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箱根学園と球技大会4




「日向さーん!」
「きゃわっ…!」


にゅるりと後ろから現れたのは彼女が探していた真波本人であった。相変わらずほのぼのした声で彼女をぎゅむりと抱き締める。


「びっくりしたぁ…、」
「えへへ、驚かせちゃいました?」
「驚いちゃいました」
「ごめんなさーい」
「でも真波くん探していたから良かった」
「探していたんですか?」
「どこかで寝ちゃってないかなぁって心配してたんだよ」
「え〜、俺ってそんなイメージですか?」
「ありゃ、無自覚?」
「冗談ですよ〜!でも確かに寝てましたよ」
「えぇ、真波くんサッカーだよね?」
「ちゃんと試合してから寝ました」
「もう…、」
「試合、日向さんに見ててほしかったのにな〜」


真波はなかなかサッカーが上手かった。爽やかなルックスのせいか、サッカーが似合っており、気のせいか東堂と同じくらい女子ファンがいた。


「見たかったなぁ…」
「負けちゃったんです。新開さんのところに」
「新開くん強いからね」
「笑顔でシュート決めるから怖いんですよね〜」
「あはは、新開くんらしい」
「それで、もうやることないし隠れて寝てました」
「隠れてたの?」
「いや〜、幼馴染みの女の子がいるんですけど口煩くて、」
「口煩く言うってことは、真波くんのこと心配なんだよ」
「ふ〜ん」
「幼馴染みの女の子がいるなんて初めて知ったよ」
「あれ?言ってませんでした?」
「女の子とは聞いてなかったかな」
「だって日向さん勘違いしちゃうでしょ?」
「勘違い?」
「言っときますけど、その子は幼馴染みですよ」
「うん?」
「(付き合ってるとか勘違いされたら堪んないよ)…分かってないなぁ」
「えぇ…?」
「もう!日向さん大好きホールドしてやる!!」
「きゃあ…!?」


真波はぎゅうぎゅうと彼女を抱き締めた。意外にも力が強いもので、彼女は驚いて離れることは出来ない。ここに自転車部がいれば真っ先に止められるだろう。


「山岳!やっと見つけた…って何してるの!!?」
「あれ?委員長かぁ」
「は、離れなさいよ!」
「え〜」
「真波くん、一旦離れよっか。ね?」
「…はーい」


真波と彼女を見るなり焦ったように2人を話すのはおさげと三角の眼鏡が特徴的な女の子だった。委員長と呼ばれる彼女はまさに委員長っぽい。


「な、何でこの女の人に抱きついていたのよ!せっかく私が探してたのに…」
「この人は自転車部のマネージャーの日向さんだよ。俺の大好きな先輩!」
「だ、大好きって…!」
「委員長さん、真波くんの大好きは他の部員の同じ意味ですよ」
「えっ、あの…」
「安心してね」
「!?」


にこりと彼女が笑うと、委員長は顔を真っ赤にし、わたわたしていた。


「すみません…!私、貴方に失礼なことを、」
「そんな、気にしないで」
「あっ…、私はこれで!山岳、ちゃんと起きてなさいよ!」


委員長は彼女に頭を下げる。彼女が優しく微笑むと、委員長はまた赤くなり、そしてその場を去って行く。


「委員長どうしたんだろう」
「ふふ、真波くん鈍いなあ」
「日向さんに言われたくない…」
「酷いなあ。あ、そろそろみんなの試合始まっちゃう」
「俺も見に行こー!」


彼女は真波と共に他の部員達の試合を見に行った。

サッカーは新開のクラスがぶっちぎりで優勝した。バキュンポーズを彼女に向かってした新開だが、他の女の子にキャアキャア言われていた。

バスケでは荒北と黒田の戦いが熱かった。荒北のクラスが何とか勝ったが実は優勝したのは福富のクラスという。



「楽しかったな!このせいでまた俺のファンが増えてしまった!」
「下手くそがナァニ言ってやがる」
「何!?さては荒北!活躍したのに女子ファンがいないことが悔しいのだな!」
「ンなわけねーだろォ!」
「日向ちゃん、俺のバキュンポーズ届いた?」
「ふふ、私仕留められちゃうの?」
「ああ、必ずね」
「隼人!優勝したからと言って抜け駆けさせんぞ!」
「泉田ガード」
「えぇ!新開さん!?」
「黒田くん、惜しかったね。でもすごかったよ!」
「ありがとうございます!日向さんの声聞こえました!だから力が出せました!」
「ハァ!?調子乗ンなヨ!日向チャンはお前応援してねーヨ!お前は負けただろォ!」
「葦木場くんもすごく良かった。いいプレーだった」
「日向さんのおかげです。俺、自信がつきました!」
「日向さん!俺は?俺はどうでした?」
「真波くんはまずちゃんと起きてようね」
「日向、球技大会はどうだった?」
「楽しかった、とても」
「そうか。それは良かった。それと、」
「ふふ、福富くんの言いたいことは分かってるよ。ちゃんとこれからの課題も見つけたからね」
「課題?それは何だね」
「日向には自転車部として必要なことを見ていてもらった。他の運動でも課題は見つかるからな」
「寿一が最初に本気でやれって言ったのはそれか」
「これからまた厳しくなる」
「マジかよ…、福ちゃん勘弁してくれヨ」
「みんな覚悟しなきゃ」
「日向にメニューも考えてもらうから、しっかり従うのだぞ」



明日からまた一層厳しくなるだろう自転車競技部。うげぇと皆は心の中で思ったに違いない。思ってない子もいるが。




球技大会強制終了。

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