宿へ戻ると、ニノも帰ってきていた。しかし、どうにもこうにも様子が可笑しい。 ……俯いたと思いきや、直ぐさま顔を上げて、ブンブンと大きく首を振っている。
いつも変だが、今日は輪を掛けて変だ。
女遊びをして、文字通り“スッキリ”しているはず。そのことを踏まえると、ニノの動作は、非常に不可解な挙動に見えた。
「おい、お前ぇ、どうしたってんだ。不細工な女でも掴まされたのかよ?」
「あ、ガイ兄。ちょっとばかり、妙なことがあってよ……」
「話すのは、まだ待て」
事の次第を話そうとしたニノを、手で制すリョウ。ライの方へと顔を向けて……。
「ライは、もう部屋で休め」
……と、勢いよく奥の扉を指さした。
「えっ、なんで僕だけ」
「ここからは大人の話だ。いいね?」
有無を言わぬ物言いである。子供には、娼婦の話など聞かせられないという訳だ。
“リョウらしい気配り”といえばそれまでだが、ライの方は、不満で一杯である。
(一応、アリアハンだと大人だって認められた歳なんだけどなー……)
ブツブツと文句を呟き、向かう途中。
ソファーに座るニノと目が合うと、瞬時にライの表情は不機嫌なものへ変わった。
軽蔑を込め「最低!」と、罵声を一つ。
苛立ちの程度を分からせるように、扉が壊れる勢いで乱暴に閉めてやるのだった。 |