続きを期待させる
「白石くーん!こっち来てー!」
「んー?何や?」
「あー!今日ちょっと髪型違う?やだ格好いいー!」
「はは、ありがとう」
今日も人気だなぁ。
白石くんはいっぱいの女の子に囲まれて、今日も輝いていました。
私は話し掛ける勇気もなく、大人しく席にいる。友達もみんなあっちに行っちゃったから寂しい。
「日向は行かへんの?」
「えっ…わ、私は無理だよ!」
因みに目の前に座っているのは忍足謙也くんです。
東京から転校してきた私に一番に話し掛けてくれた数少ない男友達です。
明るくて優しくてモテモテなのに、私なんかの相手をしてくれる。
「そうか?俺は大丈夫やと思うで!日向かわええし、自信持ちや!」
「うぇっ!?か、可愛くないよ!」
白石くんに好意を寄せる一人でもある私の相談をよく聞いてくれる。(相談っていうか謙也くんが一方的に聞き出してくるっていうか…)
「なあなあ!髪結んでええ?日向の髪ごっつ綺麗やし、俺結んでみたいねん!」
「えっ、あ、ありがとう。うん、どうぞ」
謙也くんは言うことが何でもかんでも急だ。まあ、髪くらい別に構わないのだけれど。
「おおー!サラサラや!俺と大違い!」
「…ふふ、謙也くんは染めてるから仕方ないよ」
意外にも謙也くんは上手で、私の髪を一つ横で結ぶ。
「よっしゃ!ツインテールにしたる!」
「ええー、私似合わないよー?」
「大丈夫やって!」
流石スピードスター。
あっという間に可愛らしいツインテールの出来上がり。
「謙也くん上手だね」
「やろ?日向可愛くなったなあ!」
ポフポフ頭を撫でられる。いやいや、可愛いとか絶対ないよ!
「謙也くんってば、」
「いやいや、マジやって」
何となく笑いあっていると、影が私の頭上に被さった。
「謙也、先生呼んどるで」
こ、この声は!?
「お、白石!すまんな!」
やっぱり白石くんだ!ど、どうしよう!?
「じゃあちょっくら行ってくるわ!日向!貰い手なかったら俺が貰ってやるから安心してなー!」
「ななっ!謙也くん…!」
冗談やー!と謙也くんは持ち前のスピードで走って消えてった。
心臓に悪いこと言わないでよー…
「……」
というか、
何故白石くんはさっきまで謙也くんが座っていた席に座っているのでしょう。
しかもじっとこちらを見ている。
「なあ、陰野さん」
「は、はい…!」
白石くんに話し掛けられてる!?私のこと知ってたの?嘘、信じられない。
「謙也と仲ええみたいやけど、二人は付きおうてるん?」
白石くんは少し低い声で言う。視線が突き刺さって直視できない。
え、今何て?
私と、謙也くんが?
「ち、違うよ!謙也くんは大切な友達であって、付き合ってるとかそんなんじゃっ…!」
白石くんにそんなこと思われてたの!?謙也くんのバカ!(八つ当たりです)
「そ、そうなん?俺、てっきりそうやと思っとった…」
全身の力が抜けていくような、そんな溜め息を漏らす白石くん。妙に安心してる。
「やけど、男友達に髪結ばせたらあかんでー?」
「そ、そうなの…?」
白石くんは私のツインテールされた髪に手をかけた。彼の綺麗な手が私の髪をスーッと通っていく。やだ、緊張する。
「白石くん…?」
「ほんま、綺麗やな」
その手は結んでいたゴムをゆっくりゆっくりほどいていった。
彼の手がゴムを奪う。パサッと私の髪は重力を増した。
「俺な、陰野さんのことずっと見とった」
「えっ…?」
「大人しいけど、頑張り屋さんの可愛い陰野さんを」
胸がドクドクする。
何だろう、これ。うるさいうるさい!白石くんに聞こえちゃうよ。
「んんー、シャンプーのええ匂いやなぁ」
「あっ、」
髪を一束持ち上げ、口元に当てる白石くんの行動に私は爆発しそうだ。どうしよう、恥ずかしい。
「俺な、陰野さんのこと、」
ゴクン。
思わず喉を鳴らした。
ねぇ、
臆病で弱虫な私だけど
期待してもいいですか?
(俺、)(白石ー!先生呼んどらんって言っとったぞ!何で嘘吐いたんや!)
(………謙也)
(え、何?ちょお、白石怖いんやけど。てか日向、顔真っ赤やで。あ!髪ほどいたんか!?可愛かったのに!何でや!)
(お前、練習メニュー三倍やから)
(はあ!?意味分からんわ!何やねん!)
(陰野さん)
(続き、放課後な)
(!!?)
end
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