もしもの話 | ナノ


ホテルはとても綺麗で、思っていたより広かった。2つのベットが並んでいることが、妙に緊張してしまう。


「おー、広いな」
「う、うん。そうだね」


固まって動かない私の手を引いて、隼人くんは部屋の中に入っていく。どうしよう、ドキドキするよ。2人きりになることなんて何回もあったけど、それでもドキドキする。こんなお姫様みたいな部屋で過ごせることは嬉しいけど、隼人くんがいるから余計に緊張だよ。


「とりあえずお風呂入ろっか。日向、先行ってて」
「あっ…、ありがとう」


先行っててって先にお風呂どうぞって意味だよね。私は着替えを持ってお風呂場に向かう。

お風呂は綺麗だった。キュッと蛇口を捻り、シャワーを出す。今日の疲れが癒されるみたいだった。お湯に浸かり、ふうと溜め息を1つ。楽しかったなぁ。隼人くんとこんな風に過ごせるなんて夢みたい。普段、部活の忙しい彼とまさかお泊まり出来るなんて。

何て感傷に浸りながら、ぽーっとしていると、ガチャリと扉が開いた。


「は、は、隼人くん!?」
「一緒に入ってもいい?」


私はとっさに体を隠した。一緒に入っていいって…、いいわけないでしょ!?服脱ぎかけてるし、入る気満々じゃないですか!


「だ、だめ!私もう出るから!!」
「えー、一緒に入りたいんだけど」
「もう!だめだってば!」


隼人くんをお風呂に入れて、私は即座に出た。一緒に入るなんて心臓がいくらあっても持たない。絶対、隼人くん裸見たよね。じっくり見てたし。

もう考えても仕方がない。私は着替えるため、置いてあった服に手をかけたのは良いのだけれど、可笑しなことに用意してあった服がない。代わりにあるのはぶかぶかのカッターシャツ1枚。


「…隼人くんか」


犯人なんてすぐ分かる。隼人くん、私の着替え隠したな。よりによってカッターシャツって。足は隠れるけど、ちょっと透けてて恥ずかしい。でも下着だけっていうのは嫌だ。


「…着るしかないじゃない」


私は着替え、隼人くんがお風呂を出る間、髪を乾かして待つことにした。こんな格好見られるなんて、ある意味下着より恥ずかしい。隼人くん、もう出るかな?その前に布団入っちゃおうかな。

何て考えてると、ぬっと黒い影が後ろに1つ。


「可愛すぎ」
「きゃっ…、隼人くん!」


隼人くんは私を後ろから抱き締める。私はドライヤーのスイッチを止め、隼人くんからパパッと離れた。私は恥ずかしくて、裾を一生懸命に伸ばし、足を隠す。


「…そりゃ反則だ」


顔を手で覆うもので、私は急いでベットに潜り込む。布団からちらり彼をうかがうと、彼はポカンとしていた。


「明日も早いから、もう寝るね」
「えぇ…そりゃないぜ。俺はおめさんを触りたくて触りたくて、」
「し、知りません!」


布団を上まで被り、寝る体制をとった。隼人くんが何も喋らないので、きっと諦めたのだろうと少し安心。隼人くんと触れあいたいけど、明日はまだ遊ぶんだもん。今日はたくさん遊んで疲れてしまった。明日に備えて寝よう。襲う睡魔に勝てず、段々と目が閉じられる。

しかし、モゾモゾと背中の辺りに何かいる。何か入ってきた。温かいそれはやがて私の背中を抱き締めるのだ。


「隼人くん…!」
「せめて一緒に寝よ」
「わ、分かったけど…寝るだけだよ?」


ぎゅうっと抱き締められ嬉しくないハズはない。彼の温もりが私の背中から鮮明に伝わる。寝るだけ、寝るだけと思っても、ドキドキしちゃうのは仕方ないよね。

隼人くんのいい匂い。カッターシャツだからか、すごく感触が分かる。寝れるかな。


「…んっ、?」


隼人くんの大きな手は腰からやがて上へ上へと上ってくる。彼の吐息が少し荒い。首に息がかかる。まさかとは思っていたが、やんわりと胸を揉まれる。


「んっ…、隼人くん…?」
「ごめん。やっぱり我慢出来ない」
「あ、んん…、ふぁ、!」


やわやわと動いていた手はシャツの間に入り込み、ボタンをプチプチ外していく。裏からシャツを奪われ、下着だけになってしまう。彼は布団を捲り、私の上にまたがった。そして激しいキス、キス、キス。


「んぅ、隼人くん…ダメって…!」
「っはぁ、ここでお預けとか勘弁してくれよ。こんな可愛い下着つけちゃって、」


ゆっくりと隼人くんは下着のホックに手をかける。これじゃあ絶対明日起きられない。どうしよう、と思いながらも、彼のキスを拒むことなんて出来ないよ。


「隼人、くん…、私、明日も、遊びたいの…、」
「…日向?」
「だから、続きは帰ってからじゃ、ダメ…?」


前に東堂くんに教えてもらったことがある。上目遣いで見つめたら何でも言うことを聞くだろうって。ねぇ、どう隼人くん…?


「ズルい」
「えっ…?」
「ズルいなぁ、日向は。そんなことされたか止めるしかないじゃんか」


おでこにチュッと唇を落とすと隼人くんは寝よっかと私を抱き締めてくれた。本当は欲求不満だといった顔してたくせに、優しい彼は我慢してくれた。


「…ありがとう、隼人くん。大好き」


私は隼人くんにキスをすると、彼の大きな胸に飛び付き眠りにつく。私だって、もっともっとしたいけど、せっかくのテーマパークだもん。遊びたいよ。



おやすみなさい、隼人くん。



「…本当にズルい」





結局は彼女に可愛いおねだりをされ、お預けな彼氏


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