好きな人の好きな人
◇同級生×右藤
私には1年生の頃から気になっている人がいる。 同じクラスの右藤大元くん。 明るい感じで、誰とでも仲良くなれる彼は私の憧れで その明るさに惹き付けられた私は気付けばいつも目で追っていた。
背は平均くらいだけど、体格が凄く良くて、スポーツはなんでも出来るっぽかった。 まくっている袖から見える腕は逞しいし肩も胸も厚みがあって、自分とは違う男の子!って感じがしてすごくドキドキする。
柔道とか、そんな感じなのかな?と思っていたらどうやらカバディとやらをやっているらしく 同じ中学の子に探りを入れると世界大会に遠征に行ったりとかもしていたらしい。 しかも高校でもカバディ部をつくったらしくて、好きな人のことなら何でも知りたい。ましてややっている競技のことだ。 自分なりにネットで調べたりしたけど、文字じゃよくルールがわからなくて、動画も海外の選手の試合動画が多くて凄いのはわかるけど細かくはわからん。といった感じ。 少しくらい調べて話しかけたかったんだけど、お手上げ状態ででもなんとかお話したくて 勇気を振り絞ってカバディについて右藤くんに聞いてみたら、嫌な顔せずにいろいろと教えてくれた。 女子だから別に部員になれるわけでもないのに、優しく教えてくれてもっと好きになった。 本当は試合を見に行きたかったけど、カバディ部ができてすぐだし、なかなかカバディの大会自体がそんなに多くないみたいで 話す機会もそれから全然なくて、それ以外で話しかけれるコミュニケーションスキルも持ち合わせていない私は右藤くんを陰ながら見つめることしか出来なかった。
明るい彼に見合う女の子になりたくて、そんなに興味がなかったオシャレもいろいろ勉強して、盗み聞きした彼の好きなタイプはふわっとした女の子らしい感じ。だなんてかなり抽象的だったけど、自分なりに女の子らしい。を心掛けてみた。でもまぁこれの成果はいまいちわからない。 ただ、人見知りのわりになんとかクラスの中心にいれば彼とも時たま話すことができた。それだけで幸せだった。
そうこうしているうちに、季節は巡ってやっと大会をみにいけることになった。 日程を調べて、でも応援に行くね。なんて右藤くんに言う度胸はなくて 一人でこそこそと電車の時間を何度も確認した。 はじめての一人での遠出だったけど、右藤くんがみたい。ただそれ一心だった。 彼が打ち込んでいるカバディを直接見たかった。
震えるような熱気に心打たれて 汗を拭う彼が格好良すぎて私はもう完全に射抜かれてしまった。
ただでさえメロメロだったのに これ以上私をどうしたいのだ右藤くんは
これはもう話さなければ。 彼が情熱をそそぐものがその辺の女子にもわかるくらいかっこいいものだと。
『う、右藤くん。この前大会みにいったよ。』 「え?苗字さんが?」 『うんっ!はじめて見たから、凄かったよ、かっこよかった』
右藤くんが珍しくびっくりした顔をしている。あれ?間違ったかな、気持ち悪いって思われたかな。
『えっと、佐倉くんも凄く強いんだね』
必死になってあの時の感想を引っ張り出す。技の名前?とかルールとか細かいとこはわからないし、見どころ?とか深く突っ込まれたら全然わかんない。 右藤くんが格好いい。ばっかりな私の不純さを見抜かれてしまいそうで胸が苦しい。
「そうだろ?あいつすげーやつだからな」
あ、右藤くんが笑った。 私の前でこんなに嬉しそうな右藤くんを、私は初めて見た。
そこからは、もっぱら佐倉くんの話を振れば右藤くんは答えてくれた。 神様からのご褒美とも言えそうな席替えは右藤くんと斜めの席になって それからもっと話せるようになった。ただ、話の内容はほぼほぼ佐倉くん7カバディ2右藤くん1の割合だけれども それでも右藤くんと話せるなら何でも良かった。
自慢気に、まるで自分の事のように誇らしげに佐倉くんのことを話す右藤くんはキラキラしてていかに二人が強い絆で結ばれているかが私ですらわかった。 きっとこの目に私が映ることはないんだろうなって、なんとなくわかったけど それでもいいと思った。こうやって話せるだけでも幸せなんだし。そう自分に言い聞かせた。
あっという間に次の席替えが来て、また話す間隔が開いたけど、それでもなんとか時たま話をして たまに右藤くんからも話しかけてもらえるまでになった。 部活がんばってね。と放課後教室で右藤くんと佐倉くんに声をかける。それを当たり前の日課にする事ができた。 私めっちゃ頑張ってると自分で思う。
そんな頑張りを神様はきっと微笑んで見守ってくれていたに違いない。 二年生にあがってからも私は右藤くんと同じクラスになれたのだ。
しかも1回目の席替えで佐倉くんの隣を引き当てた。 担任は気だるげな人でめんどいから、暫くは席替え無しなー。なんて素敵な発言まで残してくれた。 隣が佐倉くんなら、休み時間に右藤くんが来てくれるし 右藤くんは私達より前側の席だから授業中もナチュラルに彼を観察できる。最高すぎる!
佐倉くんをダシにして右藤くんと話してるけど 佐倉くんはめっちゃいい人で、身長は高くて大っきいけど まったく怖さを感じない。なんならちょっと可愛い顔してるし話しやすい方だ。 だから安心して話せるし、今や普通に世間話できるまでに仲良くなった。 右藤くんは緊張しちゃうけど、佐倉くんは気にせず話せるから もはや佐倉くんの方がいっぱい話している気もする。 でも、佐倉くんと仲良くなれたらあわよくば右藤くんが好きって相談しちゃおうかな。なんて思うけど
彼らがカバディに真摯に向き合ってるのはわかってるから、きっと私が右藤くんの日常に入り込めるスペースなどない。
だから結局はこうやって教室の中でだけ話せたら幸せなんだ。とまた自分に言い聞かせる毎日を過ごす。
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