「ジャッカルくんっ…!」



日向の精一杯の大きな声に、彼の肩が盛大にびくりと揺れたのが分かった。ジャッカルはピタリと止まった。追い付いた彼女は呼吸を整え、ジャッカルに目線を合わせる。寒さで赤くなった鼻を啜る日向へと彼は振り向く。



「あの、昨日は私っ…」



小さな小さな声であったが必死に絞り出した声。
ぎゅっと服を掴んで、意を決したように言葉を出す。





『ごめん(なさい)!』





見事に重なる声。
日向は自分だけ頭を下げていると思っていたが、目の前の人も同じ行動をしていた。



「どうして、ジャッカルくんが謝るの?謝るのは、私で…」
「…いや、謝るのはこっちだ。部室に連れてきたのは俺だし、あいつらお前を傷つけちまって…」



ジャッカルは日向よりも辛そうな顔をしており、日向はよく分からなくなる。


「でも、私は嘘をついていた。気味が悪いから、嫌われたくないから、嘘をついて…」
「何言ってんだよ!それだけで友達止めるわけねぇだろ!」


突然のジャッカルの大声に、日向は驚き、固まってしまう。優しいジャッカルがいつになく真剣で日向は目が逸らせない。


「言えなかったのは何か理由があるんだろ?散々助けてもらった陰野のこと、今更そんなこと思わないぜ」


ニカッと白い歯を見せてくれる彼はいつもの彼であった。わしゃわしゃ乱雑に撫でられた髪を触りながら、日向は泣きそうな顔で笑う。



「ありがとう」



今日二回目のありがとう。
彼女にとって大切な言葉。






「まぁ、お互い様ってことにしとくか。キリがねぇしな」
「…うん、そうだね」
「解決?良かったね」



自然にぬるっと入ってきた人物に一瞬固まるジャッカル。





「ゆ、幸村っ!?」
「うん、俺だよ。」



ジャッカルをちらりと軽く見るとすぐさま日向へ視線を向ける。



「ほら、大丈夫だったでしょ?日向は心配しすぎなんだよ」
「…うん、ありがとう。全部全部、幸村君のおかげ」
「ふふっ、日向ってば可愛いー!もう本当、可愛い!」
「わわっ、」



ぎゅーっと日向に抱き付くデレデレの幸村をジャッカルはぽかんと眺めていた。



「…幸村と陰野って仲良かったのか?日向って…」
「うん、超仲良し。名前呼び羨ましいかい?はっはっは!」


日向に抱き付くというか締め付けるくらいの勢いの幸村は何故か高笑い。


「ゆゆ幸村くん!あっ…もし良かったらジャッカル君も名前で呼んでね。私だけ呼んじゃってるし」
「えー、ダメ」


ピシャリと止まる時間は「冗談だよ」という幸村の笑みにより戻る。

あの目は本気だったとジャッカルは思う。



「ま、まぁ、これからもよろしくな!日向!」
「!よろしくお願いします」





心から嬉しそうな表情をする日向に幸村もふんわりと目を細めていた。



「全く…手の掛かる奴」








いや、しかし
まだ謝らなければならない人物はいる。


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