王様ランキング

9


城に戻ってきたものの、どうしていいかわからなくて。うだうだとアピスと会わないようにしていた。
その癖に見つからないように影からアピスを覗いては、何だか疲れて痩けた様な彼を見ては勝手に心配になる。
以前よりは少しだけ柔らかくなった彼の雰囲気に、話しかけやすくなったのかメイドが笑顔で受け答えしているだけで胸が苦しい。

勝手に逃げ出して、勝手に嫉妬して
胸の中がぐちゃぐちゃで

本当に私は自分勝手で醜い

アピスが好きで、堪らなくて
なんでもいいから傍にいたいと思ったのに。それなのに私の所に来てほしいだとか、私だけを見て欲しいとか

逃げてるのは私なのに

もしかしたら、もう私は必要ないと
次こそは言われるんじゃないかと。そればかりが頭を支配する。




だから恐くて堪らなくて
好きで堪らなくて、頭がおかしくなりそう



だったのに



「名前」


アピスが名前を呼ぶ。低くて、甘く痺れるような声。
いつもはピッと胸を張っているのに不安げに背中を丸めて小さく揺れる身体は大きいはずなのになぜか小さく見える。

ヘーゼルの瞳が今にも溢れてしまいそうなくらい潤んでいて



ああ、この人は私を愛しているのだなと



あんなにぐちゃぐちゃに恐かったのに
何をそんなに恐れていたのかと拍子抜けしてしまうくらい

ストンとわかってしまった



「名前。大丈夫だったのか?」

『あ、うん。大丈夫』

「そうか……」


逃げ回っていた私を捕まえることに成功したアピスからは、私の事で頭がいっぱいです。とダダ漏れで、こんなに露骨に顔に出した彼は見たことがなくて
なんだか身体の力が抜けてしまった。

「家族の体調が悪くて実家に帰っていると聞いた……それに名前自身も怪我をしたと、それで実家の方に行こうとしたのだが」
珍しくアピスが捲し立てるように言葉を発していて、それをぽやっとした頭で聞きながら…アピスが実家に突撃しない様に家族の体調が悪いから実家に帰ったことにしてくれたのかな?とかどうでもいい事を照らし合わせていた


あんなにうだうだしてたのに

『アピス』

「名前?」

伺う様に私を覗くアピスの瞳は揺らいでいて

ヘーゼルの瞳に光が入って綺麗だ


ああ、アピスも私と一緒なのだなと


『すき』


揺らいでいた瞳が見開いて、息が止まったのがわかった。
ここで"愛してる"と恥ずかしくて言えない私は意気地なしだ。


「名前ッ」

グッと大きな手で抱き寄せられて


「名前」

泣きそうな震える声で名前を呼ばれる

『アピス』

沈みこむ事のない彼の鎧に阻まれて、少しの苦しさを感じるけれどそれすらなんだか嬉しく思えるくらい


「愛している」


ああ、もう

世界が滲む


『わたしも、あいしてる』



私達はようやく本当に結ばれた気がした。









(言い訳+オマケ)

ここまで読んでいただきありがとうございました。
長い間完結できなくて申し訳ないです。会わないと、それだけでなんだか無駄に不安にかられたり。でも実際に会うと、なんであんなに不安になっていたんだろう。と思えるくらい愛されてるのに気づく。馬鹿みたいに自分で自分を追い込んで不幸になりたい時って厄介。
本当はもっとちゃんと書きたかったのに、これ以上先伸ばしにしていたら本当に大変な事になると思って。とりあえず一旦閉じさせていただきます。てか最後こんな短いんだったら、続けてアップしとけよ!そうですよね。ごめんなさいです。
本当はアピス目線とか入れるつもりだったんですけど、プロポーズとかも、お花畑で指輪かな?キャッ!とか。妄想してたんですけど……
少し余裕が出来たら肉付けして再アップ出来たらして行きたいです。コメントなどいただき、大変嬉しかったので何としてでも完結をと、アップさせていただきました。ありがとうございました。

お詫びにもならないオマケを下につけてます。また余裕が出来たらこれも肉付けして、番外編とかしたいなーとか。思ったりしてます。







(ドルーシと絡む)


「アピス、お前……、け、けっこん!?」

「ああ」

サラッと結婚したと。爆弾発言を投下してきたアピスに驚きを隠せない。いつ?え?だれと、あ、え?こんな色のない声で告げるってことは政略結婚的な、そういうアレなのか?え?

「指輪を……あげたのに着けてもらえないのは、その、どうしてだと思う?」

「あ?」

目線を逸して、眉を寄せてそう小さく呟くアピスをみてそう言えば過去に一度だけ同じ表情を見た事があったなと
とっちらかった記憶を無理矢理に引き出して必死に思い出す。


「お前……まさか…、…、え?あの時の娘か?」

チラリとこちらに目線を寄こしたアピスと目が合う。

「あの、はじめての……」

「ああ」

ふいっと短い返事と共にまたアピスが目線をそらす


な、なんということだ!え!あれからずっと続いてたのか?え!あ、え???

