あの出来事以降、眼帯を境界に置き去りにしてしまって日向は前髪で目を隠し、学校へ来ていた。
一週間ぶりの学校だ。
ドキドキしながら日向は校門へと入る。
吉田は「わああああん!!!どこにいたのよー!!!」とおお泣き。柴崎は本当に嬉しそうに「無事で良かった…本当に…」と彼女を迎えた。
赤い瞳のことを告げたが、二人は何一つ変わらない笑顔で「関係ない」と言ってくれた。
教室に行くと、赤い頭が日向の視界いっぱいに広がる。
「日向!!!」
「ま、丸井くっ、!」
むぎゅうっと丸井は力一杯、日向を抱き締める。少し苦しかったが、温かい彼に何も言うまい。
「俺っ、超心配したんだからな!本当にっ、何してたんだよ!馬鹿野郎!」
「ごめん、ね…ありがとう、丸井くん」
「っま、まぁな!つか、眼帯取ったんだな。似合ってるぜ!天才的!」
丸井は照れたように頬をピンクに染め、嬉しそうにはにかんだ。
そんな和やかな雰囲気の中、にゅるりと現れる銀色。
「おわっ!?仁王!?」
「日向ちゃん」
丸井の声などまるで無視。
するり、日向の元へと抜けていく。
「髪取れた。縛ってほしいぜよ」
「う、うん。いいよ」
「俺っ、日向ちゃんが休んでた分のノートとっといた!」
「わぁ…ありがとう」
ベタベタ、仁王は金魚の糞のように日向の後を追っかける。
丸井の顔は点、だ。
「は?ちょっ、仁王?お前、何で?」
「俺は日向ちゃんと友達から始めたんじゃ」
「はぁぁ!?意味わかんねぇ!散々嫌いとか言ってたくせして!最悪!」
「知らん」
ギャーギャーと喧嘩を始めてしまう丸井と仁王。日向はどうしようかと困り果てているしかない。
そんな時、たくさんの足音がドドド、と勢い良く聞こえてきた。
「日向、!」
「幸村くん!」
「本当に…馬鹿。もう止めてよね、こんなこと。お前は俺にとって必要なんだ」
「せんぱぁぁぁぁい!!!」
「切原くん、」
「超超超!心配しました!俺!夜なんか寝られなくて、」
「赤也!五月蝿いぞ!…ゴホン、無事で何よりだ」
「真田くん…」
「御無事で良かったです…私は日向さんのことを信じていました。必ず、帰ってくると…」
「柳生、くん」
「こら、ブン太。日向が帰って来たのに喧嘩するな。無事で良かったぜ」
「ジャッカ、ル、くん」
「お前が帰って来る確率、120%だ。だが、本当に良かった。安心した」
「や、なぎくん…」
彼女にとって大切な大切な人達だ。
皆が日向の無事を本当に安心していた。幸村なんておでこにキスを一つお見舞い。(皆に責められたが、返り討ち)
「これ二回目だけど、今度は仁王も一緒に言うよ」
日向へと視線を向ける。
今度は仁王も一緒だ。
『おかえり(なさい)!』
その言葉に日向の目頭がぐわっと熱くなる。
「ただいま、です」
花が咲いたみたいな、可愛らしく、美しい笑顔だった。
(私も、仲間に入っていいのですか?)