あの……』

「ん?」

『ど、どっちむき?』

「むき?」


顔面騎乗位だなんて、なんとなくわかるけど実際よくわかんなくて
スマホも繋がってないから、調べるのも無理だった。
前向きが普通なのかな?とも思うけど、恥ずかしいから顔を見られたくないかも。ってちょっと悩む。でも後ろ向きってことはお尻がその……って思い至って
それならまだ前向きの方がマシだよね?

「こっち向き、じゃないか?」

『わ、わかった』

おずおずとサテツの頭元に膝立ちで移動して、ゴクリと息を呑む。
サテツも固まったままひたすら天井を見つめていて

『目、つぶってて』

ゆっくり太腿をあげて、顔を跨ぐ

恥ずかしい

足をひらいてふくらはぎにサテツの肩が当たる

恥ずかしいのに


ぜったいめちゃくちゃ濡れてる

サテツの瞼がピクリと動いて

『んッ』

腰をおっきな分厚い手で撫でられて、太腿が震える

「目、あけていい?」

『ぅ、んッ』

恥ずかしくてバッと顔を逸らす。
くっとお尻を押されて腰が下がって、柔らかくてあたたかいのが触れる。

『あっ、ひ』

「ん、名前ッ」


ちゅぷって音がして、暖かくてぬるぬるしてる。大事なとこを丁寧に行ったり来たりするその舌にゾクゾクッて快感が身体全部に走る。
気持良すぎてわけがわからない

『く、ぅ……あッ、そこぉ』

「ふぅ、ん?」

『きもちぃ、あンッ!』

クリトリスを吸われて、柔らかい舌で嬲られて腰がガクガクと揺れる。頭の中パチパチ弾けるみたいに快感が強くて

『あっ、それすきぃ。あっぁッ!』

こんなのすぐイッちゃう

『きもちッ、も…』

ぷるぷると太腿が震えて、恥ずかしい筈なのに気持いいとこをサテツに押し付けるように腰が動いて

『あッ!んん』

もうイッちゃう

ググッと全身に力が入って、頭のさきっちょまで甘い快感で痺れて
絶頂を迎えたクリトリスがピクピクと脈打つように震えてるのがわかる。
呼吸を整えるのに必死で、もうイッたからこれで終わりだと思うのに

『ひゃッ、ん、サテツぅ』

れろれろと柔らかくクリトリスを舌でねっとり舐められて腰が抜けそうになる。

『もうッいまイッたの、だから……も』

「んッ、名前」

ガッチリとお尻をおっきな手で固定されてて逃げられない。乱れた呼吸のままサテツを見て訴えるのに、快感はとまらない

「指令をクリアしたって判断されないと、またやり直しになるかもだろ?だからもう少し時間をかけたほうがいいかなって」

『ぇ、ひッん!!』

ちゅぷちゅるって

「名前もッ、またするの恥ずかしいだろ?」

『ひゃあッ』

確かにそうかもそれないけど、イッたばかりのクリトリス舌でねっとり弄くられて身体がおかしくなりそうで
サテツの言葉に"誰かに見られてる"んだって思い出して
"恥ずかしい"ことをしてるんだって

すごく厭らしいことをサテツとしてるんだって

そう脳みそにわからせられて

どんどん頭がとろけだす

『ふッ、にゃあ!』


意識が白くなって、ぱちぱち、ぐるぐるまわって
もう支えられなくて前のベッドボードに手をついて必死に身体が快感に崩れるのを制する。太腿はガクガク震えてもう力が入らなくて
サテツの顔に座り込むようにお尻が沈んで

サテツの余裕のない熱い洗い呼吸にめろめろになって

『も、ああッ本当に!サテツっもう、らめッ』

お腹のおへそのもっと下が気持ちよくて熱くて、弾けてしまいそうで

『やめてッ、きもち、やぁ!漏れちゃ、ぅ』

「んッ、ぅ」

きもちいいの

もうだめになっちゃうくらいきもちいい

だからやめてって

めろめろの蕩ける瞳でサテツを必死に見つめるのに

熱で滾ったサテツの瞳がまっすぐわたしをみてて

ああもう、こんなやらしい顔みられてるって


『もッ!やらぁ!イッ、も……でちゃうぅ』

耐えられなくて膣が快感にうねるたびに、溢れだして

『ぁッ……ぅ』

潮吹きってやつなのか、オシッコなのかももうわからないくらい頭がぐるぐるで
自分じゃとめれなくて、きもちよすぎる


身体の震えがとまらなくて、気持ちいい余韻を引きずる。クリトリスのした、尿道を舌先で撫でられて
やっとフッとお尻を掴んでいたサテツの手から力が抜けて
ペタンとサテツの鎖骨あたりに力が抜けてお尻が落ちる。


『サテ、ツ……』

びちゃびちゃに撒き散らして濡れてるかと思ったのに、そんなことない状況に

『のんだの?』

「え?」

『サテツのへんたい』

意味分かんないのに、全然嫌じゃなくて
身体があつくなる

「名前がかわいくて」

ちょっと息が上がって、トロンとした顔をしたサテツに、キュンッとお腹の奥が鳴る





ころんってサテツの横に寝そべって

『もう挿れよ?』

とろとろな瞳でおねだりする




ああもう、だいすきサテツ



「あッ!くぅ」

『んんッはぁ』


ぐっぽり、ずぶって

正常位であてがって。指で慣らしてないのに、自分で腰を揺らしてサテツのおちんちんを奥に誘う。
太腿がぷるぷるして、さっきの気持よすぎてもう身体がばかになってるみたいで

