ペダル | ナノ
箱根学園と総北高校


さてさて、視点は変わってこちら総北高校。

既に到着している彼らは、今か今かと箱根学園を待っていた。それにしては、異様にそわそわそわそわ。
特に3年、2年。落ち着きがない様子。金城は落ち着いているように見えて、キョロキョロ目が動いており、巻島は携帯を何度もチェックしている。手嶋と青八木も同じようにそわそわ。田所のみドーンと構えている。1年にとっては何とも奇妙な姿であった。


「先輩ら、何であんなそわそわしとるん?」
「うん。何か待ってるみたいだね」
「箱学が来るのがそんなに楽しみなのか?」


確かに王者と合宿が出来るのは楽しみなのであろうが、何もそこまでそわそわとする必要はない。うんうんと1年は考えてみたが分からない。


「おっ、箱学のお出ましやで!」


鳴子の声で落ち着きがなかった彼らは一斉にそちらへと振り向いた。あまりに勢いが良かったもので声を出した鳴子でさえ驚く。

箱根学園という文字を誇らしげに記されてあるジャージが風に吹かれ、ひらりと翻る。
主将福富を先頭につかつかと歩いてくる姿は、それだけで王者と言う貫禄があった。その後に続き、他のメンバーもこちらに向かって歩いてくる。


「合宿中は色々とよろしく頼む、金城」
「…ああ、よろしく」


福富は金城の方へ向かい、手を出し、握手を求める。金城もしっかりそれを握る。他のメンバーもそれぞれ総北メンバーと話したり、色々していた。


「巻ちゃん!巻ちゃん!会いたかったぞ!久しぶりだな!調子はどうだ!?」
「…声デカイショ」
「やあ、迅くん。久しぶり」
「おお!久しぶりだな!」
「お前らうるせーヨ!大丈夫ゥ?日向チャン」
「うん、大丈夫だよ」


それぞれが色々な話をしている中、荒北が自分の後ろにいる彼女に声をかける。日向と呼ばれた名前に総北が反応を示した。一斉にそちらを見るもので、箱学の皆はしまったと言う顔でその反応を見る。


「皆さん、お久しぶりです。合宿中は何かと迷惑をかけてしまうかもしれませんが、よろしくお願いします」


へなりと眉を下げ、控えめに笑う彼女を総北は受け入れる。田所はおう!と明るく返答をし、彼女の頭をガシガシ撫でた。金城は温かい目で彼女の言葉に頷く。保護者かツッコミたくなる。巻島はポリポリ頬を掻いていた。


「こちらも色々と頼むかもしれない。平日でもあるし、合宿にマネージャーは参加出来なくていないんだ」
「私で良ければ何でも言ってね」
「上手いモン作ってくれよ!!」
「えっ、頑張ります…?(総北は食堂の人が作ってくれるはずじゃあ…)」


スムーズに話す金城と田所とは違って、会話というものが苦手な巻島はチラリと彼女を見ているだけである。彼女はそんな巻島と目をパチリ合わせる。東堂が巻ちゃん巻ちゃんと後ろで煩い。


「巻島くんもよろしくね」
「お、おお。まぁ、よろしく頼むショ」
「コンディションはどう?巻島くんの登り早く見たいなあ」
「クハッ…、日向に見られたら全部データ盗まれちまうな。気をつけねぇと」
「えー、巻島くんのダンシング格好良いのになあ」
「なっ…!?格好良いとか、可笑しいショ…」


ニコニコ笑って巻島の近くに駆け寄る彼女に彼も少し固い雰囲気が和らいでいた。笑顔で格好良いと言う偽りのない表情に巻島の白い肌が少し朱色に染まった気がした。ピシッと照れ隠しでデコピンした巻島を「巻ちゃん!?」と東堂が注意し、止めていた。

