どの職業が強いか、男としては誰が優秀か、客同士が主張し合う最中、あの魔法使いの入店を境に、空気が一変したという。
武闘家が、魔法職に難癖を付け始めたのである。絡まれたのは、魔法使いの方だ。 武闘家に貧弱な体躯を揶揄されても、最初の内は無視を決め込んでいたらしいが。
「突然、“イオ”をぶち噛ますんだから、まいっちゃうわー」
(“まいっちゃうわ”……じゃないよ。大らかっていうか、無責任っていうか)
呆れ果てるライを見るなり、ルイーダはケタケタと笑い声を立て、酒を仰ぐ始末。 あの魔法使いを放っておいたら、更なる惨事を引き起こしかねないと思えてくる。
「まったく……仕方ないな!」
止める気など微塵も無いルイーダに期待しても“無駄”と、考えたのだろう。突如として、ライが男達の間へ割って入った。
「なんだテメェは!!」
武闘家は、相当酒が入っているようで、焦点が定まっておらず、息が非常に臭い。 同じ武闘家でもリョウとは違い、優雅さは皆無だ。こちらは唯の破落戸と見える。
「喧しい! こんな騒ぎを起こして、迷惑だと思わないのか?」
鋭い目で武闘家と魔法使い交互に見た。 |