「三人で遊ぶのって久々じゃない?」
柴崎の言葉に日向はこくこくと頷く。
休日。珍しく日の合った日向達三人は肩を並べて、歩いていた。しかし妙に違和感がある。
肩を大幅に露出している柴崎。カラフルで古着のような服装の吉田。ふわふわとガーリーな日向。彼女達の格好はまるで違う。何ともアンバランスであった。
「あー、絢音の家久々だわー!ねー日向!」
「そうだね。何だかワクワクするなぁ」
吉田はケラケラと大口を開けながら日向をガバッと抱く。ぎゅむっと抱かれた日向は嬉しそうに柴崎に目を向ける。
「面白い物貰ったからちょっと試したくってね。さ、行きましょう」
カツン、ヒールを鳴らす。
柴崎の家はもうすぐだ。
部屋には様々な機材らしき物が置いてある。
「絢音ちゃん、コレ…」
興味深くその機材を見る日向は触らないように、でも気になるため、周りをチョロチョロとしていた。
「パソコンとかでよく歌とかアップしてるじゃない?その機材。面白いでしょ?」
所謂、歌ってみたという動画のためのアレである。日向はほぉ、と感心したように沢山のコードがある機材を見つめる。
「歌アップすんの?いやー!照れるなー!」
「さつきじゃないわよ。日向に決まってるでしょ。音痴」
なぬ!?と吉田は柴崎に顔を向けるが、ツーンと柴崎は方向を変える。二人は相変わらずだ。
「わ、私は無理だよ!二人でやってくれれば…」
「ダメよ!日向の歌、この世の奴等に自慢したいもの!」
言われるがまま、機材の前に立たされ曲のスイッチを押されてしまう。
「はーい!観念しなさい。大丈夫よ。いつもみたいに楽しく歌いましょう」
「カラオケだと思って頑張れよ!」
あわあわする日向を二人はうっとり見つめる。早く早く聞きたいと言っているようで、日向はうっと言葉を詰まらせるのであった。
「それで、歌ったの?」
ザァーと水をかけられた花はキラリと水滴で光る。
「えっと、う、うん…」
ポッと頬を染める日向は水をまく手を少し止めた。恥ずかしそうな彼女を愛しそうに見ているのは幸村。優しい瞳だった。
「ふふ、恥ずかしい?」
「…うん」
ピンク色の頬を撫で、恥ずかしいのかと問うと、日向は更にピンクを強く染めた。
「歌は、好き。でも、人に聞かれるのは…ちょっと苦手かなぁ、」
「(あ、今の好き可愛い)」
心の中でそう思いながら、俯く日向をよしよしと頭をポンポン撫でる。
「でも、気持ち分かるなぁ」
そんな幸村の言葉に日向は、えっ?と顔を上げる。
「日向を自慢したいっていう気持ち。だって可愛い日向知ってもらいたいし。あー、でも逆に俺は独りいじめしたいかなぁ…」
ぶつぶつと最後の方はよく聞こえなかったが、どこか説得力のある幸村の言葉。
「何て名前でアップしてるの?」
「えっ?ひ、日陰…」
日陰という名は意外にも吉田が思いついた名前だが、彼女にピッタリかもしれない。肌の白い彼女は日陰に住んでいるくらいだ。
「えっ、えっ…?幸村くん何してるの!?」
「探してる」
その瞬間、水まきしていたホースをポトリと落とした。
「ゆ、幸村くん!」
「だって見たいんだもーん」
ふふ、と笑う幸村は彼女の動画を見事ヒットさせる。
再生ボタンを押すと、日向の気持ちと裏腹に軽快にリズムが流れてきた。
歌声、ふわりふわり。
「……どうしよう。ますます日向を好きになっちゃった」
「冗談はいいから、早く止めてよー…」
幸村の手から携帯を奪うと素早く停止ボタン。
しかし、
「衝撃だったなぁ、」
ちらりと日向を見つめ、幸村はふぅと溜め息を一つ。
(多分、仁王あたりなら見つけてるんじゃない?)
(えっ、)
そして、
「…何やコレ」
やはり、こちらでは見つかってしまう。