ペダル | ナノ
箱学3年とファミレス2

※23話予告ショートアニメその後




「マジで分かンねー」
「宿題くらい自分で出来なくてどうするのだ。言っておくが俺のは見せてやらんぞ」
「お前になんか頼まねーヨ」
「何!?」
「だから俺の見せてやるって言ってるだろ」
「だからお前の間違いだらけだっただろォ!」
「俺は終わったぞ」
「フクは作文ではないか」
「やりたくねー」
「まあまあ。もうすぐ日向ちゃん来るから」
「日向は教えるの上手いぞ」
「お、来たぞ。日向ちゃん、こっちだ!」



「ごめんね、遅くなっちゃって…」
「いやいや、いいのだよ!ささっ!隣に来るといい!」
「じゃあ、東堂くんと荒北くんの隣に失礼します」
「いいなぁ。日向ちゃん、俺と寿一の間に来なよ」
「新開。荒北に勉強教えるのが目的だろ」
「勉強?」
「そうであったな!日向ちゃん、荒北に宿題の数学を教えてやってくれないか?」
「そう言えばプリント貰ったもんね。うん、勿論」
「…よろしくネ」
「荒北くん、分からないところはどこ?」
「…全部」
「…じゃ、じゃあ!1問目から一緒にやろうか」
「あ、日向ちゃん。俺も教えて」
「お前は終わったンじゃねーのかヨ!」
「いやぁ、心配だからね」
「福富くんと東堂くんは?」
「俺のクラスは作文だ」
「俺は終わっているが、日向ちゃんの説明を聞きたい」
「えぇ、説明上手くないよ?」
「日向の説明は分かりやすかったぞ」
「えっ、ハードル上がったなぁ」
「大丈夫大丈夫。とりあえず始めようよ」
「そうだね」



「日向チャン、ここどうやンの?」
「そこはまず式を2つに分けてみて。そうすると何か浮かんでくると思うよ」
「…あ、この公式使って…、こう?」
「そうそう。うん、合ってるね」
「日向ちゃん、これは?」
「これはまず微分して、公式を使うんだよ」
「おっ、なるほど。ありがとう」


手をにゅるり絡め、その先端にチュウとキスを落とす。


「し、新開くん…!」
「お前っ…!何してンだヨ!!」
「何って手にキスを…」
「そういうことではない!する必要はないであろう!」
「したかったから」
「お前の意志はどうでもイイっつーの!」
「靖友も尽八も嫉妬は見苦しいぞ」
「殺すぞ!!?」
「いいじゃん。靖友は近くに日向ちゃんの顔があるし、尽八も隣で近いし」
「嫉妬は見苦しいと言ったのは隼人ではないか!」
「静かにしろお前達。店に迷惑だ」
「福ちゃん、でも新開のクソが…」
「え、クソ?」
「新開もあまり日向をからかうな。勉強しろ」
「からかってないのに…」
「…勉強再開しようか!」



「荒北くん、4問目違うよ」
「マジ?どこ?」
「ここの代入間違ってる。えっと、ここが2だから…」
「お、おぉ…(ちけェ)」


ふわりシャンプーの匂い。手と手がたまに触れ合う。長い睫毛、ぷくり浮かぶピンクの唇。


「(うまそう…)」
「荒北くん聞いてる?」
「ア、アァ。(何考えてンだ!?これじゃあ新開のバカと同じだ!)」
「なら良いんだけど、」
「日向ちゃんは教えるのが本当に上手いな!」
「そんなことないよ。東堂くんはもうプリント終わってるじゃない。全部合ってるし、教えるの上手そうだね」
「頭も良くなくては美形の名が廃るからな!」
「ふふ、流石」
「日向ちゃんも可愛くて、勉強も出来て、尚優しい!素晴らしい女子だぞ!」
「それは買い被りすぎだよ〜」
「いや!それに自転車が大好きだ!山神東堂の彼女にピッタリの条件が揃っているな!」
「?そうなの?」
「ああ!だから是非に君を嫁に迎えたいもの、ごふ!?」


東堂の言葉を遮り、誰かがおしぼりをぶん投げる。


「腐ったこと言ってンじゃねーぞバァカ!お前はアホか!アホなのか!?」
「尽八は勉強以外は本当に残念だな」
「隼人!?」
「何が嫁に迎えたいだ!お前には日向チャンは勿体ねーヨ!!」
「何だと!?不細工なバカには言われたくはないな!」
「殴る!」
「日向ちゃんを嫁に迎えたいのは尽八だけじゃないってことだ」
「何か話が分からないけど、嫁とか迎えたいとかどういうことだろう」
「俺もよく分からないが、きっと日向は良い嫁になると言うことではないか?俺もそう思うぞ」
「な、何だか照れるなぁ…、お嫁さんなんてまだ考えたことないけどね」
「そうなのか!日向ちゃんは興味あるか?」
「そりゃあ、少しはあるけど…」
「ケド?」
「今は自転車のことで頭がいっぱいかな」
「日向ちゃんらしいね」
「これからもよろしく頼む」
「フク、それファミレスで言うことではないぞ!」
「よろしく頼まれます!」
「この天然チャン2人は…」


何となく、和やかな雰囲気の中、彼女は手を叩いてこう言った。



「はい!まずは宿題終わらせようね!」



目的はそれだ。

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