眼帯の下の赤い瞳に反応して、日向の蒼い石の髪飾りも光輝く。



“あ゙あぁぁ!何だっ…この光!う、ぐ…!”



魔物は苦しみだし、日向から手を離した。下に落ちた日向は素早く聖水を撒き散らし、魔物を一気に囲む。


絶好のチャンスを逃すわけにはいかない。日向は全神経を魔物へと集中する。



“く、苦しい…!止めろ!今すぐ止めろ!”



日向も今がどういう状況で何故自分が助かったのか分からない。でも魔物が苦しんでいる今しかチャンスはないのだ。





「っ…滅消、!」




彼女の声と同時に弾けるように一瞬で魔物は消失してしまった。まるで先ほどまで何もなかったように辺りは静寂に包まれる。









「…終わっ、た…?」



丸井の呟きに、日向はコクリと弱く同意を見せた。




そう。終わったのだ。

お雪は日向の元へ行き、霊力を込め、彼女の応急処置をする。



「蒼太くんも、大丈夫…寝ていれば、もう元気になりますよ」


蒼太の顔色は見る見るうちに健康の良い色となっていた。そしてパチンと目を開ける。


「"蒼太くん!"」
「お雪ちゃん…?」


お雪が蒼太に駆け寄ると蒼太はむくりと起き上がり、少し弱々しいがにこりと笑った。お雪も安心したように笑う。





「…これ、着ろよ」
「あ、ありがとうございます…」


そんな2人を見て、やんわり微笑んでいた日向に丸井は服を掛けてやる。



「…あのよ」


バツが悪そうに丸井はポリポリ頬を掻き、日向を見つめた。日向は丸井を不思議そうに眺める。



「…悪かった。」



頭を下げる丸井は日向の傷を見るたび、顔を酷く悲しませた。痛々しい彼女の傷。綺麗な肌に沢山の傷を付けてしまった。



「俺、お前のこと勘違いしてた…弟を命懸けで助けてくれたのに、お前に酷いこと色々言っちまった…本当ごめん…」


丸井はくしゃりと泣きそうな顔をする。明るく、我が儘な丸井がこんな顔をするのは驚きだ。






「…2人共、凄く嬉しそうな顔してますね」
「へっ…?」



しかし日向から出た言葉は思っていたことと違い、丸井からは間抜けな声が出てしまう。


「お雪ちゃんは大切な大切な、家族みたいな存在なんです。あの子は今まで私のために沢山頑張ってくれました。あの子のために何かしたかった、けど、何も出来なくて…」


お雪を見つめる彼女の目はどこか寂しそうで、儚い。言うならば、そう。雨の後の花のようにしなりと萎れている。



「でも今のお雪ちゃん、幸せそうな顔をしています。蒼太くんのお陰で、蒼太くんのことを嫌いな私に頼んでまで教えてくれた丸井くんのお陰で、あんな素敵なお雪ちゃんを見ることが出来ました」



ふわりとまるで花が咲いたような笑顔を日向は見せてくれた。真っ赤な瞳もより美しく見える笑顔だ。

丸井はそんな彼女の微笑みに頬を赤く染め上げる。弾んだ胸の鼓動がドクドク五月蝿い。



「丸井くんが、謝る必要なんてないんです。だから、この話はもうお終いにしましょう」
「あっ…ちょ、ちょっと待てよ!」


傷をスッと撫でる日向は丸井を見る。

丸井は慌てたように彼女の言葉に口を挟んだ。


「俺、取り消したいことがあってよ…その、お前に言ったこと…」
「何でしょう…?」


もごもごと言葉を濁らせる丸井を赤の瞳と茶の瞳はじっと見つめた。




「あ゙ぁー!つまり!嫌いって言ったのは無し!分かったか!」
「は、はい…!」
「あと!…えっと、俺とも仲良くしろ!いいな!日向!」
「えっ…?」



丸井にもう一度言ってもらおうとするも、当の本人は恥ずかしがって逆ギレをするという有り様。無理そうだ。




「あっ!それともう1つ!」

「?」




(丸井のもう1つが何なのか、それは次までのお楽しみということで)


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