何とか、何とか今日ここまでやってこれた。

隠し事の件があってから既に1週間が過ぎた。幸村からの視線に何とか耐え、バレることもなく当日までやり過ごした。
お手伝いは1週間ほどあるが、学校はちらほらと夏休みに入ったであろう時期、無論日向もその1人であることに変わりないので大丈夫とのこと。1週間分の必需品をキャリーバックに詰め込み、カラカラと引き目的地を目指す。



「この道で合ってるのかな…?」



地図を見ながら進むが、どうも道に自信がない。足は不安そうにのそのそと動いていた。1人と言うこともあるが知らない場所にいることが何より不安を大きくさせる。このまま迷子になって、お手伝いが出来なくなったらどうしようか、柳に何て言えばいいのか、嫌な考えばかりが頭に浮かんでしまう。


歩いて数十分くらいしたが、状況は一向に良くならない。むしろ悪くなっているのではないかとも思われた。次第にじんわりと視界が歪んでくる。生理的に涙が溢れそうだった。

柳に申し訳なくて、誰にも電話などかけられない。1人で何とかしなきゃ、彼らは今はテニス部の合宿のためいろいろ忙しいはず。この前誰かがそんなことを言っていた。でも、


「誰か、」


助けて欲しい、なんて言葉は喉元まで溢れてきたが飲み込んでしまった。ポタリと落ちる雫が地面でじわりと広がる。ぎゅっと拳を握り、時間が過ぎるのを待つしかないのか。

そんな嫌な思考を巡らせていた時、彼女の頭上から救いの声が聞こえた。



「ねぇ、あんた何してんの?」




それは小さな王子様。





*





「あーあ。やっぱり無理矢理にでも日向を連れてくるべきだったなぁ」
「本当ッスよね〜。こんな暑い中、男だけとかむさ苦しくて嫌ですよ〜!」


立海のメンバーはバスの中でぶつぶつ文句を垂らしながら、合宿の会場へと向かっていた。テニス一筋の常勝をスローガンにする彼らのそんな様子を見ると、年相応で何となく安心してしまうものもある。王者と言えどまだまだ子どもであることに変わりはない。


「女ならおるぜよ。あの氷帝のマネージャーがのぅ。まだ止めとらんかったみたいじゃな」
「だから余計に嫌なんスよ!つか、跡部さんも何で止めさせなかったんですかね?」
「金の力の可能性が高い。少し調べたが、彼女の家は裕福らしいからな」


思い出すだけで苛立ちを覚えるのは忘れもしない氷帝のマネージャーだった。どんな魔法か分からないが、男を虜にして自分の思い描く理想を崩そうならば傷付けることを惜しまないような人物であった。日向のこともあり、立海では良い印象はないと言える。


「…やれやれ。先が思いやられる合宿ですね」
「まっ、何とかなるだろぃ」


そうだねと幸村が笑うと他の皆も同じように笑った。とりあえずテニスに集中しようと決意を固めたのは合宿場に到着するほんの少し前である。

到着すると目の前には大きな門が見えた。跡部と書いてあることを見るとやはり合宿場は彼の所有地であることが分かる。他の学校は到着しているらしく、立海が最後のようだ。バスから慌ただしく降りているとき、柳がふっと笑い、立海のメンバーをぐるりと見渡した。



「この合宿…嫌なことばかりではなく、必ず来て良かった。そう思える確率は100%だ」



何故彼がそんなこと言ったのかは分からなかったが、我らが参謀の言うことだ。仲間として信用しないわけはない。顔を見合わせて、微笑みあうと立海のジャージを翻す幸村を先頭に歩き始めた。








(…!王者は最後のお出ましと言うわけか。アーン?)
(せっかくこっちまで来たのに日向ちゃんに会えへんとか…、はぁ…)
(あれ?手塚、越前は?)
(……いない?)



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