「ふふ、楽しかったな」
「せやなぁ。日向ちゃんが楽しいなら何よりやな」


流しそうめんが終わり、日向は白石と共に帰路にいた。別れることを皆はとても嫌がった。(特に財前)


「それより、俺びっくりしたで。日向ちゃんが大阪にいるなんて知らんかって」
「驚かせようと思って。私もまさか蔵ノ介くんとあそこで会うなんて思ってもなかった」


確かに白石の驚きようはすごかった。まるで、いないものでも見ているかのような表情であった。しかし、日向も驚いたのは同じである。本当は家に直接行って驚かせてやろうと考えていたのだが、まさかテニス部のメンバーと共に会ってしまうなんて。


「蔵ノ介くん、また背伸びた?会うたびに格好良くなるんだから」
「えぇ!?俺が格好いい?え、ほんまに!?」
「うん、とても」
「日向ちゃんがそんなこと言ってくれるなんて…、日向ちゃんも可愛くって可愛くって!!」
「ふふ、ありがとう」


デレデレの白石に対し、日向は彼の言うことは冗談だと受け止めている。クスクスと笑い、白石を見つめた。


「そういえば、このあと日向ちゃんどうするん?」
「うーん、家の方に帰ってもいいんだけど…、特に考えてなかったな」
「なら!俺の家行かへん?みんな日向ちゃんに会いたくて五月蝿いんやで!特にあの恐ろしい妹とか」
「えぇ、お邪魔していいのかな?」


勿論やで!と白石は心底嬉しそうに笑った。彼女も嬉しそうに笑うと、白石は早速手を握り、家までその手を繋いで駆けていった。白石の家には色々とお世話になっている。日向は彼の家の家族によく可愛がられていた。両親のいない彼女にとっては白石の家が家族のようなものであった。



「ただいまー」


玄関を開けて白石がそう言うと奥の方からドタドタと足音が聞こえてきた。日向は白石の後ろにいたため、相手からは隠れて見えない。


「ちょっと遅いよクーちゃん!頼んだアイスは?」
「…はいはい。それより友香里、嬉しいニュースあんねんけど」
「それよりって何やねん!」


横で結んだツインテールが可愛らしい女の子は白石の妹である友香里。白石をパシリにアイスを買わせたらしい。恐ろしい妹である。


「ま、まあまあ!ホラ、隠れとらんで出ておいで」
「ほんま何やね…ん…」


白石に出ておいでと言われ、日向は控えめに彼の後ろから出てくる。友香里と目が合うと、彼女はにこりと笑った。
一方で友香里はと言えば日向と白石が出会った時の彼と同じようなリアクションで、言葉まで失うほど驚いていた。


「嘘やろ…、本物の日向ちゃんや!日向ちゃーん!!」
「わわ、友香里ちゃんってば…」
「めっちゃ会いたかったでー!夢見とるみたいや!」
「ちょっ、離れろや!お兄ちゃんやって日向ちゃんに抱きつきたい!」


友香里は日向を見るなり、思いっきり彼女を抱き締めた。日向も嬉しそうにそれを受け止める。友香里はとても日向を慕っていて、白石に負けないくらい彼女が大好きなのだ。なので白石家にやって来ると、日向の取り合いが始まるのはお馴染みの光景である。


「今日うち泊まってく!?泊まってくやろ!?お母さーん!日向ちゃん泊まっていってもええやろ!!」
「えぇ!?日向ちゃん?泊まって来なさい!是非!」
「やった!!日向ちゃん、一緒にお風呂入って、一緒に寝よ!!」
「うん、お話いっぱいしようね!おばさん、ありがとうございます」
「えぇぇ!?あかんで友香里!日向ちゃんと風呂入って寝るんは俺の役目、」
「黙れ変態!!!!」


友香里達に両腕に挟まれて、とても大変そうだったが、それ以前にとても幸せそうだった。この家に来ると、日向はそんな気持ちになれた。友香里も白石も日向は大好きなのだ。


「日向ちゃんは私といたいよね!?」
「何言うとんの…!俺とおる方がいいよな!?」


こんな彼女を困らせることを言う2人だが、日向にとっては楽しくて、楽しくて仕方がない。2人共、まとめて愛しい。彼女はふわりと笑って2人の手をとった。



「蔵ノ介くんも友香里ちゃんもどっちとも一緒にいたいな」



2人はそんな日向を見てしまえば、何も言えず、ちらり顔を合わせてまたふいっとそっぽを向く。だが、彼女の手をしっかり握って、中に入るのだ。



愛しい気持ちはどちらも同じ。








(クーちゃんには、)
(友香里には、)

(負けへんけどな)


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