「いったい何があったというのだ。公の場で迷惑だろう」
「邪魔すんじゃねぇよ。沽券が懸かってるんだからよぉ!」
リョウの睨みを受けて、ガイラスは多少臆したが、喧嘩を止める意向は無い様子。 一方の喧嘩相手はリョウの頭から爪先へ視線を這わすと、ペッと唾を吐き捨てる。
「この大男、おっさんの仲間か?」
「俺ぁ、おっさんじゃねぇよ!」
熱り立つガイラスを余所に、男の意識はリョウへ移ったようだ。詰め寄り、突き飛ばしたが、リョウは当然ビクともしない。
「チッ、顔に似合わず頑丈な男だな」
突如として、男が剣を抜く。
ガイラスとリョウ相手に戦うつもりらしい。無謀というか、身の程知らず。止めなくては男が命を散らすのも時間の問題だ。
「あんたらの行動が、馬鹿げてるってことを、このおれが思い知らしてやるよ!」
「リョウは手出しすんな。俺ぁ、こいつの鼻っ柱折ってやらな気が済まねぇんだ!」
一触即発の事態の中、リョウがフッ優美な笑みを浮かべ「止むを得ん」と、一言。 男が二人に向かい切り掛かった丁度その時、フワッと辺りへ白檀の香りが散った。 |