――町を包む紫を帯びた夜の帳。各家の窓から、蝋燭の暖かな灯火が漏れている。
御伽話から抜け出たような、幽玄の美。
しかし、如何に美しい場所と雖も、端を見れば塵も一つは落ちているというもの。
繁華街の酒場通り。……正しく、この場所は塵。昼間の賑わいに代わり聞こえる喧噪、無法の蔓延りが許される場所である。
宿で待つこと数時間。どちらも帰ってこない為、酒場へ探しに着てみれば、ガイラスが男と喧嘩に勤しんでいるではないか。 仲間の姿を確認したと同時。然も、呆れているという感じで、リョウが項垂れた。
「うちの仲間は、酒場で諍いをする癖でもあるのか」
「ごめんねー。そういえば、そうだね」
御尤もな意見に、ライは笑って誤魔化すしかない。リョウの機嫌は、かなり悪い。
「全く、故に羽目を外すなと言っておいたのだが。おい、ガイラス!」
ズカズカと酒場内に歩みを進め、間を割ると、ガイラスと男を交互に睨みつけた。 |