恋心は雨のち晴れ

俺には幼馴染みがいる。
家が隣で覚えていないくらい小さい頃からずっと一緒で隣にいるのが当たり前となっているような関係だ。
だけど、そんな特別な関係に満足などいっていない。


俺はそいつが好きだからだ。

野球が出来なくなって荒れた時も、ロードバイクを始めたあの時も、挫けそうな時、辛い時、どんな時でも傍にいてくれた。支えてくれた。優しくて、あったけぇ奴。大切で大切で仕方ない奴。

だからこそ、幼馴染みは嫌だった。男として見られていない気がする。一緒にいるのが当たり前になってしまったから、意識されていないのかと疑っちまう。



そろそろ気持ち伝えねぇとなァ、なんて柄にもなく思っていた俺はいつものように部活を終え、どこかで待っている幼馴染みを探していた。


「ったく…、アイツどこにいんだヨ」


学校はちらほら生徒がいるだけで静かだった。外暗くなってきたし、雨が降ってきそうだ。とっとと見つけて、早く寮戻らねーとな。

今日は部活がそれなりに早く終わったから、アイツとどっか行こうかと思ってたのに、こういう時に限って見つからない。


「アー…雨降ってきた」


ザァァァと雨音が耳に届く。最初は小降りだったが、次第に強くなり、どしゃ降りとなってしまった。俺は焦った。早く見つけてやらねーと、とダラダラ歩いていた足を少し速める。


嫌な予感。そんな匂い。



その時、ピカッと空が光り、数秒後にゴロゴロと音が鳴る。


やはり嫌な予感は当たったか。雷が鳴った。そんなに近くはないが、結構でかい音だ。


気づいたら俺は走っていた。


何故なら、幼馴染みは雷が大の苦手だからだ。昔から雷が鳴ると泣くわ喚くわと大変であった。今はそれなりに成長したが、やはり怖いのか目に涙を溜めて我慢している。(それがまた可愛いのだが)

傍にいてやンねーと。
アイツが俺のいないところでどんな理由でも泣いているなんて嫌だ。俺以外には泣き顔なんか見せんな。

どこにいるかだいたい目星はついた。
自転車部が一番よく見える場所は確か工事中。

となると、次にアイツが行きそうな場所は…







「ハァ、やっぱりここかヨ。日向」



俺の教室の俺の机にうつ伏せとなって、ちっせー体をぷるぷる震わせた幼馴染みがいた。



「や、靖くん…?」
「バァカ。先帰ってろって言っただろォ?」


でっかい目を潤ませ、か細い声で俺の名を呼ぶ。ワシャ、と頭を撫でてやると、瞳から大粒の雫をボロリとだらしなく溢して、ぎゅっと抱きついてきた。


「こ、怖かったよぉ…、」
「雨降るって天気予報で言ってたじゃねーか。何で先帰らねーンだヨ」
「だってぇ…、靖くんと帰りたかったんだもん…」


うりうりと顔を俺の胸に押し付ける日向。…何だこの可愛い生き物は。天使かと一瞬錯覚したわ。


「だけど雷怖いンだろ?誰かダチといれば良かったじゃねーか」
「友達は帰っちゃったし、クラスの男の子が一緒にいようかって誘ってくれたんだけど…」


オイ。誰だそのクラスの男。何人の幼馴染み誘ってんだヨ、ぶっ飛ばすぞ。

日向は言葉を途中で止め、俺を上目遣いで見上げる。頬を少しだけ赤くして、きゅっと口を紡いでいた。可愛いけど、この表情を、この熱っぽい瞳を俺は知っている。見つめられた俺は固まって、よく知っているその目に釘付けとなる。



「でも、私…、靖くんじゃないとイヤなの、」



だってこの目は、俺がお前に向けている瞳とよく似ているから。大好きな奴に向ける瞳だから。



「あっ…!雨、上がってきたね…、」
「あ、あぁ。晴れてきたな」
「あのっ、わ、私ね!今日行きたいところがあって、靖くん待ってたんだぁ」
「オ、オイ…!引っ張んなって!」



握る手が熱いのも、お前の耳が赤く染まってるのも、俺は期待してもいいのだろうか。





「日向、俺さ…!」





自惚れてもイイ?








リクエスト作品 織音様

両片想いの幼馴染み。
いかがでしょうか。織音様のお気に召すものが出来たなら嬉しいです!でも何か雑な感じでごめんなさい。展開早くね?とか思いつつ、でもとても良いリクエストでスラスラ〜っと書けました!私、リクエスト貰うと書けるタイプでして((ry
リクエストありがとうございました!宜しければ、またメール下さい\(^o^)/


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