「それでね、今日は柳くんが本を貸してくれたの。私が好きそうって…何で分かったんだろう?真田くんは今度、私に合った書を書いてくれるって言ってくれて…!あと、アデューって言う優しい人にも色々手伝ってもらって…」


ニコニコニコ。

太陽では強すぎる、いうならば日だまりみたいな可愛い笑顔を浮かべて話す、俺の大切な大切な日向。

あれから真田や柳と異常なまで仲が良いらしく、毎日話を聞く。もう一度言おう。異常に仲が良い。



正直言う。
とてもムカつく。非常に腹立たしいね。俺が仲直りしろみたいなこと言ったけど、言ったけども、仲良くしすぎじゃない?何で謝らせに+お礼に行かせただけで、あんなに仲良くなっちゃってるわけ?大体2人は女苦手だし嫌いなはずなのに意味わかんないんだけど。

柳、何本貸してんの?絶対日向の好み調べただろストーカー。
真田の書とかいらないんだけど。紙大事にしろよ老け顔。
アデューって確実に柳生だよね。くそ、似非紳士。

日向を嫌うのは確かに嫌だけど、逆は困る。え、我が儘?知らないよ。



「…幸村君?ご、ごめんね…私ばっかり話ちゃって…」
「ん?あぁ、違うよ。真田に町内10周させるって話だよね。とても素晴らしいと思うよ」
「え、全然違うよ!?」


不安そうに眉を下げる日向が覗き込んできたもので、ちょっと焦る。あー可愛いなぁ。
日向は他の女と違って淑やかで、清潔感あって、可愛くて、何より人をちゃんと見てくれる子だ。花や植物を大切にして、俺のテニスを見てくれる、数少ない人物でもある。


「日向は随分仲良くなったみたいだね。真田や柳と」
「えっ…その、仲良く、見えるかな?」
「うん。真田や柳も、日向が気に入ったみたいだし」


一番日向を知っているのは俺だ。特徴、性格、好きなもの、苦手なもの、彼女の力や過去を誰よりも昔から一番に知っているのは俺。…だと思ってる。だから何か悔しい。そりゃあ日向の友人が増えるのは良いことだし、俺も嬉しいけど、何か複雑。
だから目の前で俺の様子を伺っている日向をギュッと抱き締めた。


「幸村くん…?」
「日向にね、友達ができるのは嬉しいよ。でも寂しい」


腕の中の日向はただ黙って俺の話を聞いていた。日向ってこんなに小さかったっけ?身体も細くて、ちょっと力を入れたら折れてしまいそう。



「矛盾しているかもしれない。でもやっぱり寂しい。…ふふ、我が儘だね、俺は」


抱き締める力を強めると、日向からはいい匂いがした。柔らかくて女の子って感じ。サラサラした髪は風に靡き、彼女がいつも付けている髪飾りはチリンと音をたてる。



「あーあ、何言ってるんだろう。ごめんね、日向。困らせちゃったかな」


そっと日向から離れ、困らせないように頭を撫でる。


離れた彼女は何か考えるような素振りを見せると、やがてブラウンの瞳が俺を見つめた。



「…私は友達ができるのは嬉しい。昔は怖くて、作ろうとも思わなかったけどね、」


日向は少し戸惑いながら、ゆっくりゆっくり話を始める。眼帯に手をかけ、瞳を露わにした時は流石にびっくりした。


「今、私がそう思えるのは幸村くんのお陰。全部全部、幸村くんがいたからだよ」


真っ赤な瞳は綺麗だった。へにゃりと笑う日向がとてつもなく愛おしく感じる。


「…これは内緒だけど、こうやって笑うのも、色々話すのもね、幸村君が一番。こんなに素直になれるのも幸村君だけ。ふふっ、怒られちゃうかも」



…やばい。
口元が緩む。

そんなこと言われたら、何も言えないじゃないか。
狡いなぁ、全く。


「…もー可愛い!」
「わっ!」


ぎゅーっと今度はもっと強く抱き締めてやった。日向が悪い。



「ねー食べていい?」
「?」
「鈍い、馬鹿」
「ひ、酷い…」


まあ、そういうとこが可愛いんだけど。想定内だし。


「じゃあ、」
「えっ、?」


ぼんやりしている日向の頬に両手を添え、色味のないほっぺに軽く唇を落としてやる。


「あ、真っ赤ー」
「あ、えっ、ぅ…」
「大丈夫大丈夫。こんなの挨拶みたいなものらしいよ」


そういうと「そっか…」と何故か納得をした日向だが、いやいやとまた顔を赤くする。行動が不思議すぎ。



「こ、こういうことは…!すっ、好きな人としなきゃダメなの!」


頬を朱に染め、日向はぷいっとそっぽを向いてしまう。何、あの生き物。可愛いんだけど。襲いたい。



「日向、可愛い!」
「ちょっ、もー!ゆ、幸村くん!離してー!」
「やーだ!」



本当は男になんか近付けたくもないけど、可愛い日向に免じて許してやるか。






((今、寒気が))
と真田、柳。柳生も。


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