「え、ほんまに?え?え?夢か?これ夢ちゃうか?」


白石は自らの部屋の扉を開けるやいなや自問自答を繰り返した。頬を引っ張ったり、ドアに頭をぶつけたり、とにかく可笑しな行動を続ける。


「ど、どうしたの?蔵ノ介くん、大丈夫…?」


彼女は白石に駆け寄る。
しゃがみこむとふんわりしたワンピースの裾が白石のズボンの上に被さった。


「え、あの…ほんまのほんまに日向ちゃん?」
「え?うん、そうだけど…、私、見えないかな?やっぱり、変とか…」


確かにいつもより洒落た格好だ。日向らしいふんわりしたワンピースにレースの髪飾り、薄ピンクのチークとリップクリームは実に可愛らしい。
だが、昔からの仲の白石が分からないのかとちょっとだけ不安そうに彼を見つめた。


「いや!ちゃうちゃう!寧ろ似合っとる!可愛いすぎ!」
「わっ、蔵ノ介くん…!」


ガバッと抱きつくと、彼女はバランスがとれなくなり、近くにあったベッドに倒れこんだ。ワンピースはヒラヒラ広がる。


「この眺め…んんーっ!エクスタシー!!」
「も、もう…どいてよ〜!」


押し倒したみたいになり、白石は彼女の上にいるこの眺めが堪らなくエクスタシーらしい。まあ、すぐ退いたが。


「日向ちゃん、急にどうしたん?俺に会いに来てくれたんか?」
「うん。蔵ノ介くんに会いに来たの」


何てなーと言う前に、日向に可愛らしく笑顔を浮かべられた白石は一瞬、思考停止する。




「どえぇぇぇぇぇぇ!!?ほ、ほんまに!!!?ほんまに俺に!?日向ちゃんが!!?」
「く、蔵ノ介くん!!?お、落ち着いて!」


白石の突然の叫びに日向は驚いて、びくりと肩を上げる。


「ちょっと。クーちゃんうっさいねん!」
「いたっ!何すんねん友香里!」
「自業自得や。言っとくけど日向ちゃんに何かしたらぶっ殺すから。じゃあ日向ちゃん!後で遊ぼうな!愛してるで!!!」


クッションが飛んできたかと思うと、白石の妹である友香里が鬼のような形相で入ってきたと思ったら、可笑しな捨て台詞を吐き部屋に出ていった。嵐のような妹だ。



「蔵ノ介くん大丈夫…?あ、ちょっと赤くなってる」


クッションをぶつけられた白石は赤くなったでこを見て見てとばかりに日向の前に出す。日向はよしよしとそれを撫でてやっていた。


「日向ちゃんに看病されるなんて幸せや。ちゅーしたってもいい?」
「蔵ノ介くんは大袈裟だよ。それとダメです」


白石は日向の腰に抱きつきながら、えーっと駄々をこねる。顔は嬉しそうだった。


「久しぶりの日向ちゃん、堪能させてくれへん?」
「ちょっ、蔵ノ介く…!ん、ぁ…!」


あろうことか白石は頬や首元に唇を落とす。ベッドにいることによって、余計に日向がやらしく見えた。


「あー、あかん。日向ちゃん可愛すぎて止められへんかも」
「も…、冗談は止めっ、ん、て…」


恋人でもないのに何故白石はここまで積極的なのかは分からない。絶頂男の思考は誰も理解出来ない。
しかし、このままでは彼女が本当に喰われてしまうかもしれないが、その心配はない。何故なら彼女を大好きな人は白石以外にもいるからだ。




そしてその人物が扉をバンッと開く。

「クーちゃんゴラァァァァァ!!!!!」

友香里が彼の健康グッズを振り回し、入ってきたことは言うまでもない。





(あの、蔵ノ介くん。私、チョコレート渡しに来たんだけど…)
(えっ?あ、今日バレンタインやった…!日向ちゃんに久しぶりに会えたからもう何でもええけど!)
(もう、何しに来たか分からなくなっちゃったよ…)



バレンタインなのにバレンタインを忘れるほど主人公が大好きな白石。(そして妹に邪魔される)

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