ストーカー被害 2


裏庭に連れて行かれた私は足が震えて言うことを聞かない。逃げたくても逃げれない。この人は手紙を出した人だ。そう確信していた。

怖い、怖いよ。


相手は足を止め、私の方を向いた。顔に見覚えがあった。彼はクラスの人物である。そんなに関わりのない人であるが、このようなことをする人とは思えないくらい真面目な人だ。

手紙をくれたのは貴方なのかと聞くと、そうだよと素直に答えた。ぞわっとした。笑顔で平然と答える彼が恐怖に感じた。
彼は私のことを好きだと言った。付き合って、僕のものになってとも言った。


「わ、私は…靖友くんが好きなの。貴方とは付き合えないし、私はものではないよ…」


そう言うと彼の顔は一変した。笑顔だった表情は一瞬で無表情へとなる。怖い、逃げたい。私は動かない足をこの時ばかりは恨んだ。

徐々に彼は近付いてくる。

何で荒北なんだ。あんな不良のどこがいい。どうして僕じゃダメなんだ。僕の方が君にふさわしい。荒北より僕の方が君を愛している愛している愛している愛している…。

ひっと小さく悲鳴があがる。
どうしても足は動かない。かわりに彼がどんどん近くにやって来る。

そして、私の肩に触れると、地面へと押し倒された。

制服を器用に脱がせられ、下着をじとりと見つめられる。スカートも捲り上げられるが、私は怖くて何も出来なかった。気持ち悪い気持ち悪い。彼の手は胸や太股をいやらしく撫で、私の反応を楽しんだ。
笑っていた彼だが、私の身体に残る赤い跡を見ると、また無表情になる。それは靖友くんが付けた印なのだ。悪い虫を払うためって言ってた。だけど相手には逆効果だった。怒りを買ったらしい私は先ほどより強く触られ、しまいには口を至るところに付けられる。


「や、だっ…!!靖友、くん!!靖友くん!!」


名前を呼び続けると、相手はまた不愉快そうに顔をしかめた。私の口を塞ぎ、その名前はもう呼ぶなと言う。

声の出せない私は涙を流し、大切な彼の顔をじんわり想っていた。私の名前を呼んで、バカって言って、その手で抱き締めて。


靖友くん。







「バァカ、何泣いてンのォ?日向チャン」


大好きな声に私は瞑っていた目を開けた。嘘だと思った。

だって、彼がいたから。


「靖友、く、ん…?」
「俺以外に誰がいンだヨ」


息を切らして、私を見つめる靖友くん。靖友くんは私の上に乗っている相手の人を蹴飛ばすと、哀れな私の姿を見て、ぎゅうっと抱き締めてくれた。

ああ、この温もり、この匂い。私が大好きなものだ。


「日向チャン、もう大丈夫だヨ」
「や、すと、もく、ん…!ふぇ、っく…」


泣いている私の目をペロリと舐めると、靖友くんはジャージを肩に掛けてくれた。

そして立ち上がると、相手をギンと睨み付ける。


「人の女に手出すとか覚悟出来てンのォ?分かってるゥ?日向チャンは俺の大切な彼女なンだけどォ」


荒北くんが睨むと、相手は怯んだ。お前みたいな不良には彼女はふさわしくない、彼女は僕のものだ。と狂ったような叫び続けていた。


「てめェ…日向チャンに手出したうえにてめェのモンだァ?ぶっ殺す!!」


靖友くんは手を振りかざした。私はいけないと思い、彼の腕にガシリとしがみつく。彼はインターハイに出るんだから。問題を起こしちゃだめだ。


「靖友くんが殴ったら、靖友くんが悪くなっちゃう!インターハイに出るって言ってたじゃない…今、問題起こしたらダメだよ…私は大丈夫だから、」


泣きながら訴えると靖友くんは腕を下ろし、私の身体を包み込んだ。相手はいつの間にかいなくなっていたが、そんなことどうでもいい。


「助けンの遅くなってすまねェ…怖かったよなァ?」
「私は、大丈夫…、でも私ね、汚くなっちゃったよぉ…」
「…どこ触られた?アイツに何された?」
「服、脱がされて…下着見られて…色々、舐められた…、靖友くんの付けてくれた跡の上から…私、」


汚い自分の身体に嫌気がさいた。だって、あんなに触られて、舐められた。靖友くん以外にこんなことされるなんて、気持ち悪い。

嫌われると怖くなったが、靖友くんは私に乱暴にキスをした。色々なところにキスをされたのだ。


「やす、とも、くん…、ん」


消毒されているみたいで、靖友くんで満たされているみたいで、私はとても洗われている気分になった。


「日向チャン、俺が触るの怖い?」
「怖くないよ!!靖友くんなら怖くない…、もっと、ぎゅってして…」


そう言うと靖友くんは力強く抱き締めてくれた。彼が触ることが怖いはずがない。こんなにも彼を求めているのだ。彼が大好きなのだ。


「靖友くん…!大好き、大好き…!」
「俺も大好きだヨ。だからきたねェとか言うなって」


靖友くんは何度も何度もキスをして、ごめんと何度も何度も謝った。私は彼がいとおしくて堪らないと改めて感じた。




それからしばらく経ったが、手紙を書いた人を見なくなっていた。聞いた話によれば手紙を書いた人は転校したらしい。行方は知らない。


そして、靖友くんと私は今まで通り、いや、それ以上仲良く過ごしている。



ただ…


「ハァ?!男に呼ばれたァ?俺も行く」
「で、でも係りの仕事だけだよ?」
「ナァニ言ってンのォ?そういう無防備なとこが危ねェンだヨ!!」



ちょっと過保護になっちゃいました。

まあ、愛してくれているということで、いっか。


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