小説(雷霆) | ナノ
金色の瞳 紺碧の瞳(8/8)
 
 人気のない場所まで連れてこられると、荒い息を吐きながら、ニノに詰め寄った。

「なんてことするんだ、貴方は!」

 魔力を喧嘩の道具に使った事が、ライには非常に腹立たしく思えて、不愉快を露わにする。ニノの方は全く堪えていないらしい。口元を曲げながら、ニヤついていた。

「僕をこんな所に連れてきて、いったいなにを考えているんだ!」

「……僕? ふぅん」

 点検の目つきだ。ライの全身に、視線を這わせるニノ。ライは咄嗟に顔を逸らす。

「あんたさ、なんで男のふりしてんの?」

「えっ!? な、なんのことだ!」

 やはり、見抜かれていたようだ。

 しかし、発言よりもニノの視線を気味悪く感じたライ。逃れる為に背中を向けた。

「スゲェ可愛いのに、勿体ねぇな。それはライちゃんが勇者だから〜ってやつ?」

「お前……な、なんなんだ」

 “今日初めて町に来た”と言った男。

 そんな男が、ライについての情報を、事前に知り得えていた……とは考えにくい。
 また、ライが“女”だという事実は家族と、ほんの一部しか知らないはずだった。

「どうして、知ってるんだ?」

「どうしても何も。オレ、興味持った女相手だと、色々と分かっちゃうんだよねぇ」

 ニノの嫌らしい笑顔を、底気味悪く感じたライは身動きも出来ずに固まっている。
 ニノは、抵抗してこないのをいい事に、ライの頬に冷たい手を這わせるのだった。
 


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