ジャズくんが好きでめろめろな女の子がジャズくんをめろめろにしたい!って文字通り身体で頑張る話。
「女なら、欲しいものは必ず手に入れなさい。それが美しさの秘訣よ。」
そう言って師匠が微笑む姿はあまりにも美してくて息を呑んだ。 そうなりたいと幼い私は憧れたけれど あの人のようになるのはそう簡単な事ではなかった。
悪魔学校に入学して初日に私は恋に落ちた。自分でもなんてチョロい女なのだろうと思うけれど 入学式に向かう途中、でかい生徒にぶつかられて転んでしまって。そんな時に彼が優しくて甘い声で「大丈夫?」と声をかけてくれたのだ。 差し出してくれたその手をおずおずと掴むとぐいっと引いて立たせてくれた。 さり気なく腰に手を回されて、恥ずかしくて顔が真っ赤になったのがバレなかったか心配になった。 ふわっと彼から爽やかで甘い香りがして、頭がビリビリと痺れたようになって。 その瞬間私は恋に落ちてしまった。
そこから一緒のクラスになれたらなぁ。なんて思いながら、名前を聞いておけばよかった。でもすぐわかるよね?なんてのんきな事を考えていた。
問題児クラス………まさかの彼は問題児クラスに行ってしまったのだった。 そしてそこで初めて彼の名前を知った
「アンドロ・M・ジャズ」
他のクラスならともかく、問題児クラスとは教室すら離れているしなかなか関わることも難しいだろう。幼馴染とも言える知り合いが1人問題児クラスに何故か入ったらしいけど、彼を訪ねていけるほど仲がいいわけでもない。 前途多難だ。と思っていた。
「あ、ねえねえ。キミ。」
『?、はい。』
トボトボと廊下を歩いているといきなり声をかけられた。
『ぁ……。』
「これ、落としたよ?」
ジャズくんだった。あの時と一緒のふわりと優しくて甘い声で かっ、かっこいい。
「ん?」
『ぇ!あ……。ありがとう、ございます。』
「かばんのファスナーあいてるよ?」
『わっ!ほんとだ。』
いつからだろうリュックの外ポケットのファスナーが全開だった。気付かなかった。彼が拾ってくれたリップクリームを受け取る。うう、ジャズくんが触ったリップクリーム………もうずっとこれ使う。
「大丈夫?他になんか落としてない?」
『えっと………。』
ごそごそとリュックのポケットを確認する。わ、わたしジャズくんとお話してる。ぐるぐると緊張した脳みそで必死に荷物を確認する。
『あ、あれ。』
「なんか足りない?」
『生徒手帳が………。なくて。』
「ありゃ。」
今日は学校についてすぐお手洗いでリップ塗ったから、落としたとしても校内のはずだし、これ以上ジャズくんを引き止めるのも申し訳ない。それに好きな人とお話できるのは嬉しいけど、こんな間抜けなとこは見られたくない。
『きっと誰かが届けてくれると思うので、あとで職員室にいってみます。』
「そっか。届いてるといいね。」
『はい。あの、ありがとうございました。』
「うん、じゃあまたね。」
手の中にあるリップをギュッとにぎったまま、ぼーっとジャズくんの後ろ姿を私は見つめていた。 爽やかで甘い残り香を胸いっぱいに吸い込んだ。
お昼休みに職員室にいったけど、生徒手帳は届いてなかった。 明日までに見つからなかったら新しいのを発行してもらうことになったから。まぁ一安心かなぁ。でも、生徒手帳に載ってる顔写真は別に可愛く写ってないからアレ誰かに見られるのいやだなぁ。 一瞬でおわったけど、もう友達は先にお昼ご飯を食べているだろうし今日はお昼ご飯1人で食べることになりそうだな。なんて考えながら歩いていた。
「あ、ナマエちゃん。」
ふわっと彼の香りがして
『ジャズくん……。』
「あ、俺の名前知ってたんだ。」
『ぁっ、う、うん。』
彼に名前をよばれた?思わず名前を呼ばれたから、ジャズくんと呼び返してしまった。
「はい。」
彼の手には生徒手帳が
『これ……。』
「廊下で見つけたから、ナマエちゃんに渡そうって、会えてよかった。」
『ぁっ、ありがとうございます。』
うわうわ、ジャズくんが自ら渡してくれるなんて!!生徒手帳拾ってくれたから、私の名前わかったのか。あ、でも中の写真も見られたってことだよね?恥ずかしい。悪魔たるもの写真写りも研究しないと……。
『たすかりました!』
「いいえー。見つかってよかった。」
ふっと笑うジャズくんは大人っぽい色気がでてて、ぐわっと顔が熱くなる。
「ナマエちゃん、お昼もう食べた?」
『いえ、まだです。』
「じゃあ一緒に食べない?」
『え、あ、はい。ぜひ!』
こうして私は彼とお友達となった。
← / →
|