よくあるベタな恋愛の歌詞、切なく重苦しい片想いの歌詞。
綺麗事を並べられたり、夢をつらつら並べられた歌は個人的に好きやない。

人間の醜さ、どろっどろの関係、引きこもり、妄想、狂愛…そんな可笑しなんが好き。

まぁ、歌は基本的に好き。
ただテレビで活躍しとるアーティストはあんまなぁ。ハッキリ言うと嫌い。


…前置きはええとして、俺は曲を作っとる。それをパソコンにアップしたりしとる。…何とかPみたいなやつ。

俺の曲はまさにこの世界のどろどろとか病み系とかの曲ばっか作っとるし、そこそこ有名やと思う。

機械が歌うからこそいい。

それが俺の曲。

人が歌ってくれるのは嬉しいんやけど、あかん。正直、歌ってみたとか嫌やねん。


これは過去の俺。

俺の考えを打ち消す、そんな歌声に出会ってもうた。




「…何や、これ」


ある日聞いた歌。

俺の作った歌やないけど、俺の考えを変えるには充分すぎるものやった。


上手いとか下手とかやない。
こう…言葉で伝えられへん何かがある。暗いもん抱えとって、せやけど人を包み込む優しさがある。



何や、何や…この気持ち。めっちゃドクドクする。あかん。これ…惚れたみたいやん。

いやいや、俺が?ハッ…ありえへんやろ。


とか思っとったけど勝手に動く手。



『初めまして、日陰さん。善財Pです。一応、曲とか作ってます。日陰さんの歌、すごく感動しました。今までの俺の考えとか全部ひっくり返す歌声でした。善財Pとして、ファンとして良かったら俺の曲を歌ってくれませんか?』



送信っと…って何してんねん俺!送信ボタン押してもうたし!


「あー…まぁ、ええか…」


本心やし、返信来たらええなとか柄にもなく祈る。


日陰さんってどんか人なんやろう…
声的には若い。顔もえらい良いやろうなぁ…。髪はサラッサラでええ匂いしそう。んで、優しくて、家庭的で……


「何考えとんねん、俺」


キモッ。部長みたいになってもうたわ。何か恥ずかしくなってきた。

…あー寝よ。


時間が次の日になったくらいで、テニスの疲れもあるし眠りに就く。


次の日の朝もまた次の日の朝も学校に行って、部活にして、帰って曲作って寝ての永遠ループのサイクル。

そんな普通の日々を送っていたある日、パソコン画面にメール受信の音が響く。
サイトとかファンとかからのメールやと思って何気なく開いてみる。


「!!?」


ガタン。

件名を見て、椅子から落ちてもうた。



『日陰と申します』



確かにそう記されてある。
すぐさまマウスを動かし、本文をクリックする。



『メールありがとうございます。私のような者の歌でそう言ってもらえることを嬉しく思います。貴方様の作った歌を聞かせていただきました。すごく、すごく素敵でした。素敵だからこそ、折角の提案ですがお断りさせていただきます。すみません。歌うことは好きです。ですか、貴方様の歌を歌うにはあまりに物を知らなさすぎます。もっと貴方様を好きで、歌を好きな方にお声をかけて下さい。私にそのようなお言葉、本当に本当に嬉しかったです。これからも活動を頑張って下さい。益々のご活躍をお祈りしております』



嗚呼、この人は心優しい人間性の人やと思った。

俺、何も言えへんわ。



『いえ。そんなに考えてくれて嬉しいです。もし、気が変わったら教えて下さい。そんで、良かったらこれからもメールしませんか?日陰さんと仲良うなりたいんです』



よし。
まずはメールからやろ。

一目惚れや、これ。
もう相手の顔とか分からんくてもええ。何と言われようが俺は惚れた。



そのあと、日陰さんからメールが来て、その画面に表示されている文を読んでニヤニヤしてもうたのは言うまでもない。



はぁ…俺のキャラこんなんやないんやけど。

ま、しゃーないッスわ。




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名前、日陰で固定です。
そして財前くんの善財の財も哉でなく財です。
ご了承下さいすみません。


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