小説(雷霆) | ナノ
金色の瞳 紺碧の瞳(4/8)
 
「ま〜だ、やる気でいんの?」

 蛇が螺旋に巻き付く、不気味なデザインの杖。それを手に握った魔法使いが、武闘家の顎へ突きつけながら挑発をしている。

「こ……このクソガキ!」

 熱り立つ武闘家の顔へ唾を飛ばす。体格差を物ともせず、全く負けてない様子だ。

(原因は何か知らないけど、迷惑だな)

 ライの足が自然と前へ踏み出した。その歩みを止めるように、マントを引っ張ってきたのは、店主ルイーダである。テーブルの陰へ隠れ、暢気に煙草を吹かしていた。

「勇者ちゃん。近づいたら危ないわよー」

「この有様はどうなさったんですか?」

 手を仰いでいるルイーダ。口内の煙を全て吐き出すと、眉毛をへの字に形作った。

「原因を作ったのは武闘家君だけど、被害を大きくしたのは魔法使い君ねー」

 ルイーダに因れば、客の間で職業の“強さ”についての談義が行われてたらしい。

 それが何故この事態に繋がるのかと、ライの顔は、宛もそう言いたげである。それを見るなり、ルイーダは一頻り乾いた笑いを立てた後、事の次第を説明してくれた。
 


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