時は変わり、放課後。



問題のテニス部は今練習中である。フェンス越しにはベッタリとファンが張り付いており、黄色い声が響き渡っていた。


そんな中、無人のはずのテニス部の部室には数人、誰かいた。





威厳と強さを兼ね備えるテニス部副部長、皇帝・真田弦一郎。自らのデータに寸分の狂いはない、マスターと呼ばれる柳連二。



「陰野日向、お前のデータは少ない。興味があるな」
「我がテニス部の問題を解決してくれると聞いたが、それは本当か?」


ジャッカルがいるとはいえ、2人の威圧感は半端なものではない。日向は少しだけびくりと身体を跳ねさせた。


「やれるだけの事はやってみます。ただ、今から行うことは信じがたいものかもしれません」
「信じがたい?それは一体どういう事だ?」


真田の問に彼女は瞳を揺らす。ゆらゆら揺れる瞳を柳はしっかり見た。鋭い瞳は日向の心理を捕らえたか否か。


「…見ていただくのが一番いいと思います」
「…陰野」


定まった瞳は真田と柳に焦点を合わせる。ジャッカルが心配そうに見つめるも、日向は変わらない。



「今からする事は少し刻かもしれません。目を瞑っていても大丈夫ですから」



すぅ、と息を吸い込み



「始めます」



数珠をジャラリと構えた。













同じ場所なのにまるで異空間のような気がする部室。"結界"を張ったらしい彼女は目を閉じ、集中を高めていた。同じ空間にいる真田、柳は信じがたいといった様子で喰らいつくよう彼女を見ている。ジャッカルは何故だか平常心を保っていた。


ごくり。
誰かが唾を飲み込む音がしたと同時に日向がカッと目を開ける。



「醜き魂よ」



フッと辺りの様子が変わったのが素人でも分かった。黒い塊がぼんやり現れ、やがて誰の目から見てもはっきりその姿が確認できるほどに。



あ゙あああぁぁ!!



そう叫ぶのは人であったが、それはあまりにグロテスクで見ていられるものではない。
片腕がないもの、目玉がないもの、足がないもの。地獄か、と思える光景だ。


真田は驚きで声が出ず、柳は目を大きく開いており、2人共、顔が真っ青であった。ジャッカルは真っ青ではあったが日向から目を逸らさず心配そうにその行い見ていた。



「正しき場所へ戻りなさい。ここは君達がいる場所じゃあないでしょう?」


日向の言葉で光が射し込む。そしてそれは酷い姿となった者達を照らした。
するとその姿は地獄図のようだったものから一気に変わり、幸せを噛みしめるように微笑む天使のようなものとなったのだ。



"ありがとう"



最後にそんな言葉を残して、テニス部部室から跡形もなく消えた。


その瞬間、部室を包んでいた結界はなくなり、日向は一息漏らす。



「もう、大丈夫です。力の強くない方でしたので案外すぐに終りました」



にこりと笑う彼女に2人は暫く動けなくなっていたらしい。

一汗流す日向にジャッカルは急いで駆け寄り、不安げに「大丈夫か」と尋ねてた。


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