お泊まりしましょう

「靖友くん。お部屋に泊めて下さい」
「……帰れ!」


大きな荷物を片手に部屋の扉をノックすると案の定、不機嫌そうな彼の顔が拝めた。私を見るとびっくりしたように目を開き、こんな遅くに何しに来たのか尋ねられる。答えは冒頭の言葉である。帰れとか酷い。


「お願いします!今日1日だけでいいから本当に!このままじゃ私、野宿だよ…」
「ダァァァ!!分かった!分かったヨ!ったく、入れ!」


頼み込めば優しい優しい彼はやはり中に入れてくれた。本当に厳しいのか甘いのかよく分からない。そういうところも大好きだけど。

中は予想外にも綺麗に片してあった。靖友くんってぐちゃぐちゃにしてるのかと思ってたけど、そんなことないのか。そういえば面倒見もいいしなぁ。


「本当に助かったよ。ありがとう靖友くん。今度何か奢ります」
「ア?…別に」


いやいや絶対奢ります。
何故に私が彼のところに来たかと言うと、私は友達と2人部屋の寮に住んでいるのだが、今日は友達が彼氏さんが来るからと追い出されたのだ。酷い話です。他の友達のところにも行ってみたけど、彼氏が来るからとかもう寝てるとかでダメだった。というわけで彼氏である荒北靖友くんの元に。


「彼氏さんを連れ込むなんて先に言ってくれれば良かったのに」
「るっせ!早く寝ろ!!」
「私ベット?」
「床だバァカ!!」
「ええ、一応彼女なのに」
「それ以前に俺の部屋だ!!ンなの関係ねーよ!」


うわ、ベットに乗ったら床に落とされた。彼女に対してなんて扱いだ。うう、靖友くんのケチ。布団もくれないのか。…いや、私が悪いのだが。


「一緒に寝たかったのに…」


ポツンと呟いた私の言葉は彼に聞こえたのであろうか。私は身を縮ませ、眠りについた。もっと甘えたかったのにな。はぁ、やっぱりダメか。








「…寝たか」


突然、部屋に押し掛けて来たのは俺の彼女。大きい荷物持ってたから何となく察してはいたけど、普通男の部屋に泊まりに来るゥ?一応彼氏なわけだしダメじゃねーけど、そういうこと期待しちゃったじゃナァイ。違ったけど。
流石に野宿されたら色々と困るし部屋には入れた。だけどベットに乗った時はちょっと焦った。そこにいるだけで変な想像しちまうだろォが。急いで退かして床に放ってやった。寂しそうな顔してたのは分かってた。でもそれヤバい。


一緒に寝たかったのに?
日向チャンは誘ってンの?


このあどけなさが残る顔をじっと見た。布団もあげなかったから体を縮めて丸くなってる。何か罪悪感。


「はぁぁぁぁ、しょうがねーなァ」


寝てる彼女を持ち上げて、ベットに乗せてやる。うわ、軽すぎ。布団を被せてやると、温かかったのかスリスリ頬ずりしてた。何これ可愛い。ヤッベ、離れたくなくなった。つかヤりてー。

起きてたら絶対にしないけど、こいつ寝てるからいいかと思って空いている半分のスペースに寝転がる。日向チャンは無意識に俺の腰に手を回してぎゅっと抱きついた。思ってた以上に柔らかい肌。

…勘弁してヨ。俺寝れねェ、今日。明日遅刻だな。まぁ…日向チャンと一緒なら何でもいい。


「好きだヨ、日向チャン」


甘そうな唇にキスをして、普段なら恥ずかしくて言えない言葉を口にした。微かに笑ってたけど起きてないよネ?







(ねぇ、靖友くん)
(…まだねみーンだヨ。寝かせろボケナス…)
(…靖友くん好き)
(…バァカ、俺もだヨ)

ただバカップルが書きたかっただけ。


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