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箱根学園と球技大会2


やってきた球技大会当日。
どことなく生徒達の気持ちが盛り上がっているように思えた。髪型をアレンジしている子やクラスでのハチマキをつけている子など様々な姿が見られる。


「あたしら次だから行ってくるね。ちゃんと応援してろよ〜!!ただし無理はすんな!」
「ばっか。日向は自転車部の応援すんだよ。あいつらマジうちらの日向大好きだから」
「うわ、日向独り占めとか許せんな」


彼女はと言うと、友人2人に挟まれニコニコと笑っていた。友人達は彼女の体も理解してくれており、彼女をとても大切にしてくれている。珍しいくらい優しい友人を持ち、彼女は本当に幸せそうだ。


「私、2人のこと精一杯応援するね!」
「ありがとう!でも、自転車部の奴ら来たらそっち行っていいからね」
「そうそう。日向に応援されたくて堪んないみたいだし」
「まあ、あたしら行くから好きなとこ行ってなさいね。ちゃんと木陰にいるのよ!」
「はーい、ありがとう」


友人2人はそうして自分達が出る競技へと向かう。彼女は2人を見送ると、木陰がある場所で友人達が見えるところを探した。


「あ、」


見つけたことには見つけたが複数の男子達が広く場所を使っていたため、そこに行けそうにない。退いてくれなど言う勇気もなく、彼女は太陽を浴びながらどうしたものかと考えた。



「ナァニしてンの?」
「えっ…、あ、荒北くん」



ふいに声をかけられ少しビクリとする。怠そうに欠伸をし、こちらを覗き込む荒北がいた。


「こんな日当たるとこにいンじゃねーよ。オイてめェらそこ退け」
「あ、荒北くん。私なら大丈夫だから…」
「るっせ!黙ってろ!」
「…ありがとう」


荒北は男子の軍団を退けると、彼女をその中に入れてくれた。不器用な優しさだが、彼女にはちゃんと伝わる。


「荒北くんは何に出るの?」
「バスケだヨ」
「わあ、荒北くんバスケ上手そうだよね」
「そうかァ?」
「うん。自転車部のみんなは何やるのかなぁ」
「新開と東堂はサッカーで福ちゃんはバスケ」
「そうなんだ」
「日向チャンは何してたのォ?」
「友達の応援だよ。あ、勝ったみたい」


友人は彼女に向かって手を振っていたので、彼女も手を振る。友人達は荒北の存在に気が付いてかニヤニヤしながら別の場所行くねとジェスチャーし、どこかへ向かった。


「あ、東堂くんと新開くんだぁ。相変わらず人気者だね〜」
「その割には東堂とか下手くそだけどネ」


東堂は彼女に気付き、こちらに来ようと試みたが、女子ファンが行く手を阻む。なかなか来れないようで、寂しそうに彼女を見て、恨めしそうに荒北を見た。新開もなかなかの人気でこちらに来ることが出来ない。



「うわわ、通れそうにないね。すごい女の子の数だ…」
「顔だけはいいからな。何であいつらがモテんのか分かンねー」
「えぇ、でも荒北くんも人気あるよ」
「俺がァ?ないなそりゃ」
「そうかな。私は荒北くん格好良いと思うよ」
「ハ、ハァ!?」


純粋な瞳で見られ、荒北はぐぐっと黙り、顔を赤くさせ俯いてしまう。話を変えるため、荒北は咳払い。


「…つかそれ薄着すぎ。俺のジャージ来てればァ?」
「えっ、あ、ありがとう」


荒北が羽織っていたジャージを彼女の肩にかけてやる。少し温かい温度と彼の匂いに彼女は嬉しそうに頬を緩めた。


「…日向チャン、俺今からバスケあるから来てヨ」
「本当?わあ、見たい!」
「(ヨッシャアア!)」
「自転車以外で運動しているの見るのなかなかないね」
「アー、そだネ。ちゃんと見とけヨ」
「うん。あ、見て見て〜!荒北くんのぶかぶか〜!」
「(クソ可愛い…!)」
「温かいねぇ」
「早く行こ日向チャン(どうでもいい女子ファン相手にしてる奴らにいい思いさせねェからな)」
「うん。あ、新開くんと東堂くん、手振ってるね」
「げっ…!」


いかにもこちらに来そうな新開と東堂を警戒してか、彼女の手を取り、急いで体育館に向かおうとした。


「ハアハア…、やっと会えたな日向ちゃん!!女子ファンから抜けてこれたぞ…って荒北!何故手を繋いでいるのだ!」
「靖友ズルい。ジャージも着せちゃってるし」


東堂は女子ファンのせいか、少し髪も乱れており、来るなり荒北と彼女が手を繋いでいるのを見て、怒る。新開は彼女のジャージ姿が可愛らしかったので黙ることに。


「ツインテール似合うね」
「えっ、あ、ありがとう…」
「あー!!隼人何をしている!!?」
「可愛いお姫様にキス」


彼女は今日ツインテールに髪をまとめている。緩く巻いてあるもので、ふわふわしてて可愛らしい。新開はそれを1束持つと、口元まで持って行き、ちゅっと口付ける。


「お前らマジで女子ファンのとこ戻れ!!」
「独り占めはいけないな!!」
「俺達も行くから」
「ハ、ハァ!?試合は!?」
「結構後からだから大丈夫」
「2人の見たよ〜!格好良かった!」
「わっはっは!そうかそうか!日向ちゃんに言われると嬉しいぞ!」
「下手くそのくせに」
「ありがとう。惚れた?」
「ふふ、惚れちゃったかも」
「やった。じゃあ靖友と尽八はほっといて、あっちに行こうか」
「待て待て待て待て!!隼人どこに行く!?」
「マジ最低だなァ」


ぎゃいぎゃい


「荒北、ここにいたか」
「福ちゃん!」
「む?皆いたか。もうすぐ時間だとお前のクラスの奴が言っていた」
「やべっ」
「ではみんなで行こう。自転車部3年勢揃いだな!」
「そうだね。行こっか」
「尽八がいると女子がすごいからなぁ」
「お前もだろ」
「1年生と2年生の子達のも見たいな」
「後で探してみるか」
「福富くんありがとう」



自転車部3年で体育館に向かうことに。わらわら、やはり目立つものがある。


荒北は予想通り、バスケが上手かった。福富もやはり運動が出来る。彼女が応援しているせいか、調子が良い。


さてさて、球技大会は始まったばかり。

そろそろ後輩も見に行くか。

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