夢の中でも君に出会う

ベッドに寝そべって雑誌を読んでいる彼と床に座ってボーッとしている私。
何か話すわけでもなく静かな空間をただ過ごしていた。会話はないけど別に気まずいわけではない。寧ろ心地のよい時間であった。ただ彼の傍にいられる、それだけでも私は嬉しいのだ。単純と言われてもいい。だってそれだけ彼が好きだから。

チラリと彼を見ると、まだ雑誌を読んでいた。自転車の雑誌だ。彼の好きな自転車。結構、真剣に読んでるなぁ。

すると、ふっと目が合う。
互いに何秒見つめあったのかは分からないが熱っぽい彼の瞳に目が逸らせなくなる。

そしてどちらともなく自然に唇が重なり合った。磁石のようにピタリとくっついたのだ。





まぁ、ここまで話したことは夢の中でのことである。

しかし、今、夢と同じ状況にいた。
雑誌を読む彼とボーッとしている私。これは全く同じだ。夢の中で起こったことを思い出し、頬が熱くなる。でも、何となく期待。

私は彼を見た。チラリと夢のように。雑誌から目を離さない彼。はぁ、やっぱり夢の話だよね、と少しがっかり。

しかし突然、彼は雑誌から私へと目を移した。それはやはり熱っぽい瞳だった。あの時と同じだ。薄い唇には不思議な磁力でもあるのかな。私の唇は自然と彼の唇にくっついた。

ゆっくり離れると彼は似合わないくらい顔を赤く染め、パクパクと口を動かす。金魚みたいだ。


「い、いきなり何してンだヨ!」


ボケナスと言われた。でも知ってるの。彼の暴言は照れ隠し。彼は優しい人間だもん。


「あのね、夢を見たの。靖くんがベッドで雑誌読んでて、私が床に座っててね、目が合うの。そしたらちゅーするんだよ私達」


夢と同じでついしちゃったと言えば彼は頭をガシガシと乱暴に掻き、舌打ちを1つすると寝そべっていた体を起き上がらせた。


「あっ…、嫌だった?」
「ハ、ハァ!?ちげェヨ!ただ、あれだ…ビビっただけ」


不安そうに眉を下げると彼は焦って弁解をしてくれる。やっぱり優しいなぁ。床からベッドにいる彼を見上げ、へらりと笑うと彼もほっとしたように不器用に笑った。

床とベッドじゃ高さ違うなぁとしみじみ感じていた時、彼の細い腕が私の後頭部へと伸びてきた。ガシリと掴まれると私はキョトンと首を傾げる。


「さっきのだけじゃ足りないンだけどォ?責任取ってヨ日向チャン」
「えっ…、靖く、」


持ち上げられた後頭部は彼の唇と重なり合った。だけど、私がしたキスとは違った濃厚で激しいキス。


「んんっ…、は、ふぁ、」


乱暴だけと甘いキスの嵐に私はとろけてしまいそう。容赦なく彼の舌が滑り込んでくる。
力が抜けた私を彼はいとも簡単にベッドへと上げてしまう。完全に彼のペースじゃないか、もう。

服の間に彼の手が器用に入り込む。ボタンをプチプチと開けるのを彼は嫌うが、私が着ている服だけは丁寧に扱ってくれる。(帰りが困るから)


「あっ、ん…や、すくん」
「可愛い声出しちゃってェ。俺止めらンねェけどォ?」


額にチュッと唇を落とし、ニヤリと彼は笑う。この意地悪で優しい顔が私は大好きなのだ。


「止めちゃ、やだ、から」
「!…っとにさァ、そんな可愛いこと言われたら優しく出来ないから止めてくれるゥ?」


ああ、また。そんな誘惑するような熱を帯びた瞳を見て、止めてなんて言えない、無理。もっともっとと求めてしまう私は我が儘なのでしょうか。


「靖くん好き、大好き」
「俺も大好きだぜェ?日向ちゃんが想うよりずっとなァ」



夢、正夢、それ以上。

でも彼が好きなのはどこでも一緒。


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