「陰野」


テニス部の噂が広まり始めてから一週間が経った頃。

その噂で持ち切りの教室内でぽーっと流れてくる話を耳にしていると、また別の声が彼女を呼ぶ。
目の前に来た人物を見るために顔をのそりと上げた。



「…ジャッカル君?」



名前を呼ぶと優しい笑顔を向けてくれる、ラテンの血を引いたジャッカル桑原がいた。ジャッカルと日向は意外にも仲がいい。こうして呼ぶ事も珍しいわけではない。


「どうしたの…?」
「あー…えっとな、テニス部の噂あるだろ?それで相談があってよ、」


その表情は遠慮がちで悪さをして怒られた後の子供のようで、日向はそれだけで何となく意味を察する。


「じゃあ…、詳しく教えてもらえるかな」
「いいのか…?」


彼女の答えに心底驚いたらしい、ジャッカルの目はまん丸く開かれた。そんな彼に日向は薄くだったが微笑んだような気がした。


「私しか解決出来ないかもしれないし…それに、友達が困ってるなら助けたいよ」
「…ありがとな、陰野」




そして本題だ。
話はこうである。


王者立海大テニス部は今とんでもない状況に置かれていた。

ランニングをすれば足を捻り、ラリーをすれば至る所を強打、更に休憩している時さえも、怪我人続出という事態に陥っている。ある部員は黒い塊が見えると倒れ、今は学校を欠席中だ。



「…最後のね、黒い塊っていうのが気になる」
「…だよな。やっぱり陰野専門のやつか?俺はよく分かんねぇからな」


周りからは到底理解など出来ない会話をする2人。彼女は眼帯がされた左目をトンと押さえ、ゆっくり立ち上がった。



「もしかしたら、危ないかもしれない。直ぐにでも祓った方がいいと思う」
「!わかった。テニス部には俺から言っとくから今日放課後頼めるか?」
「…うん」



ジャッカルは教室から早足で出て行き、残された日向はその姿を見送りながら、椅子に座り直した。小さく震える白い手は蒼く輝く飾りを押さえ、目を伏せる。白い肌、赤みのない頬や桜色の唇はまるで人形だ。何を考えているのか分からない。



「大丈夫、大丈夫」


≪ |

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -