小説(雷霆) | ナノ
闇を駆ける馬 暁に鬻ぐ猫(19/29)
 
「生きて……な。おれが生きてると言えるか。あんたらには分からんだろうけどな」

「ああ、分からぬ。要するに、自棄になっているだけだろう。愚かしいことだ」

「は、ははっ。……自棄にもなるさ。おれは……朝の度に地獄を見るのだからな!」

 リョウの、鰾膠も無い言葉が効いたのだろう。仰向けのまま、乾いたような笑いを上げたカルロス。その目へ涙が伝わった。

(多分、理由があるんだと思うけど)

 勅命を受けるくらいの人物である。現在はどうであれ、曾ては相応な人間だったというのは想像に難くない。カルロスの落ちぶれた風貌が、ライには痛ましく思えた。

「カルロスさん。僕、頑張って魔王を倒すから。……捨て鉢になっちゃ駄目だよ!」

「ガキが何を……」

「ライを唯の子供と思うなよ。彼こそ勇者であり、オルテガ殿の子息なのだからな」

 瞬時に、カルロスの目が見開かれたと思えば、ライに目を向け驚きを露わにする。

「因みに、ガイラスは大魔法使いダルダス殿の息子。もう一人の仲間は、愛弟子だ」

「え、ええっ! そ、そんな凄い奴等なのか……あんた達!?」

 続け様に聞かされて、カルロスは混乱しているらしい。頻りに目を瞬かせていた。
 


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