小説(雷霆) | ナノ
闇を駆ける馬 暁に鬻ぐ猫(17/29)
 
 男の剣を易々躱すと、リョウの手刀が男の首筋、続いてガイラスの首筋へと入る。

 もはや、説明はいらないだろう。

 手刀を食らった男とガイラスが、そのまま、重なり合うようにして、ぶっ倒れた。

「技……解けよぉ」

 嘆きに近い声を上げ、ひっくり返させた天道虫の如く、手足をバタバタとさせる。
 男の方は、この状態にありながらも威嚇を止めない。負けん気だけは強いようだ。

「喧嘩の理由が正当ならば解いてやろう」

 シレッと言い放つが、リョウの表情には怒りを湛えてる。それを見るなり、ガイラスの額が、玉のような脂汗で満たされた。

「ねぇ、ガイラス。ちゃんと言わないと、リョウは、ぜーたい解いてくれないよ?」

「う、うむぅ……し、しかしだなぁ」

 やたらと厳しいリョウの事だ。恐らく、ライの言う通りの結果になるだろう。言い倦ねているのか、言い難いのか、ガイラスは口を曲げて奇妙な唸り声を上げている。

「この兄ちゃんはな、俺達にゃバラモスを倒せねぇって……絡んできやがったんだ」

「それだけか。下らん」

「く、下らなかねぇよ! それで勝負を持ち掛けてきたんだからよぉ!」

 悔しさが収まらないらしい。自由の利かない身を捩り、背負った斧へ手を掛けた。
 


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