もしもの話 | ナノ


※腐女子




「ん?むむむ…?」


隣で考え込むように唸るのは俺の彼女である。今日は寝坊したらしく、ミディアムの長さの髪の毛はピョコリ、アホ毛が立っていた。身だしなみくらい女ならちゃんとしろと思うが、こういうところが可愛いから何も言えねー。

ところで何故コイツが唸っているのかと言うと、俺とは違う大きな目で俺と新開の2人を交互に見ているので、くだらないことで間違いない。口元に手を当て考える素振りをしていた。カーディガンが微妙に長い、所謂アレだ、萌え袖だっけ?それが可愛い。指ほっせ。


「日向ちゃん、どうした?そんなに唸り声出して」
「ん〜?いやぁ、」
「オイ新開。何でコイツのこと名前で呼んでンの?」
「靖友、嫉妬か」
「るっせ!」


新開が日向チャンのアホ毛をくるくる触るから、手を叩いてやる。人の彼女に触るなっての。日向チャンはそんなこと気にしてないのか、まだ唸り続ける。

だいたい言いたいことは分かる。コイツのことは把握済みだ。多分とんでもねーこと言い出すな。そんなこと考えてたら、ホラ、口が開いた。



「2人は仲良しだよねぇ」
「ハァ?仲良くねーヨ」
「ぐぬぬ…、新荒?荒新?どっちかなぁ」
「ん?」


ホラなァ。この腐女子。新開の奴ポカーンってしてやがる。何の話?みたいな。何を言うかと思えば、やっぱりそんなことかこのアホ。


「マズイですよ!これじゃあ授業に身が入らない!一大事だよ、靖友くん!どっちが右なの左なの!?」
「黙れお前は!!」
「なあ、日向ちゃん。何の話?」
「耳を貸して下さい新開くん!」
「ちけェ!離れろ!!」


新開の耳元に近付く日向チャンをグイッと引き剥がす。この天然オタク!俺の身にもなれ!!どんだけ心配すればいいンだヨ!

とりあえず新開を追い払って、このバカを椅子に座らせる。ちょこんと座り、キョトンと首を傾げる彼女は可愛くて、ちょっと「うっ」となる。


「あのネ日向チャン。変なこと言うなヨ。新開、全然意味分かってなかっただろォ?」
「きゅうう、ごめんなさい。2人って仲良しだから、ついつい気になっちゃって…」
「仲良くねー!気持ち悪ィなァ!だいたい俺には日向チャンがいるの!分かるゥ?」


日向チャンは男同士の恋愛が好きみたいだケド、俺は彼氏であって、そういう対象で見てほしくはない。付き合う前に日向チャンからそういう趣味があるって聞かされて大丈夫って言った。それ以上に好きだったから。天然なとこも、笑顔が可愛いとこも、優しいとこも。変態だって、普通の顔してエグい本読んだって、全部好きだけど、俺を趣味の対象で見ないでほしい。


「靖友くん、」
「ごめん。言い過ぎた」
「ち、違うの。あのね、」


きつく当たりすぎたかと思って謝ると、日向チャンはパタパタ手を振り、違う違うと言う。何か言いたげだったから、じっと耳を傾けた。


「私、こんな趣味だから靖友くんのこと巻き込んじゃったり、勝手に妄想して気持ち悪かったりしちゃうと思う」
「…別に気持ち悪いとか思ってないヨ」
「うん、ありがとう。さっき靖友くんと新開くんで考えちゃったりしたんだけど…」


日向チャンは可愛い指で俺の服の裾をきゅっと掴む。こういう仕草とかいちいち可愛くてズリーと思う。



「男の子でも女の子でも、靖友くんはあげないもん」



ふにゃんと笑い、日向チャンは自分の寝癖だらけの髪の毛をわしゃわしゃ撫でる。



マジで、ズリー…








(あ、でも…、福富くんとか総北の眼鏡くんなら考えるかも…)
(ハァ!?ちょっと日向チャン!?)
(んふふ〜、嘘だよ。靖友くんは絶対誰にもあげないもん。大好きだもん)
(!?…っとにズリー!襲うぞボケナス!)
(きゃ〜、靖友くんのえっち!)




大好きだけど、妄想は止められないのが腐女子です。


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