小説(雷霆) | ナノ
闇を駆ける馬 暁に鬻ぐ猫(21/29)
 
 宿へ戻ると、ニノも帰ってきていた。しかし、どうにもこうにも様子が可笑しい。
 ……俯いたと思いきや、直ぐさま顔を上げて、ブンブンと大きく首を振っている。

 いつも変だが、今日は輪を掛けて変だ。

 女遊びをして、文字通り“スッキリ”しているはず。そのことを踏まえると、ニノの動作は、非常に不可解な挙動に見えた。

「おい、お前ぇ、どうしたってんだ。不細工な女でも掴まされたのかよ?」

「あ、ガイ兄。ちょっとばかり、妙なことがあってよ……」

「話すのは、まだ待て」

 事の次第を話そうとしたニノを、手で制すリョウ。ライの方へと顔を向けて……。

「ライは、もう部屋で休め」

 ……と、勢いよく奥の扉を指さした。

「えっ、なんで僕だけ」

「ここからは大人の話だ。いいね?」

 有無を言わぬ物言いである。子供には、娼婦の話など聞かせられないという訳だ。

 “リョウらしい気配り”といえばそれまでだが、ライの方は、不満で一杯である。

(一応、アリアハンだと大人だって認められた歳なんだけどなー……)

 ブツブツと文句を呟き、向かう途中。

 ソファーに座るニノと目が合うと、瞬時にライの表情は不機嫌なものへ変わった。

 軽蔑を込め「最低!」と、罵声を一つ。

 苛立ちの程度を分からせるように、扉が壊れる勢いで乱暴に閉めてやるのだった。
 


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