「性行為で、相手に負担をかけないためにどうすればいい」くそ真面目なこいつが珍しくわざわざ飲みに誘ったと思ったら、そんな質問をされてびっくりした。
たしかに俺は身体がでかいぶん、まぁ…その、ナニもでかいわけで。娼婦ですら気を使う。アピスは娼婦は買わない。ときっぱりしていたし、女の影もないからと思っていたら……そうか、お前もオトコだもんなぁ。だなんて、あの時はテンション上がり過ぎていろいろと語った記憶がある。

そこから定期的に「あの娘とは続いてるのか」なんてからかいまじりに聞いてはいたが、いつしか時が経ちいろんな事があってそんな話はしなくなっていたのに
こ、ここにきてあの時のあの娘だと!?

アピス…お前。なんて、なんてピュアなやつなんだ!!!

「で、え?結局誰なんだよ。城で働いてる子ってその時は言ってただろ?」

頭を巡らすが、いまいち誰だか見当が付かない。そうだ、頑なに教えないから結局揶揄うのも面白みがなくてやめたんだったか?

「名前だ」

「は?………」

名前?

「あの?」

アピスが黙る。
名前ってあの、ダイダ様に付いてたメイドだよな?え?
顔は可愛らしい感じなのに、あまり笑ってるところを見ないような、無表情なイメージ。ヒリング様に仕えていた時からなんとなくは見知っていたが、仕事が出来て隙がないイメージだった。
あの名前とアピスが?いや、まぁお似合いっちゃお似合いなのか?無表情同士?そんな昔から二人が恋人だという事実がなんだかしっくりこず思わず俺は思考を停止して口から言葉を出す。

「お、おめでとう」

「ありがとう」


それからアピスの悩みに対してそこまで女心のわからない俺は当たり障りのない返事しかできなかった。


「あ……」

『ドルーシ様』

廊下でばったりあった名前がペコリと頭を下げる。
え、本当にアピスと?
とりあえず洗濯物と思われる布を持っている彼女の左手を見ると、そこにはなにもなくて
まだアピスのやつ言えてないのか?

「指輪、つけないのか?」

『ふぇ』

変な声をあげて一瞬時が止まる。そして一気に彼女の表情が崩れて

「アハハッ、名前照れてるのか?」

『あっ、こ、えっ、あ、……』


ぷしゅーと音が聞こえそうな程顔を赤くする名前をみて、なんだこの生き物はと

「アピスをよろしく頼むな」

『はいっ』


なんだか、二人並んでる姿が容易に想像できて
すごくしっくりきた。幸せになった友を思って胸があたたかくなった。





(ダイダと絡む)



「名前。戻るつもりはないのか?」

『申し訳ありません』

暫く怪我の為裏方をしていたことと、暇を貰っていたのもあってダイダ様から離れていたのだけれど、そんな私を見つけてわざわざダイダ様が声をかけて下さった。
後任がしっかりと役目を務めていると聞いている。だからわざわざ私が戻る事もないと……それに
チラリとダイダ様の後に目線をやるとアピスと目が合う。逸して腑抜けた顔になりそうな自分を律してグッと口元に力を入れる。

『ダイダ様……この度私妊娠いたしましてお休みをいただくことに』

「なにっ!?名前ッお前結婚していたのか!?」




相手がアピスだと判明した時のダイダ様の表情が面白すぎて、きっと私は一生忘れない。






(※)どうでもいいR-18的な補足

ゴムとかないし、避妊っていったら外出しだろうけど。きっと挿入する前に女性器の中に入れる錠剤みたいな避妊薬があるっていう私の妄想。
アピスは子供欲しくなさそうだし、いつもドロドロにされて訳のわからないうちに挿入されるので、名前ちゃんは避妊薬入れられてると思ってたけど
アピスは結婚するし、名前好きすぎてもう本当に好きすぎるから、避妊せずにセックスしてて、今まで抑えてた分好きが爆発して2日に1回くらいのペースでヤりまくってたら妊娠した。っていうどうでもいい後日談を考えてはニヤニヤしています。
仕事中につわりでぐるぐるなりながらも、必死に働いてたらアピスが体調悪いのに気づいて
「名前、妊娠したんじゃないか?」『……へ?』てな感じで発覚した。的な。
ちゃんと計画的にしようね、アピス。と言いたいところだけど。アピスかわいいから許す。しれっと種付けプレイしてるアピス。俺の子を孕んでくれ。とか思いながらクッソ興奮してハアハアしながら中出ししてるアピス………いいかもしれない(阿呆)

初体験は、絶対名前ちゃんが痛かったら嫌だからどうしたらいいんだ。て悶々としそう。そして2ヶ月くらいかけて開発して、名前が挿れてッて言っても、まだ駄目だ。とか言って快感責めしまくってほしい。


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