気遣うようにゆっくりしてくれるサテツを無視して、ぬるぬるのぐちょぐちょなおまんこがサテツのガチガチのおちんちん美味しいってガッツいてる。
それでも慣らさずの挿入はサテツのおちんちんおっきくて苦しいくらいで

でもそれがまた気持ちよくて

サテツのおちんちんが名前のナカにはいってるってきゅんきゅんすりゅ

『あぁ、もッ、きもちぃ』

「おれも、きもちッ」

余裕のなさそうなサテツにもっときゅんきゅんして

『サテツ、しゅきぃ。らいすきなの』

「ああ、名前。俺もッ好きだよ」

『も、ほんとしゅきぃ』


ぱちゅぱちゅエッチな音たてながら子宮の入り口おちんちんをで撫で撫でされて気持よすぎてたまらない
サテツがすきすぎる

ごりゅッて我慢ならないように時折強く突かれて『んぐっ』て自分の喉の奥からちょっと下品な声にもならない音が漏れ出て
それもすごいエッチでたまらない


ぶわっと身体の奥底から沸き立つきもちよさに


『サテツ、いっぱいッみてもらお?』

「んッ」

『サテツとセックスしてますって、ちゃんといっぱいしてましゅってぇ』

「はぁ、名前」

『んッ!サテツすきぃ』


だいすきなサテツとセックスしてるとこ
いっぱい見せつけちゃえなんて

きもちよすぎて頭がとろけておかしくなる

ぐわぐわと視界が揺れる


『あー、らめ、サテツっきもちい』

「ん、もッ俺」

『んぁ、サテツいきそ?も、でる?』

「あッ名前」

『いいよ、あたしもッきもち』

「いい?名前ッ」

『ンッ!!』


奥を揺さぶられるみたいに
おっきい身体でガッチリと上から押さえつけられるみたいに
サテツの身体ぶあつくて、あったかい
しっとり汗ばんでて

ああサテツとセックスしてる

きゅって腕を回して抱きしめて

逃げ場のない快感を全部受けとめて
ふかくふかく

ふたりできもちいい波にのまれる









あのあと剥がしたあと無理矢理はめてた扉はなんとかひらいて、もとの廃ビルへと出られるようになった。
ただ、やっぱり私は欲望に弱いらしい。『一緒にお風呂はいろ?』なんてサテツを言いくるめて、ちっちゃく手足を畳んだサテツと一緒に湯船に少しだけ浸かって
正式にお付き合いするんだよね?の確認とか、いつから好きだっただとか軽く会話をしてから部屋を出た。
「俺がギルドには行くから、名前はゆっくりしてて。な?」
そうサテツに言われて大人しく自宅に帰った。結局吸血鬼には逃げられちゃったし、サテツなんか言われてないといいけどっておもいつつ
「その、マスターには付き合った事報告していいかな?だいぶ気を使わせちゃったし。昔からお世話になってるし」って言うから恥ずかしながら真っ赤な顔で私は了承した。
てか、女子会メンバーにはなんて言おう!とか浮かれきってて

「厄介なことになったごめん」のメッセージがサテツから来てたのに気付かづに寝ちゃったんだ。


『あ、の……』

「ああ、名前さんこんにちは」

『ぁ……こんにちはマスター。その、昨日はッ』

「おいッ名前ー!!」

『ぁ、マリア』

それから音沙汰のないサテツが心配でギルドに顔を出したらマリアがニヤニヤしながら話しかけてきて

「名前よかったじゃねーか!昨日は随分とお楽しみだったみてえだな」

ニカッとした笑顔と共に吐き出された言葉に

『ぇ』

「サテツとくっついたんだろ?よかったなぁ」

『ぁ、う、ん』

サテツみんなにバレたのかな?なんて呑気におもったのに


「あの吸血鬼がよー、名前とサテツは仲良し中だから邪魔しないであげてね!なんて言いに来てよお!恋のキューピッドだなんて名乗るもんだからびっくりしちまったぜ」

『へ』

なんですと?

『え……ちょっとまって、マリアさん。なんて?』

「よかったな!名前ずっとサテツに抱かれたいって言ってたもんな」

『ちょッ!!!!!』


たしかに言った。ベロンベロンに酔った時に、その一回の発言を鬼の首でも取ったかのように何回もリフレインされて
何回も女子会の度に言質を重ねられた。それをこんなギルドの真ん中で言うなんてッ

一応ヒソヒソ声のつもりだったみたいだけど、全然潜められてない会話で
うう、心なしか意識の視線が突き刺さってる気がする。

真っ赤な顔をあげれば

にこやかに微笑むマスターと目があってボッと顔が赤くなる。

「吸血鬼はここで自分でVRCに電話して大人しく行ってくれましたよ」

『そ、れはよかったです』

ひとまずよかった……よね?と頭がパニックになる


『あの、サテツは今日もう来てますか?』

「サテツさんはロナルドさんとショットさんに今朝連行されていったので、そのままですかね」

ギルドのみんなに知られたんだと確定して



こうして

サテツと私は晴れて

ギルド公認のハンターカップルになったのだった。



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