日向先輩を見つけた


寒そうに手を擦り合わせたり、ハァと息を吐いたりする所に俺は急いで駆け寄っていく。後ろから抱き付くとびっくりしたらしく、肩を震わせた。顔を赤くして恥ずかしいから止めてと言う姿は可愛い。


初めは先輩のことをミーハーでその辺の女と同じだと思っていた。けど先輩は違った。ただ優しくて、友達を大事にする人。人間の中身を見てくれる人だ。あんな最悪な態度をしておいて今更何だと思うかもしれないけど、俺は日向先輩と仲良くなりたい。

笑った表情や一つ一つの仕草や行動は可愛らしく、先輩の声は俺を酷く安心させる。

一緒にいたい。
もっと知りたい。
そして、守りたい。

そう思った。





だけど、







『私と、関わっちゃダメだよ』












「………で、結局何が言いたいの?」
「うぅ……」


俺は床に正座し、腕を組み、椅子に座る幸村部長を見る。さっきまでの出来事を包み隠さず話したら「何俺の許可無く仲良くなってんの?」と頭を鷲掴みされた。いてぇ…


「お、俺…嫌われちゃったんスかね…?」


分からない。どうして俺はあんなこと言われたのか理解出来ない。どうして、どうして?


「まぁ…赤也は結構酷いこと言ってたもんね〜、日向に」
「やや、やっぱり!?でも俺謝ったッス!怒ってなかったし…」


幸村部長はあははと笑いながら言うから、冗談か本当か定かではない。…結局は「冗談だよ」って言われたし。



「ふふっ。分かってないね、日向のこと」
「えっ、?」



クスリと笑う幸村部長に俺は少しだけ嫉妬した。まるで部長は日向先輩をちゃんと分かっているみたいな口振りで、自分が惨めに思える。

でも、頼れるのは幸村部長くらいしかいないんだ。




「日向はね、天の邪鬼なんだよ」
「天の邪鬼?」



天の邪鬼ってわざと逆らうみたいな感じの意味だったような気がする。先輩が?


「赤也が思ってる意味とはちょっと違うけど…、思ってることとは違うことを言ってしまうんだ」


思ってることと違うことって…。つか軽く心読まれたけど。



「優しい子だから、人を優先してしまう。自分より人の幸せを願ってしまう子なんだよ。本当は誰かと一緒にいたいはずなのに」


そう言う部長は柔らかい雰囲気で、日向先輩を本当に大切に思ってるんだって感じた。



「分かるだろ?日向は赤也のために言ったんだ。赤也を守りたいから、自分といたら迷惑かもしれない。自分は…化け物だからって、」


「……」


先輩は関わっちゃダメだと言った時、すげー悲しそうな顔をしていた。寂しそうで、俺は忘れらんない。

優しい先輩は俺のことを想って言ったんだ。



「ここまで言えば、赤也でも分かるね?」
「はい!」
「よし。じゃあ体育館裏に今すぐ行ってきな」
「…はい?」



幸村部長は恐ろしいくらい満面な笑みを浮かべる。というか何故体育館裏なんだ?



「(俺の)日向がね、どこぞの馬鹿な男に呼び出されたみたいでさ、本当は俺が直々に注意しに行こうかと思ったけど、特別に行ってきな」
「(怖ッ)わ、分かりました!ありがとうございます!」



幸村部長はきっとチャンスをくれたんだと思う。日向先輩とちゃんと話す機会を与えてくれたんだ。本当は仲良くさせたくないくせに、日向先輩のためなら部長は我慢する。


…俺だって、!


俺は部活でも見せないくらい全力疾走をして、日向先輩を目指す。


待ってて下さい!
日向先輩!


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