※何故、財前光の名前を主人公が呼ばないのかと言う疑問で生まれた話













「せやから俺は金ちゃんに〜…!」
「ふふっ、そうなんだぁ。蔵ノ介くんってば相変わらずなんだから」



遠くで仲良くキャッキャッウフフと話す変態(白石)部長と愛しの嫁である日向さんをギリリと素振りの練習しながら見つめる。あの部長め。日向さん来ること知っとったから早く練習終わらせたんか自分だけ。

こんなもん愛の力ですぐ終わらせたるわ。





「終わった…」


やれば出来るやん俺。結局30分でメニュー終わらせてやったわ。謙也さんよりはよう終わったからあの人はスピードスター失格やな。

チャンスなことに今、白石部長はオサムちゃんに呼ばれていない。他の邪魔なキモい先輩らもおらんし、日向さんと2人になるなら今や。

俺は彼女の所へダッシュで駆け寄る。運が良いと言うかやはりと言うか日向さんは1人でコート眺めとった。後ろから近付いて抱き締めたい衝動に駆られた俺は急いで近付く。



「日向さん、俺の相手もして下さい」
「わっ…!もう、びっくりした。財前くんかぁ」



にこりと綺麗に笑う日向さんの笑顔は究極に可愛い。練習での疲れも一気に吹っ飛んだ。さりげなく隣を開けてくれる優しさに甘えて、隣へと腰をおろした。


「相手してくれへんと、寂しくて死んでしまいますわ」
「えぇ、それは困ったな。財前くんが死んじゃったら私も寂しくて死んじゃうよ〜」
「え、それは嫌です」
「私も嫌だもん」


もん、だって。かわええ。てか日向さんの言葉が嘘だとしても嬉しすぎる。俺の髪をワシャワシャする手が心地好い。ああ、結婚したい。


「日向さんさっきまで何してたんすか?」
「蔵ノ介くんと話してたの。面白い話いっぱい聞いちゃってお腹痛いよ〜」
「へぇ、」


俺は前々から思っていたことをまた今さらながら思い出した。忘れてたけど大事なことや。




それは、日向さんが俺のことを名前で呼ばないこと。
別に呼べと言ったわけでもないし、そう言う話はしてへんけど、部長とか謙也さんとか何で名前で呼ばれとるん?部長は昔からの仲らしいから良いとして(良くはあらへんけど)謙也さんごときが名前呼ばれるとか意味不明。ありえへんやろ。


というわけで名前で呼んでもらいたく、俺は実行することした。一番手っ取り早いしな。



「…日向さん。何で俺のこと名前で呼んでくれへんのですか?」



上目で見つめると、予想通り、キョトンと可愛らしい表情の彼女を見ることが出来た。うわ、写メりたい。



「名前で、呼んでもいいの…?」
「へっ…?」



ぱちくりと大きな瞳を瞬かせる。呼んでもいいのと言うことは呼びたくないわけではないんか、良かった。つか呼んだらいかん理由ないわ。なんちゅう可愛い人や。ああ、キスしたい。


「部長とか謙也さんとかばっかり狡いッスわ。…俺やって名前で呼んで欲しい」
「ふふっ、可愛いなぁ」


いや、日向さんのが可愛いし、可愛い言われても嬉しない。…まぁ、彼女なら別に何でもええけど。
日向さんは呼んでいいなら是非と言った。んで、俺の方を向く。あれ、これもう呼ばれるんとちゃう?あかん、ただ名前呼ばれるだけなのにドキドキする。落ち着け俺。大好きな日向さんが名前を呼んでくれるんや。ああ、耳とか顔とか赤くなってへんかな。



ぐるぐる葛藤をしていると、日向さんはふんわりと微笑んだ。





「光くん」






俺は爆発した。









(え、えっ!?どうしたの、光くん!?)
(!あかん、です。名前は威力でかすぎます)
(えっと、?)
(やっぱり今まで通りでも大丈夫ですか?いや、決して嫌なわけではないです。寧ろ嬉しすぎて死にそうです)
(え、えっと、分かった…?)
(はああああ、可愛い愛してますからすみません)



意外なところで恥ずかしい財前くんの名前呼びはまだまだ先になりそう。

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -