人気のない場所まで連れてこられると、荒い息を吐きながら、ニノに詰め寄った。
「なんてことするんだ、貴方は!」
魔力を喧嘩の道具に使った事が、ライには非常に腹立たしく思えて、不愉快を露わにする。ニノの方は全く堪えていないらしい。口元を曲げながら、ニヤついていた。
「僕をこんな所に連れてきて、いったいなにを考えているんだ!」
「……僕? ふぅん」
点検の目つきだ。ライの全身に、視線を這わせるニノ。ライは咄嗟に顔を逸らす。
「あんたさ、なんで男のふりしてんの?」
「えっ!? な、なんのことだ!」
やはり、見抜かれていたようだ。
しかし、発言よりもニノの視線を気味悪く感じたライ。逃れる為に背中を向けた。
「スゲェ可愛いのに、勿体ねぇな。それはライちゃんが勇者だから〜ってやつ?」
「お前……な、なんなんだ」
“今日初めて町に来た”と言った男。
そんな男が、ライについての情報を、事前に知り得えていた……とは考えにくい。 また、ライが“女”だという事実は家族と、ほんの一部しか知らないはずだった。
「どうして、知ってるんだ?」
「どうしても何も。オレ、興味持った女相手だと、色々と分かっちゃうんだよねぇ」
ニノの嫌らしい笑顔を、底気味悪く感じたライは身動きも出来ずに固まっている。 ニノは、抵抗してこないのをいい事に、ライの頬に冷たい手を這わせるのだった。 |