まだ見ぬ君に恋をしていた。


「そんで、そん時の宵越がー!」
『すごいね!宵越くん』

一年一組は今日も平和です。
高校に入学して仲良くなったのは畦道くん。

スポーツ大好きだけど、家庭の事情で高校では部活に入らずバイトをすると決めた私。
せめて部活に勤しむ友達が欲しい。でも女子だと自分もやりたくて仕方がなくなるかもだから部活男子から話を聞こう!そう思って一番クラスで筋肉が凄い畦道くんに声をかけた。

驚くことに彼はカバディ部に入るらしく、ちゃんと見たこともないスポーツにこれはより楽しい話が聞けそうだ!!と私はワクワクしながらいつも畦道くんの話を聞いていた。

ある時から彼の話に現れるようになった「宵越くん」彼はどうやらサッカーですごい選手だったらしく、運動能力がめちゃくちゃいいらしい。
それだけじゃなくて、勝つための姿勢がすごい。と畦道くんはいつもキラキラした目で宵越くんの話をする。
私はスポーツはわりと好きだけどそこまでサッカーに詳しくなかったので、彼のことは存じ上げなかった。
いかに彼がすごいか、自分も負けたくない!と熱い目をして畦道くんが話すから会ったこともないのに、勝手に私の中で宵越くんを想像していた。

憧れのようなその気持ちは日に日に自分で気づかないうちに強くなっていた。


『畦道くん彼女いたの!?』
「へへ、まぁな」
『そっかぁ……いいなぁ』

照れながら満更じゃない表情で話す畦道くんにびっくりする。いや、普通に私は畦道くんはかっこいいと思うし、性格もいい。なんなら別に全然ありなわけで、いや、でもめっちゃ好き!とかじゃないから
そうなる前に聞けてよかったぁ、万が一好きになってたら終わってたわ。って感じだ。

なんとなく、恋愛とか高校からはいスタートっ!みたいなイメージだったので中学から付き合っているだなんてなんておませさんなんだろう。と尊敬の念が拭えない。
あんな朗らかな感じで、しっかり男として抑えるべきとこおさえてるなんて、恐るべし畦道相馬。

「宵越がうるせえのなんのって」
『宵越くん?』
「自分が彼女いねぇからって、おらにつっかかってくんだべ」

宵越くん、彼女いないんだぁ。たしか、イケメンなんだっけ?でも畦道くんって仲のいい友達のこと皆「おらよりイケメンだっぺ」とか言いそうだもんね。
ちなみに私が勝手にイメージしている宵越くんは、サッカーしてたってきいてるから、背が高くてちょっとひょろっとしてる。あっさりめの顔の男子で想像している。
そっか、彼女いないのか。そっか…あれ?なんでホッとしてるんだろ。

「そんで、名前のこと宵越に紹介すっべかぁって」


ん?

「名前?話きいてたか?」

『ん?』

聞き間違いかな?

聞き間違いじゃないらしい。

名前いいやつだし
宵越には名前くらい懐がでかくねぇと無理。
名前かわいいし
身長はちっせぇけど

だから紹介する。そうです。は?

んー、まぁ別にいいっちゃいいけど。
私だって夢見る女子高校生だし
そりゃ、恋愛だってしてみたいし
彼氏だってほしい。

畦道くんの話を聞いてる限り、宵越くんは所々残念らしいけど、カバディに対する姿勢は尊敬できる。よきライバルだと言っていた。
あの畦道くんがそんな風にいうのだから、きっといい人に違いない。

「クラスの女子から紹介してって頼まれたんだけど、ちょっと荷が重てぇかなって
その点名前なら自信持って紹介できっぺ!」

荷が重い。の意味はわからないけど
畦道くんにとって、私はそんなに高評価なのか!と嬉しかったのは事実だ。

「名前も彼氏欲しいって言ってたべ?」

だからほいほい畦道くんについていった。辞めときゃよかった。まじで

まじで無理

「畦道。だれだこの女子は」
「あ?おらの一番仲がいい女友達!」
「あっ!なぬっ!」

『………』

背が高くてちょっとひょろっとしてる。あっさりめの顔の男子。が宵越くんじゃないの?

この、スーパーイケメンの男子は誰だ


固まる私をよそに畦道くんと宵越くんが仲良さそうに話している。
む、むりだ!!こんなイケメン!なんで私なんかが行けると思ったんだよ!畦道ふざけんな!

「名前!」
『あ、えっと苗字名前です』
「あ、ああ宵越竜哉だ」

「カバディ観てみたいって!」

おっきいし、イケメン過ぎて怖い。
ばっと助けを求めるように畦道くんを見つめるのに、グッと親指をたててウインクしてきた。
いや、畦道くんかわいいけどっ!

チラッと体育館の奥に目をやれば身体の大っきい先輩らしき人もいた。
い、いや、紹介してくれるならせめてあっちの人らにしてよ。ちょっと、え荷が重いってイケメン過ぎってこと?
無理無理!そりゃ普通の女の子は喜ぶかもだけど!私には無理!!

固まってる私を眼鏡をかけた先輩が拉致するように椅子に座らせる。

「よかったらここで見ていって」
『あ、でもお邪魔では』
「いいのいいのー!たまにはギャラリーがいてくれたほうが気合が入るから。」

そんなもんなのかな?と思いながら
でも畦道くんから常々話を聞いていたカバディは正直みたい。YouTubeでしか見たことなかったし。
試合もバイトとか被って観に行けなかったから。



ぶわっと、彼らの熱が私にまで伝わってくる。
見てるだけで身体の底から滾るように熱くなった。




「どうだった?」
『す、すごかったです!かっこよかったです。』
「それはよかった」

爽やかに笑う眼鏡先輩もかっこいい。
畦道くんも凄かったし、いつもの可愛らしい彼とまた違う一面を見れてよかった。いつも話してくれてるカバディの熱をこうやって実際に肌で感じれて嬉しかった。

それに、やっぱり宵越くんはすごい。
イケメンすぎてビビってたけど
畦道くんがいつも話してくれてた彼と、目の前の宵越くんが交わって1つになった。

すごい、宵越くんはやっぱりかっこよくて憧れる。
心臓がドキドキしてる。





このドキドキが恋だと気づくのは
まだもう少し先の話だった

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