小説(雷霆) | ナノ
金色の瞳 紺碧の瞳(7/8)
 
 面食らい立ち尽くすライを、ニノは強引に抱き寄せて、耳元で甘言を囁いてきた。

 面白くないのは、蚊帳の外に出された武闘家である。突然、ニノの襟首を掴み上げながら、迫力満点の顔を突きつけてくる。

「シカトしてんじゃねぇよ! ホモ野郎、てめぇら……気色悪いんだよ!!」

(ほ、ホモ!? 僕だって、一応……女)

 武闘家の言葉に、ライの顔にも怒りが宿る。女に見えないのは承知だが、酒浸りの破落戸などに、中傷される謂われはない。

「可愛いちゃん相手に、ホモとか失礼じゃね? ホント脳筋って救いようねぇよな」

 ニノは、「ねぇ?」とウィンクをしながら指を鳴らす。指先から、小さな火の粉が発生すると、武闘家の頭上に降り注いだ。

「ひっ……ひぎゃああぁっ!」

 大袈裟な雄叫び、髪が燃えて悲惨だ。

「な、何したんだ? 今……」

 呪文を唱えたわけではないのに、発動した火の粉。ニノは得意そうに笑っている。

「退散、たいさん!」

 いきなり、ライの腰に腕を回し抱き寄せてくる。次の瞬間には、凄い勢いで走り出した。唐突過ぎる出来事に、ライは気圧されて、抗うことも忘れてしまうのだった。
 


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