東堂があまりに巻島に構うので、彼女は次に2年生の元に。


「手嶋くん、青八木くん。久しぶり〜!元気だった?わあ、2人とも背伸びたね!」
「日向さん久しぶりですね!俺、超会いたかったです!」
「…俺も、会いたかったです」
「嬉しいなぁ。私も会いたかったよ。本当に久しぶりだもんね」
「日向さんにアドバイス貰うと本当に上手くいくんです。合宿中もよろしくお願いしますね」
「(コクリ)」
「ふふ、どうしよっかな」


小悪魔ですか!と手嶋が言い、頷く青八木に彼女は冗談ですとカラカラ笑う。箱学の皆はその様子をじとり眺める。ガルルとまるで威嚇でもするように。それでも彼女は全く気が付かず、1人1人に挨拶をしに行ってしまう。(良いことなのだが)

1年生の元に向かうと、彼女は見知った顔の男の子を発見した。前に会ったことがある、丸い眼鏡が特徴の。


「小野田くん…?」
「えっ、あっ!日向さん!?」
「えっ、小野田くん、このべっぴんさんと知り合いなん?」
「知り合いと言うか、えっと…!日向さんには色々と親切にしてもらって!」


知り合いと自分が言っていいのかと小野田は遠慮がちに言葉を詰まらせていたが、彼女はそんな小野田を察し、知り合いだよと赤頭の鳴子に伝える。彼女は鳴子と目を合わせ、にこりと笑う。


「君は小野田くんのお友達だよね。私は箱根学園3年の陰野日向です。名前教えてもらってもいい?」
「あっ、う…、ワ、ワイは鳴子章吉言います!よろしくお願いします!!日向さん、べっぴんさんですね!箱学羨ましいですわ〜」
「あはは、ありがとう。鳴子くんは元気いっぱいだね。楽しみだな」
「浪速のスピードマンの走り楽しみにしとって下さい!あ、この隣の奴はスカシ…やなくて、今泉言うんです。愛想ありませんけどね」
「…よろしくお願いします」
「今泉くんね、よろしく」


鳴子は可愛らしく頬を赤くしながらニカッと彼女に向かって笑いかける。彼女も同じように笑顔になった。鳴子は隣にいた今泉がなかなか話さないもので、ついでに紹介してやる。愛想は確かに良くはないが、彼女は何も気にしていない。優しく微笑みかけ、軽く会釈をした。

今泉はそんな優しい彼女を疑わしい目でじっくり見ていた。マネージャーを連れてくるなんて、王者らしくない。レギュラーだけで参加したこの合宿に何故だ、何故王者にとって邪魔であろうマネージャーを?見たところ信頼されていて、好かれている彼女。先輩達もデレッとしているし、少し気に入らなかった。



「そろそろ行くぞ、日向」
「いつまでも総北にいンじゃねーヨ!」
「いくら巻ちゃんと言えど、日向ちゃんはやらんぞ!」
「もともと東堂さんのものではないと思いますが…」
「まあまあ泉田、ほっとけ。行こうか、日向ちゃん」
「俺が隣ですよね〜!またね坂道くん!」
「じゃあまた後で」


するりと彼女は箱根学園の皆によって、奪われてしまう。荷物を持ってもらったり、日傘を差してくれたりと彼女がどれだけ愛されているのかが分かる。

残された総北は箱根学園の後ろ姿をじとり見ているしかないのだ。いつもそう。



「箱学は本当に日向を大切にしているんだな」
「ありゃ見てるこっちが胸焼けするほどだ」
「呑気すぎるショ!金城と田所っちは!どう見ても独占欲強すぎショ」
「やっぱり箱学も同じように想ってるんだよな〜、日向さんのこと」
「…手強い…」
「どひゃ〜!日向さんって、やっぱりすごいです!」
「(レギュラージャージ着てるし、何者だ?)」
「ヨッシャ!ワイの走り見てもらわんとアカンわ!!」



総北だって、盛り上がってますよ。





ネタが…思い付かない…

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