ペダル | ナノ
箱学レギュラーと海に行ったら



青い海は太陽の光に反射してキラキラ光っており、まるで宝石がいっぱいに詰められているようだ。

快晴の空の下、砂浜を歩くことが暑いと感じるほど恵まれた今日。箱根学園自転車競技部レギュラーは海に訪れていた。近くにある青と白のパラソルが彼らのジャージを連想させて、どこか可笑しい。
いつも着ているジャージではなく、上半身露にしている水着姿は新鮮だ。チラホラといる女性達は彼らを見てキャアと騒いでいる様子がうかがえる。運動しているだけあって、筋肉のついた体は魅力的であった。



「見ろ。女子達の視線が全て俺に集まっている。何と罪な美形だろう…!」
「怪我をしないよう準備運動はしっかりするんだぞ」
「見事なスルーだネ。福ちゃん」
「それより日向ちゃんまだかな〜。何で泉田に迎えに行かせたの?」
「後輩の自分が行くと言ったからだ。泉田はしっかりしているから大丈夫だろう」
「え〜!後輩なら俺でいいじゃないですか〜!!」
「お前は危ねェだろ」
「お、来た来た」
「皆さんお待たせしました」
「泉田よ!日向ちゃんは連れてきたのかね?」
「はい、勿論」


泉田は後ろにいる彼女の背中をそっと押す。皆、ごくり唾を飲んだ。今日一番の目的は彼女だ。彼女の水着姿を見たいがため、今日の予定をセッティングした。勿論、セッティングしたのは東堂と新開である。

泉田の後ろから白い脚が見える。その姿を拝もうと、釘付けになる一同であったが、彼女の水着の上にはパーカーと言う物が羽織られていたのだ。パーカーは股まであり、白い肌は脚しか見えない。豊かな胸は見事に隠れていた。


「日向ちゃん…、何でパーカー羽織ってるんだい?」
「あ、まだ日焼け止め塗ってないから…」
「塗ったらその…、脱ぐのかね?」
「う、うん。せっかく海に来たからね」
「じゃあじゃあ!俺が塗ってあげますよ」
「何言ってやがる!バカかてめェは!ダメに決まってンだろ!?」
「俺が塗るよ。体の隅々までやってあげるぜ」
「隼人が言うと厭らしく聞こえるぞ!お、俺がやる!」
「だからァ!お前ら下心見えすぎ!」
「日向、それは自分で出来るものなのか?」
「自分で出来るよ。やるつもりだったから大丈夫」
「日向さん。皆さんは気にしないで塗ってきて下さい」
「じゃあ塗って来るから先に遊んでて」


彼女が去って行っても言い争いがしばらく続いていたが、やがて収まる。海に入って遊んだり、パラソルの下で寝ていたり、彼女が来るまで待った。今日は彼女と楽しく海で遊ぶために来たのだ。彼女の喜ぶ顔が何より見たい。


そして数10分後、彼女が来た。わあ、と誰かが感嘆の声を漏らしたのが聞こえる。

フリルが控えめにあしらわれた白と茶色を基調とした水着。膨らんだ胸の真ん中にリボンや、女の子らしいレースが可愛いデザイン。美しい白い肌と妖艶なスタイルが魅力的で、括り上げた髪が色っぽい。とにかく似合っていた。視線を誰よりも独り占めしていたと皆が思う。頬を朱色に染め、恥じらう姿がまた何とも可愛らしい。


「あ、あの…、待たせちゃってごめんね…?ええと…、恥ずかしいなぁ、水着って」
「日向ちゃん!」
「えっ…!?し、新開く、」
「ヤバい。超似合ってる。はぁ、可愛い。水着だと直接肌が当たっていいね。柔らかい」
「止めろ変態ィ!!」
「俺も日向ちゃんに抱きつく!」


ギュッと新開は彼女の肌に吸い付くように抱きつく。水着のため互いの肌がピタリとくっつく感触が鮮明に感じられる。新開の胸板に彼女の胸がむりゅりと音をたてるように当たる。荒北が真っ赤になり、怒鳴っていたが東堂も真っ赤になり、抱きついていた。東堂には刺激が強い。


「わあ!日向さん可愛いですよ!すごく似合ってます!」
「ひゃっ!ま、真波くん、そこくすぐったいよ」
「真波ィ!どこ触ってやがるボケナス!」
「あっ、柔らかいなぁって思ったら日向さんのおっぱい触っちゃった!」
「殴るぞ」
「あ、荒北くん、わざとじゃないんだし大丈夫だよ。それより早く遊ばないと時間なくなっちゃう!」
「…そだネ(ありゃわざとだろ絶対)」


とりあえず荒北は怒りを鎮めて、彼女の要望通りが彼女の体も考え、無理なくゆっくりと遊ぶことにした。

海の中に足を入れた時、彼女は冷たくて目を瞑る。気持ちそうに、ん〜っと声を出した。楽しいのか彼女は興奮しているらしく、やたらと積極的だ。元々泳げない彼女は新開の首に手を回し、一緒に入ってもらう。無論、新開はウェルカムだ。キスでもしてしまいそうなくらい近い。が、それを許す者などいない。


「海って冷たいね。でもすごく綺麗…!」
「そうだな。日向ちゃん、もっとこっちにおいで」
「ん…、?」
「日向ちゃん!俺のところにも来てくれ!」
「うん!」ぴょん
「…尽八め」
「こ、こんなに密着して良いのか!?」
「東堂くん髪濡れてるね。前髪があるとやっぱり雰囲気違うものなんだなぁ」
「うっ…!そのっ、あのだね…!(細いし、軽いし、日向ちゃんの胸がぁぁぁ)」


東堂が溺れ死にそうになったもので、一旦上がり、彼女はパラソルの陰で休むことに。3年組はビーチバレーで白熱な試合をしていた。周りにギャラリーまでいた。


「日向さ〜ん!ハイッ、飲み物持ってきました」
「真波くん、ありがとう。いくらだった?」
「奢りです!」
「真波…」
「げっ、泉田さん」
「僕の奢りだろ」
「あはは、ありがとう泉田くん。真波くんもね」
「いえ。適度に休んで下さいね」
「わーい!日向さん好き!ぎゅ〜しちゃう!」
「真波くん苦しいよ〜。あっ、そこ触らないの」
「ちぇ。ならちゅーしてもいいですか?」
「…真波。先輩方に怒られるから止めておけ」
「えぇ」
「真波くん、泉田くん。2人も混ざっておいでよ」
「い、いえ…ですが、」
「私は見てるからいいよ」
「なら俺の活躍見せちゃいますね〜」


泉田と真波はビーチバレーに混ざりに行く。彼女は彼らの様子を幸せそうにゆるゆる頬を緩め眺めていた。自分も楽しいが、仲間が楽しそうな姿が何より彼女を幸せにした。乱暴で大きな声も聞こえるが、それでも楽しそう。

と、突然冷たい物が彼女の頬に当たる。彼女はびっくりして振り向くと、真っ赤な顔をした荒北が真っ赤な氷を持っていた。かき氷だ。


「あー…それやるヨ」
「わあ、ありがとう。いちご味好きなんだぁ」
「俺はいちごみるくだ」
「可愛い味食べてるね、福富くん。荒北くんは?」
「ブルーハワイ」
「いいねぇ。さっぱりしてて美味しいもんね」
「舌真っ青だけどネ」
「そうだね。ん、冷たくて美味しい。私も舌が赤くなっちゃうかな」
「む、俺のは赤いか?」
「ふふ、赤いよ」
「日向チャンは?」
「ん、どうかな?」
「!」


チロリと出された舌は確かに赤くなっていた。妙にそれが厭らしく見え、いい角度から胸が目に入るもので荒北は喉を鳴らした。喰いたいと心の中で悶々と戦う。福富はそんな荒北に気が付かず、彼女と舌の見せあいっこをしていた。癒される。


海にいる楽しい時間はあっという間に流れていく。彼女には誰かが必ずついていたもので、ナンパや絡まれたりすることはなかったらしい。

海にはいったり、ビーチバレーをしたり、美味しいものを食べたりと充実した日だったなあと彼女は思う。夕日がもう終わりなのかと実感させ、どこか寂しくなってくる。だいぶ人が少なくなった砂浜に座り込む一同は静かに夕日を見つめる彼女を見つめていた。白い水着がオレンジに染まる。


「楽しかったなぁ…、海に来たのなんていつ以来だろう」
「日向が楽しめたのなら良かった。俺達も久しぶりに自転車以外で熱くなって楽しかったぞ」
「日向ちゃんが幸せそうに笑ってる姿見れて、嬉しいなあ。水着姿も拝めたしね」
「日向ちゃん、君の喜ぶ顔が見られて俺は本当に海に来て良かったと思うぞ!」
「ま、楽しかったなら良かったンじゃナァイ?」
「素直じゃないな、靖友は」
「楽しくてニヤニヤしてたのは荒北ではないか!」
「ハァ!?お前らぶっ飛ばすぞォ!」
「いつもお世話になっている日向さんに楽しかったと思ってもらえて嬉しいです」
「俺も嬉しいです!日向さんといっぱい遊んで、いっぱい抱きつけて!」
「最後のはいらねェだろ!」


自分のために仲間が何かしてくれる考えてくれるだけで嬉しいのに、海に連れて来てくれるなんて彼女にとってこの上なく嬉しいサプライズだった。彼女はたくさん彼らに愛されているのだ。



「私ね、すごくすごく楽しかったよ。また来たい。今度はレギュラーだけじゃなくて、みんなで!海じゃなくても、どこかに出掛けたい。みんなと一緒に!」


瞳をキラキラ輝かせ、彼女は息をする間もなく話を続ける。みんなで出掛けたいと、箱根学園自転車競技部で、またどこかに行きたいと。大好きな彼らと一緒にいたいと。



「ああ、勿論だ」



福富の声に皆もコクンと頷く。
彼女が想うようにまた彼らも同じように彼女を想っている。



「ありがとう」



彼女はふわりと笑う。
夕日のせいか少し眩しかったのは気のせいなのか。









ぼたん様。
こんな会話文多めの話になってしまいました。何か話の繋げ方が雑ですよね。すみません。お望みの作品ではなかったかもしれませんが、完成しました。良ければまたどうぞ!

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